第25話 温泉に行こう
「ほ、本当に斃したのか!?あの男を!?もう!?」
「あぁ。本当にあの人が衰弱していたのがアイツのせいなら、良くなるはずだぞ」
態々里の入り口で俺を待っていたクォラに、圧勝だった旨を伝えた。
とても信じられない、という表情と発言をされたが、ドロップアイテムの…アイツが纏っていたローブを見せたら押し黙った。
やっぱり物的証拠は強いな。
「…し、しかし圧勝だった…か。現に単独討伐に成功している以上その実力は疑うべくもないのだが…それは流石に信じられんぞ」
「圧勝かどうかはまぁ良いとしてさ。要は俺が一人でもリッチ相手にできるくらい強いって事だけ認識しておいてくれればいいよ」
「――まさか本当に、里を一人で滅ぼせる程の力を持っているとは思わなかったなぁ…」
お、あの時の俺の発言、覚えてたのか。
随分泥酔してる様子だったけど、意外と記憶に残ってたんだな。
――だったら俺が結婚の話にノリ気じゃ無かった事、わかってたと思うんだけど。
まぁ今はアイツと結婚することに何の抵抗もないどころかこちらからもお願いしますって感じなんだけどさ。
「取り合えず、条件は達成したぞ。これで文句ないだろ?」
「正直条件なんて最初から必要なかった気もするんだがな」
お前がそれを言ったらダメだろ。
口にはしないけど。
「ところで、シェラは?」
「あぁ……寝てるよ。アレイスター殿が出て行ってすぐに、倒れるように寝てしまってな」
「…あー、なるほど。昨日が昨日だからなー」
一晩中喘いで…いや、泣いてたからな。
あれだけ体力使えば、そりゃ疲れて倒れもするだろ。
んー、肝心なシェラが今いないんじゃ、ここにいる意味も無いか。
ディラさんの容体…は、多分まだ変化が無いんだろうし、そろそろ里巡りでもしよっかな。
「じゃあ、俺は里を楽しませてもらうよ」
「おぉ、それは良い。部屋でただ待たせるよりも、この里を知り、気に入ってくれる方がこちらとしても好都合だしな!」
「…お前、外交下手だろ」
「む?我は里一外交上手と呼ばれているが」
――何だろう、頭が痛くなってきた。
きょとん、としながら首を傾げるクォラに、一気に疲れを感じる。
そう言えば、この里の連中は「公国が攻めてくる可能性が高い」というのを本気で信じちまうようなバカばっかりだったな。
そりゃクォラレベルが頂点でも仕方ない…いやいや、良く生き延びてきたな竜人の里。
「…うん、俺、もう行くから。――スマ子、ナビゲートよろしく」
「良い観光を!…ところで、スマ子とやらは誰の事を?」
『じゃっじゃじゃーん!私ですっ!』
ウィンドウを展開させて両手を広げ、いつも通りのハイテンションで笑顔を浮かべるスマ子。
バージョン3。新衣装にメイド服を追加し、髪型の変更をコイツ自身の意志でできるようにした。
それ以外にも俺以外の人間に音声を届けることができる機能や、アイテムボックスに干渉して制限の範囲内なら好きにアイテムを扱えるようにもなった。
…でもなスマ子。今の発言だけはミュート入ってて聞こえてなかったぞ。
クォラの奴、不思議そうにしたままだし。
※―――
『竜人の里を代表する物は、何と言っても温泉!周囲を多数の火山に囲まれたこの環境により、様々な源泉があちらこちらから湧き出ているのです!』
「ほー…じゃあ肩こりを治す効能を持ったお湯を使ってる店とかわかるか?」
『それでしたら、この先真っ直ぐ行った所にある「紺々亭」が最寄りですね。料理も絶品で、あの東国、ジェペンガの食文化を体験できるのだとか!』
ジェペンガというのは、極東にあるとされる島国の事だ。
恐らくこの世界における日本のような場所なのだろう。
雅で、華やかな雰囲気で満ちているのだとか。
学校を卒業したら、真っ先にそこに向かってみたいと思う。
…別に『権限主張』さえしちまえばいつでもいけるんだけどさ。
「でも食事には早くないか?」
『現在時刻は3時。今日は昼食を摂っていませんし、健康上の問題はあまりないと思いますよ?』
「いや、食事のリズムの乱れは体に悪いだろ」
『それにそれに!「紺々亭」ではなんと、お風呂で食事を楽しめるらしいんですよ!ジェペンガの文化の一つらしくって、お湯の上におぼんとやらを浮かべて――』
「…それ、酒の話じゃないか?しかも浮かべるのは盆じゃなくって桶だし」
『…あ、ほんとですね。でも、マスターはなぜソレをご存じだったんです?』
「ジェペンガ、俺の生まれ故郷ニアピン賞」
というか、俺の情報を持ってるんだから自動的にわかる事だと思うんだけど。
興味のある話題とない話題とじゃ違うってヤツなのかね。
スマ子にとっては、別に日本は思い入れがあるわけでも何でもない訳だし。
さて。
里の中をのんびり歩き回りながらスマ子と話をするのも悪くは無かったが、そろそろ温泉で疲れという疲れを落とすとしようか。
「取り合えず、その「紺々亭」とやらに向かおっかね。ついでに食事もそこで済ませて…一旦シェラが起きたかどーか確認して…起きてたらそのままそこに、寝てたらもう少し里巡り。うん、メモっといて」
『了解しました!復唱します?』
「一応頼む」
『まずは「紺々亭」で風呂と食事をし、次に長の屋敷へ帰還。シェラ様の起床状況を確認し、その結果の如何によって留まるか里巡りを続けるかを決定――ですよね?』
「ん、合ってる合ってる。偉いぞー」
スマ子を褒めつつ、目的地へ向かう。
因みにだが、この会話は周囲に筒抜け…というかスマ子自身が誰にでも見える設定になっているので、周りの竜人達からの視線がちょっと鬱陶しい。
そんな人を珍獣を見るような目で見るもんじゃないよ全く。
※―――
「ほぉー…他の風呂屋と違って、ザ・旅館って感じの見た目だな」
『なんでも女将がジェペンガからの移住者のようで、外装やサービス等を全てジェペンガ風にしようと心掛けているらしいですよ』
「まぁ名前も名前だしな。○○亭ってのは基本日本…じゃなくって、ジェペンガで使われる言葉だからな」
『おぉ~。博識ですね!』
褒められて悪い気はしない。
やたらと日本を想起させる、和風な外観をした建物に一度圧倒されつつ、ゆっくりと中へ入る。
すると、またしても俺は感嘆の声を出してしまうのだった。
「いらっしゃいませ」
「お、おぉ~」
和服姿の女性が、恭しく頭を下げて出迎えてくる。
木造の奥行きのある玄関は、まさしく前世訪れた旅館そのものだった。
鈴のような声で出迎えてきた女性――仲居さんだろうか――に、ふさふさした動物のような耳があるのも驚いた点の一つである。
「何名様でしょうか?」
「あ、一人です。子供一人」
「かしこまりました――あっ、お客様。お入りになる際は靴を――あれ、脱いでる?」
自分一人だという事を告げ、そのまま店に上がる。
勿論靴は土間で脱ぐ。
やっぱり、靴を履かずに室内に入る方が慣れ親しんだ感あっていいな。
スリッパとかは無さそうだし、そのまま歩いてしまっていいのだろうか。
「靴を履くのは土間の中だけ、ですからね。ジェペンガの常識には、人並み以上に詳しい自信があるんですよ」
「…す、すごいですね…失礼ですが、おいくつでしょうか?」
「十二です。三年後には儀式を行い、学校に入学するための試験を受ける身ですので…多少の教養は、必要不可欠でしょう?」
これなら別に無理のある言い訳でもないだろう。
エリーセを買う時の七歳児設定ゴリ押しよりはマシだと思う。
――まぁ、多少の教養と言うには知識が偏ってる気もするけどな。
この世界の常識とかも、一応あの空間で学んだとは言え抜けている部分が多々あるわけだし。
そろそろあの空間を自由に使えるようになってくれていいと思うんだけどなー…まだダメなんだよな。
「それで…ここは、先に料金を支払えばいいのでしょうか?」
「あ、はい。あちらで料金を支払って、ロッカーの鍵を受け取ってから中へ」
右手で指された方向に目を向けると、これまた着物(法被の方が正しいだろうか)を着た男の人が、まったりと茶を啜っていた。
その頭部には、これまた動物の耳…恐らくキツネ?の耳が生えていて、時折小刻みに動き、本物であると主張していた。
しかしなるほど。
ロッカーの鍵を受け取って中に入るシステムになっているのか。
てっきり籠にそのまま衣服を放り込んでいく物かと思っていたが、そこの所はしっかりと考えてあるんだな。
「おっ、いらっしゃい。お一人様だね?料金表はこれだよ」
「なるほど、時間制か…じゃあ、一時間半で」
「一時間半?随分な長風呂だねお客さん。まるで本当のジェペンガの人間みたいだ」
ジェペンガというか、それに限りなく近しい国の生まれだな、うん。
昔から長風呂派だし、前世と全く同じと言っても差し支えない体(違いがあるのか怪しいレベル)だから、それくらい風呂を楽しんでも問題ないはずだ。
そもそも家で風呂に入るときも長風呂だし。
シャワーは短いけどね。
「料金は銅貨二枚と鉄貨三枚だよ」
「銅貨二枚、と…鉄貨三枚ですね。これで良いでしょうか?」
「ひい、ふう…あぁ。じゃあ、ごゆっくり。はい、鍵。――時間が過ぎても呼ばないけど、出る時に追加で払ってもらうよ」
終了何分前とかでアナウンスしてくれてもいい気はするが…まぁ良いだろ。
時間の管理は基本スマ子がやってくれるし、金なら有り余ってるくらいだし。
んじゃあゆっくり楽しんじゃおっかなー。
肩こり解消の湯。
※―――
「っ、はぁ~!!良い湯だぁねぇー…!」
『すっごいおっさんみたいな声ですね、マスター』
「うっせ。どーせ中身はエロジジイですよーだ」
体を洗い流し、清潔な状態にして浴槽へと足を運ぶ。
見た目はただのお湯…透き通った水のような物だが、どうやらこれが肩こり解消の効能を持った温泉なのだとか。
因みに隣の浴槽にある白濁としたお湯の効果は、冷え性等の改善らしい。
そっちもそっちで気になるので、後で入ってみるとしよう。
「…なんだかさぁ、最近こう…張り合いがないって言うかさ。エリーセかルフェイ抱いてる時以外に生を実感できないんだよな」
『二人抱いてる時点でかなり今生を楽しめてますよマスター』
「おいおい、シェラも抱いたし、何よりこの後ヴァルミオンも抱くぞ俺は」
『悪化してるじゃないですか!』
悪化言うなし。
俺だって時々訪れる賢者タイム的な時にうなだれるんだからさ。
――普段が情欲に塗れまくってるだけで。
「…ってかヴァルミオンの奴、ほんとに何処行ったんだろーな。十数年くらい、一瞬程度にしか感じねぇけど…既に三人がハーレム入りを果たしてしまった以上、そろそろ紹介しておきたいんだけどな」
『なんですか、それ。モテる男は辛いってヤツですか?』
「モテる、モテるか……顔は良い方だからな俺」
『うぉ、すっごい自信』
「そりゃお前、父さんと母さんの息子だぞ俺。あの二人から醜悪な化け物が生まれるわけが無いだろ」
俺が俺を否定すると言う事は、つまり両親を否定することに他ならない。
先に死ぬなんて親不孝をやってのけた上で言うのはアレだが、俺は両親を傷つける事だけは許さないし許せない。
その点前世でいじめられていた時はまだ良い方だったな。
連中、俺はこれでもかってくらい虐げたくせに、家族の話題には触れなかったし。
もし触れられてたら…なんだろ、ネットで見かけた「自分がキレたらこんな感じ」とか見てるこっちがこっぱずかしくなるようなアレみたいになってたのかな。
家族の事貶されてついキレちゃってww
そのままいじめっ子にシャーペンブッ刺して、そこから大乱闘www
ま、途中からキレ過ぎて意識飛んでて、気づいたら全員血塗れで倒れてんのwwww
ちな、ほんとの話なwwwwwwwww
「…考えただけで悪寒が走るな。後々恥ずかしさで転がりまわりそうだ」
『?何がですか?』
「いや、こっちの話。――ってか肩まで使ってたけど、長風呂するときは半身浴の方が良いんだっけな。椅子でも作るか」
『えっ、お湯の中に椅子なんて置いちゃっていいんですか?』
「別に新品だから清潔だし、他に客が居るわけでも無いから大丈夫だろ。――確かにマナー違反かもしれないが、そこら辺はまぁ目を瞑ってもらうとして――」
「失礼しま~す」
『
――女?
おかしい、俺はしっかりと青色の、「男」の字が書かれた暖簾をくぐって来た。
悪戯で男湯と女湯を逆にされた、何てことは無いはずだ。
そもそもそんな事を店でやるバカはいない。
従業員の中にいるはずもないだろう。
じゃあなんで?
確かに感知能力に人の反応はあったけど、どうせ店員だろうと思って無視していた俺に罰が当たったの?
やっぱりマナーは大事にしなくっちゃなの?
「あっ、いたいたー!お客様~!」
「お客様ーって事は従業員か…?あの、俺に何か――」
従業員なら服も着ているだろう。
そう思って振り返ると、そこには全裸の美人がこちらに向かって歩いてきている光景があった。
この人は先程までの従業員と違い頭部に耳が無く、代わりにヴァルミオンを想起させるような角と、蝙蝠のような羽が生えている。
…よし、理性的な発言終了。こっから本能のままに感想言います。
――なんだあのおっぱい!?
デカい、マジでデカいとにかくデカいあり得ねぇくらいデカい!!
えっ、何あれ風船!?エロゲから飛び出してきた人かな!?
重力を感じさせない動きしちゃってるよ!?えっ、現実!?
エリーセの爆乳を平然と超えるような乳してるじゃんこの人!?
動くたびに揺れるってこういう事を言うんだなってマジで思ったの初めてなんですけど!?
エリーセですら普段はこんなに…あぁ、いや、アイツ結構揺れてるよな。
普段エッチしてる時も体が揺れる度に胸も…脱線したな。
で、なんなのこの人。
お客様呼びはまぁ、従業員なのだろうなって事で納得できるとしても、なぜ全裸なんだ?
見た目から察するにサキュバス?もしかしてここってそういうお店だったの?
「スペシャルサービスのお時間で~す!」
「俺と背丈が同じくらいな癖になんだこのおっぱい」
「あ、気になります?おっぱい」
「そりゃ気になるに決まってるだろその爆――いや、超乳!!」
そこまでデカいと逆に笑えてくるぞオイ。
エロとグロとギャグは全て表裏一体だと言う事を知らんのか。
ビシッとおっぱいに指を指した俺に対し、従業員らしき女性はにこやかにその手を掴み、指先をその乳へと沈ませた。
――うん、やっぱりエッチですわ。ネタとか言ったけどこれはエロい。犯罪級だね。
「…はっ!?いや、なんでそんな性接待が始まろうとしてるんですかコレ!?後になってぼったくるとかそういうオチじゃ」
「あぁ、やっぱりそこが心配です?」
やっぱり、と言いつつもなぜだか意外そうな顔をしているのが不思議だが、説明してくれるらしいので少し黙る。
因みにスマ子は一旦切ってる。
騒がしさが二、三倍になるのはこちらの望まぬ事なのだ。
「えっとですね。まず私はサキュバス…要するにエッチしないと死んじゃう生き物なんですよ」
サキュバスと言えばエリーセを思い出すが…アイツに取りついているとかいう奴は未だに顔を出す気配もないな。
心の奥で、いっつもエリーセに俺とエッチしろとそそのかしてくるらしいけど。
おかげで毎晩激しく燃え上がって…また脱線したな。
「厳密には、男性の持つ精気を精液として膣か口から接種する必要があるという物で。そこで、私はこの温泉に目をつけたわけです」
「話飛んだな…」
「説明は苦手なので。――とにかく、男湯に居ればいつかは私みたいな女相手にでも興奮する物好きが来るんじゃないかなーと、ひもじい思いをしながら待ちわびていたわけです」
「…説明が足らなすぎる気がするんだが…もしかして、その胸のせいで逆に遠ざけられてたのか?」
「はい。笑っちゃえるくらいですよね、こんな大きさ」
自嘲気味に笑い、あり得ないくらいでっかい乳を片方持ち上げる。
…正直俺はこれでも全然興奮できるけど、普通は笑っちまうか逃げるかだよな。
ってかこの人、従業員じゃ無かったのか?
勝手に住み着いてるみたいな口ぶりだし。
「つい先日から、ここには化け物みたいな女が出ると噂されるようになり…男湯には誰も訪れなくなってしまう始末。ようやく待ちに待った男の人と思ったら…」
「なんだか雰囲気がそういう感じじゃないと」
「はい…」
んー…そんな噂があったのか。
確かに他の温泉には人がいっぱいいるのに、ここだけ随分と過疎っているなーとは思ったけど。
もはや泣き出しそうな彼女に、なんだか申し訳ない気持ちが溢れてくる。
なんとかしてやれない物か…いや、違うな。どうやって謝ろうかな、あの三人に。
「なぁ、アンタ。一ついいか?」
「は、はい。なんでしょう?」
目尻の涙を拭い、笑顔を繕うサキュバス。
そんな彼女に対し俺は、後の事とかを一旦全部忘れることにして、やりたい事をやってやることにした。
具体的に言うと、そのでけぇ乳を揉みしだいた。
「…はぇっ!?」
「揉み心地が違うな。
「あ、あのっ、何を?」
「おっぱい揉んでるんだけど」
『それは見たらわかりますよ!!』
「そ、それはみたらわかります!!」
ステレオ放送やめて、頭壊れる。
叫ぶ二人を無視して、なおも彼女のおっぱいを揉みしだく。
時折頂の桃色にも触れ、感じさせる触り方へとシフトさせながら。
「えっ、あっ、あぁっ!?んな、何をぉ…?」
「して欲しいんだろ?こういうの」
「んぃっ!?」
ぎゅっ、と強くつねる。
ビクンッ、と体が大きく跳ねる。
――つい先日まで童貞だったとは思えないくらい女に慣れてきたな、俺。
もはや自分で自分が遠い存在のように感じるようになってきたわ。
「あのな、俺は諸事情で性欲にブーストかかってるんだ。人並み以上…発情期の動物もドン引きするレベルでな」
『それとこれとがどう関係するって言うんですか…』
「性癖もかなり歪んでる方だと自覚している。――つまりな、俺はお前でも全然興奮できる…それどころか、今すぐにでも犯してやりたいと思ってるんだ」
「えっ…?」
胸から手を離し、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめる。
服を着ていないという点に目を瞑れば、とても真剣な話をしているように見えること間違いなしだろう。
残念ながら、また俺が性欲にとらわれて暴走しているだけなのだが。
「化け物みたいな見た目?知るか、お前はエロい。ドン引きするくらいエロい。そのでっかい乳も、胸のせいで影が薄くなってるけどこっちもこっちでびっくりするくらいのデカい尻も、俺にとっちゃただただ興奮するだけの物なんだ」
「…こう、ふん?」
「こっちが引かれるかもしれねぇけど、正直に言おうか。――俺は今、すっごくお前を犯したい。既に四人も結婚の約束をした女がいて、そいつらが帰りを待ってるっていうのに、俺はお前とセックスしたくてたまらない」
『…うわぁ…』
スマ子のドン引きする声が俺を若干冷静にさせるが、止まらない。
止まるわけにはいかない。
俺は恐らく、己の軟弱な精神のせいでまたまた落ち込む事だろう。
もしかしたらしばらく勃起不全になるかもしれない。
それでは不味い。体が反応しなくとも、心は常に女に飢えているのだから。
だからこそ、一気に貫き通さなくってはならないのだ。
一度止まって、そのまま自己嫌悪に悶えるくらいなら、まずは目先の欲求を晴らす必要があると思う。
うん、典型的なダメ人間の考え方だな。
笑いたきゃ笑えよ。
「win-winってヤツだと思わないか?俺はお前とシタくて、お前はする事でしか満たせない空腹感を満たしたい。――どちらも損はないぞ」
「で、でも…本当に私で…」
「良い。寧ろこんな機会滅多にないだろ。俺は多分、この先お前レベルの女に出会えると思えない」
ヴァルミオンとかエリーセとかルフェイとか、シェラとかから感じる唯一無二感とはまた違った物だけど、それでもこの機を逃してはいけないと…こう、本能的な物が叫ぶのだ。
スマ子が呆れて物も言えないというように黙り込んでしまっているが、それでも、だ。
冷静になって聞いたらとてもクズな俺の発言に対し、彼女はどう返してくるのか。
反応次第では、俺は恐らくしばらく再起不能になってしまうだろう。
果たして…
「――わ、私も…し、したい」
「良しっ!」
弱々しげながらも頷いた彼女を、すぐさま押し倒す。
無論石畳に頭をぶつけさせるつもりは毛頭ない。
即座に敷布団のような柔らかい物を床に創造し、行為をするための空間を作成。
客や従業員が来る可能性があるが…そこはまぁ、もしもの時は魔法で何とかすればいい。
今は細かい事等気にせず、彼女を思うままに貪ろう。
あぁ、何があったというのはとても語れないので、ここではただ「すごかった」とだけ言っておこう。
後はまぁ、自分で想像してみてくれ。
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