第12話 ステータスを確認しよう
「…じゃあ、そろそろ部屋に戻るね、ルフェイ姉さん」
「あ、う、うん」
書斎(本当はステラさんの部屋なのだが、ルフェイ姉さんの部屋のような扱いになっている)を出て、部屋に向かう。
外では扉のすぐ横にシェスカが控えており、何も言わずに俺の背後へと移動してきた。
もう部屋に戻って寝るだけだってのに、一体どうしてこんなに付き従ってくるんだろうかこの人。
病気か?ワーカーホリックか?
「…じゃあ、シェスカ。そろそろ寝るから…お前もその、なんだ。休むと良いよ、うん」
「はい」
本当にわかってるんだろうかこの人。
前に夜中トイレに行くために部屋を出たら、扉の横で直立不動を貫いていたからな…
部屋に入って直ぐ、ベッドへ直行する。
正直疲れた。
今日は一日中ルフェイ姉さんの話し相手をしていただけだったのに、なんでか知らんが疲れた。
ステータスでも確認したら、疲弊とか書かれているかもしれないな。
「あっ、そうだステータスだ!」
上体を起こし、目の前にゲームの画面のような物を出現させる。
本当はこのような物はないはずらしいが、俺の
他にも色々と効果はあるが、それは一旦おいておいて。
【アレイスター・ルーデンス/年齢:5/男】
種族:人
職業:貴族
レベル:1
『各種能力値』
・攻撃→11
・防御→6
・魔力→678
・魔攻→55
・魔防→43
・敏捷→20
・運→67
・その他の数値→前世と同程度
『
・脳内秘書スマ子ちゃん
・
・
・
・繝ュ繧ケ繝・繝ッ繝シ繝ォ繝(譛?蛻昴〒譛?蠕後?荳?謦)(現在使用不可)
『
・
・
・
『状態』
・精神疲労(極)
・欲求不満(性欲)
・筋肉痛
『設定』
・年齢制限/無
・ゴア表現/有
・ドロップアイテムシステム/有
・言語サポート/無
「んー…毎日無茶な魔力使用をしてるからか、そこの伸びは良いな。表示されるのは『気』とか魔力の底上げ無しの数値だけど、それでもこの歳にしては良い方じゃないか?」
色々と気になる点があるだろうから、一つずつ説明していこう。
まずは俺の年齢。
言い忘れていたが、四か月前に5歳を迎えた。
四歳の時の起こした『兄の尊厳ボコボコ事件』の影響から、兄さん二人から師匠的扱いを受けるようになってしまったものの、それ以外は何の問題も無く時が過ぎた。
また、話にあがっていた俺に剣術等を教えてくれる先生を用意するという事も、なんだかんだでなくなることになった。
そりゃ教師要らずなんて呼ばれる天才な兄二人を同時に相手してボコボコにするような奴に、態々用意する必要もないだろうからな。
賢明な判断だと思います。
もし誰か呼ばれても、俺は自分の精神防衛のために全力でその教師を倒しに行くだろうし。
次にレベル。
そもそもレベルというのは『戦闘して得た経験』や『初期の状態からどれくらい成長できたか』というのをわかりやすく表す数字であって、レベルアップしたから何らかの数値が上がるとかそういう事は無いらしい。
つまり俺のレベルが1なのは、まだ『経験を得ることができるような戦い』をできていないという事である。
俺以上に発展途上な二人を相手にしたくらいで、何か新しい事が身に付くわけでも無いしな。
妥当だろう。
さて次。能力について。
これはまぁ、ここに表示されているもの以外にも山ほどあるが、それも含めて全部使えない。
唯一スマ子だけは生きているが、現在アップデート&メンテナンス中(声と正式なビジュアルの追加の為)のため、結局能力が手元にないことになっている。
現在使用不可、となっている物は恐らく、15歳になるまではずっとこのままなのだろう。
能力値と一緒に帰ってくるものだろうな、きっと。
そして
ここはある程度わかってきたので、一度情報を開示しようと思う。
所々気取って口に出すが、そこはまぁ痛い人だなぁ程度の認識でいてくれればいい。
まずは『
これは、色んなものをゲームのようにしてくれる
ステータスウィンドウ然り、脳内で一定範囲のマップを表示してくれたり、フローチャートを使って次の行動の指標を用意してくれたりする。
他には持ち物を収納して置ける『アイテムボックス』という物もあり、基本的に剣や日記はここに入れて持ち歩ている。
ただ取り出したりしまったりしたい時は念じなきゃいけないってのが面倒くさいんだけど。
それに、アイテムボックスとステータスウィンドウ以外は全部脳に恐ろしい程負荷がかかるから、スマ子がいない限り使えないんだよな。
スマ子がいても支配魔法…特に『
あ、でもアップデートが済んだらいけるかもな。
試してみてもいいかも。
ってか後どれくらいかかるのかな、スマ子のアップデート。
基本的に魔力の自動回復分から天引きされる以外に俺が干渉することが無いからな、待つしかできないのがもどかしい。
こういう機能が欲しいって要望は出せるけど。
続いて『
この異能は「よくわからない」の一言に尽きる。
成長促進、一時的な力の貸し出し等の効果があることや、何らかの条件を達成すれば奇跡すら起こすという事はわかったが、それ以外のすべてが謎に包まれているのだ。
…ってか奇跡を起こすってなんだよ、わけわかんねぇんだけど?
ゲーム内での技紹介で『何かいいことが起こる』って書いてあるやつをほうふつとさせてくるの何なの?
「そして、『
効果は前に言った通り、今まで過ごしてきた時間を使い、それに見合う何かに変換できるという物。
金も、魔力も、気も、なんでもだ。
そして、神様からの謝罪的な意味を込めて渡されたあの修行用空間を使えば、いくらでも時間を用意することができる。
今はまぁ、使えないようになっているけど。
「次第に力を馴染ませていく予定なのに、時間の止まった空間でまた同じくらい鍛えたりしたら体が壊れるからーって、制限されちゃってるんだよな」
おかげで筋トレをする時間が足りない。
貴族として学ばねばならないことも多く、5歳児のはずなのに大学受験を控えた高校生を思わせるような勉強をしないといけないのだ。
魔法の練習に一日中使う時もあるしで、結構伸び悩んでいるんだよな。
――はぁ、鍛えたい。
最近は顔を出さなくなっていた不安感がまた鎌首をもたげてきた。
鍛えすぎたが故に、これ以上が必要なのではと心配してしまう、あの現象だ。
誰かが言っていたように、人間の求める物には果てが無い。
少量の金で良いと言っていた者が金を手に入れれば、さらなる大金を欲する様に。
既にどの世界の存在にも負けないばかりか、神様相手だろうと難なく勝利できるレベルとの事なのに、俺はさらに上、もっと上を目指しているのだ。
不要だろうに、なぜか必要だと感じてしまう。
…これも一種の精神的な問題だろうか。
精神疲労(極)だからな俺。極だぜ極。
詳細でどれくらいな物なのか確認したら、もはや病院でも手の付けようがないレベルとか書いてあったわ。
それもう精神疲労というか、精神疾患では?
「でも確かに、躁と鬱の差が酷くなってる気はするなー…落ち込むときはとことん落ち込む癖に、テンション高い時はバカみたいに高いって感じ」
それを人は躁鬱というのだろうが、別にテンションの乱高下が酷い以外に何も問題は無いからなぁ…
心を誰かに読まれているって考えるわけでも無ければ謎の電波を受信したつもりもない。
誰かの視線を感じるか、と言われればこれもノーだ。
「……ってかいつまで性欲持て余してるんだよ俺。この調子じゃまともに女子と会話することすら不可能なんじゃないか?」
一応ルフェイ姉さんとは話せているが、それは義理とは言え姉のように感じているからか…或いは、幼過ぎて無理…とか?
「でも俺、昔はロリコンどころかアリコン(アリス・コンプレックスの意)…こじらせすぎた時はハイコン(ハイジ・コンプレックスの意)だったからなー…幼いからNGなんて事はあり得ないはずだし…」
やっぱり、ルフェイ姉さんは姉さんなのだろうか。
義理なのに。
さらにいうなら、精神的にはここの家族全員義理なのに。
「ってか好きな年齢層の話で思い至っちゃったけど、俺ってもう年上のお姉さんを要求することが不可能なのでは?」
不可説不可説転とかいう仏教でしか使われないようなクソデカ数を余裕で突破するレベルの年数(ギリギリグラハム数までは及んでいない、とか言われた。グラハム数が何なのかよくわからない)を生きてきた俺は、並み居る年上美人を超越した存在となってしまっているわけだ。
見た目はショタでも中身がおっさん(おっさん所の騒ぎではないと思う。人生経験的には高校生だけど)ならおねショタは成立しない。
つまり俺は、せっかく子供の姿になったというのにおねショタができないと言う事だ。
なんだろう、一気に元気というかなんというかが無くなって来た。
「性欲が動力源とか、子供としてどうなんだろうな…」
子供どころか男としてもどうかと言った所だろ。
前世から色々とやってきたが、それでもここまで酷い考えをもとに生きてきたわけではない。
何度も言っているが、あの禁欲空間で長々と過ごしたのが良くなかったんだろうな。
リビドーが抑えきれないし。
「――もう寝よ。明日は勉強して体を動かさなきゃだし」
光を発生させるマジックアイテムのスイッチを切り(正確には魔力が流れる状態を解除しているだけ)ベッドへ横になる。
そういえば俺はマジックアイテムを作るセンスだけは無かったな、とどうでもいい事を考えながら、意識は次第に沈んでいったのだった。
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