第16話 SIDE 村長。村民からそっぽを向かれる(ざまあ回)
ワシはこのエンザ村の村長。豊かに村民を住まわせる
マリクに村の畑への
ずぶ濡れで泥だらけ、雨天の森から抜け出てきた敗残兵のような有様でワシは自宅へと逃げ戻る。しかし、そこには焼け落ちた建物の残骸が残るのみ。
安心して体を休められる場所も家具も何も残ってはいなかった。
後をついてきた村の男たちも似たようなもので、ワシが頭からかぶった大量の水の巻き添えとなった。したたかに顔を打ちつけた後にさらに水をかぶるという追い討ち。
しかし、腹立たしいがマリクに報復する手段が無い。それどころかどうにかしてマリクの協力を得なければ税を払う事も難しい。
すでに早蒔きの麦は収穫してしまっている。ほとんどの村人達はそれをワシに納めていたが、そのワシ自身の失火によって
マリクの奴めに焼け落ちた家や倉庫、税として納める作物を元通りにさせる。さらに村の畑に
それどころではない、村中の畑では麦も芋も枯れ始めた。このままでは納税はおろか自分たちの食料もそう遠くないうちに尽きる。そうなると
「どうしてこんな事になったんだろうな…?」
不意に誰がが呟いた声に一同の空気がさらに沈む。
「マリクの家に放火をしたりしなければ…」
「ああ、少なくとも俺の家は燃えてねえ…」
「いや、そもそも村長の家も燃えてねえから…」
「そうだ!ウチは早採れの小麦だからもう税は納め終わっている!」
「お、俺ン
「そもそも村長がマリクの家を燃やしに行かなけりゃ良かったんじゃねえか?」
ワシが一番気付かれて欲しくない事を誰がが呟いた。
「あの三馬鹿トリオが初めから放火なんてしなければ!」
「そうだ!それなら村の畑全部、
マリクを怒らせさえしなければ…。
「そうすりゃ、今まで通り小麦も
「ああ!少なくとも
「ウチの
「それを…、マリクを怒らせたモンだから…」
村人達のワシを見る目が冷たくなっていく。
「こ、こうなったらマリクの野郎のトコに頭下げに行かねえか?そうすりゃあよう…」
「あ、ああ!それで元通りだ!俺達は助かる!」
「急げば税を納める時期に豆の収穫ならまだ間に合う!残ってる食料を食い尽くす前に豆を、それと芋でも作れれば冬はなんとか越せるんじゃねえか?」
「さすがに小麦ほど価値は高くねえから今年は労役に出なくちゃならないだろうが…」
村長たちをそっちのけで村の男達で話をポンポン決めていく。
「なら早い方が良い!一日でも早く!」
「ああ!あのマリクの畑を覚えているか?昨日蒔いた小麦が向こう
「さっさとマリクのトコに行って頭だけ下げて、
そう言って村の男たちがまたマリクの家に向かおうとする。村長であるワシを差し置いて勝手に話を決めおって!
「ま、待て!ワシの意見も聞かず勝手に事を決めるなど…!」
ワシは村人達を押しとどめようとする。
「うるせー!馬鹿たれが!」
あっさりとワシは村人達に押しのけられ地面を転がった。
「誰がテメェの言う事なんか聞くかよ!」
そんな言葉を吐き捨てられ、村人達はワシを置き去りにした。残ったのはマケボとオボカの父親達も一緒だ。
「あ、あいつらめぇ!自分達だけおこぼれにあずかろうと…」
取り残されたワシ達であったが、事の
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