第7話 馬鹿な親たちに俺は現実を教えてやる
「バ、バカな…。燃えた家が…」
村長が力無く呟いた。
「おい」
俺はそんな村長に話しかけた。
「言葉は正確に使えよ。なにが燃えた家だ、お前が火をつけた…燃やした家だろうが。自然に燃えたみたいな言い方しやがって、自責の念すら感じないのか?」
俺はそう言って村長たちを睨みつける。
「それがどうした!?い、いや、どんな魔法を使ったんだ!答えろ!」
「言うか、バーカ。人ン
そこにオボカの父親が話に割り込んでくる。
「そ、そうだ!ウチの娘の魔法ならともかく…」
「何も知らないってのは幸せだな?お前の娘は初歩の攻撃用火魔法を使うのでやっとだったよ。それを俺が上位の魔法を使えるように強化した。だが、それでも凄く苦労させられたよ。魔法を発動させる為の
「だ、だが、それでもウチの娘は立派に焼き払う事で見事オーガを討ち取って…」
「そんな身動き取れないオーガが唸り声を上げたり、手を動かす素振りを見せただけであの女は何度も腰を抜かしていたよ。終いにゃ泣き出してさ…」
ため息混じりその当時の事を語ってやる。
「だから俺はオーガの動きを完全に止めるまで魔法を使う羽目になったよ。声すら出せないようになるまでな…」
自慢の娘の醜態を聞いてオボカの父親は何も言えなくなっていく。
「まあ、安心しなよ。グリウェルもマケボも同じようなモンさ。鎧を着ただけで重過ぎると言ってするぐにヘバる勇者に、いきがって大戦斧を持って行こうとしたが持ち上げられなかったマケボ。似たモン同士だよ、あの三人は。そして自分たちだけじゃ何も出来ないクセに帰りの馬車の中じゃいつの間にか自分の手柄みたいに話していたよ。もっとも俺の
「ふっ、ふざけるな!グリウェルは勇者なんだぞ!そんな訳があるかっ!」
「ッ!?そ、そうだ、そうだ!」
「オ、オラの
勇者一行である事をよりどころに三人の父親たちが再びそんな事は無いと騒ぎ出す。
「馬鹿どもが…」
俺の言葉に親たちが『えっ!?』という表情を浮かべた。
「子供の頃、その自慢の子供三人がなんて呼ばれてたか覚えてないのかよ?」
俺は度し難い親たちに呆れていた。
□
「オラたちの
戦士マケボの父親が声を漏らした。
「ここ一年、勇者だなんだと持ち上げられてすっかり自慢の息子になったのかい?マケボは多少は力があったが、あのデカい
「うぐぐぐっ!」
そ 親の目から見てもその通りだと感じていたのだろう。まずマケボの父親が歯ぎしりしながら何も言い返せなくなった。
「次にオボカ…。なんやかんやと理由を付けては農作業でも手伝いでもサボろうとしてたよな。んで、『あの手伝いはやってあるのか?』と尋ねられればいつも『ありまぁす!』って言ってたよな。ちゃんとやってた事なかったけど。だからアダ名は『嘘つきオボカちゃん』だったな」
最後に俺はグリウェルの父親、村長を見た。
「グリウェルは余計な事して失敗してたよな。それをよく誤魔化していたな。畑で採れた芋を何回かに分けて持って帰れば良いのに、面倒だからと大きな藁の袋に入れて一回で運ぼうとしたりとかさ…。そしたら案の定、荒く編んだだけの藁の袋じゃたくさん入れた芋の重さに耐えられなくて運んでる途中で破けて谷底に落としたりな…。やせた土地ばかりのこの村には痛手だったよな」
「だ、だが今は麦も採れるようや肥えた土地になり…」
村長が口を挟む。
「それは…、まあ良いか。その後、グリウェルが言った事を覚えているか?『俺は芋を藁の袋に入れに行っただけ』だの『あそこで藁の袋を使うようにしたのは神のお告げ』だとか言って謝りもしなかったよな。それでいて目立ちたがり、中身がともなわない『すっからかんのグリウェル』って言われてたな。ちなみに今も変わってなかったぞ。俺は勇者だって言ってるけど素人となんら変わらない、まあ元が村人だからな」
俺はそんな人間が簡単に立派になる訳ないだろと付け加えると村長たちは顔を真っ赤にして怒り、今にも掴みかからんばかりだ。
そんな緊張感が走った時にこっちに駆けてくる村人の姿があった。
「そ、村長っ、ここにいたのかっ!?大変だあっ!アンタの家が家事だあっ!!」
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