第6話 火をつけられた家を修復する俺の『能力』とは。
「言ったろ…?離れた方が良いって」
ずぶ濡れで泥まみれ、俺の生家に火をつけた村長を始めとした
奴らは呆然とした様子で俺を見上げていたが、やがて村長が口を開いた。
「な、なぜだ?ど、どうして
「強化術使いごときだと?口に気をつけろよ、村長。そもそもアンタは強化術を使う事はおろか魔力すら
自分でもずいぶんと冷たい声が出ていたと思う。村長を見下ろしながら言ってやる。
「だが、どうして水の魔法を使えるんだッ!?ウチの娘のような賢者でもないのに!」
唾を飛ばしながら女賢者オボカの父親がまくし立てる。
「返答(こた)える必要があるのか?俺の家に火をつけた奴らに。…だが、一つだけ教えてやるよ。お前のご自慢の娘にはこの魔法は無理だ。おそらくグリウェルからの手紙にはこう書いてあったんだろ…オボカの業火の魔法はオーガの強靭な肉体すら焼き尽くした…ってか?」
「ッ!?」
俺の指摘通りの手紙の内容だったのか勇者の一行を気取る村長をはじめとする三人が黙りこくった。
「図星か…。まあ良い、アンタらを村長だなんだと尊重するのはヤメだ。俺は家を直さねえとな」
そう言って相手をするだけ無駄な三人から視線を外す。
「み、水を出したからって調子に乗るな!だいたい火を消せてもどうやって焼け落ちた家を戻すんだ!?」
「強化術使いに何が出来るだ!?」
「馬鹿も休み休み言え!」
口々にそうまくし立てるが相手にしない。そして俺は再び手を天に向け高くかかげる。
「砂よ、岩に
言うやいなや辺りは光に包まれ、目の前には先ほど焼け落ちた我が家の代わりに古びた木造の家が現れた。古ぼけた、それでいて懐かしい見慣れた我が家だった。
□
強化術使いとは、とある生物に筋力増加とか敏捷性増加など身体能力を底上げする魔法の一系統である。
大抵は冒険者パーティの後衛に位置し、使い時を見極め仲間を強化する。と言うのも戦闘の度にそんな事をしていたら魔力をすぐに使い切ってしまう。
強い敵か弱い敵かを判断し、不要と思えば強化無しの地力で戦う。あるいは強い魔物でも立ち回りを工夫したり、一匹ずつ誘い出して袋叩きにするなどして極力魔法を使う機会を減らし戦っていくものなのだ。言い換えれば『ザコ敵では強化術(バフ)は使わない、ボス戦で使う』と言った感じだ。
しかし、勇者グリウェルたちは明らかに実力不足。基礎体力すらろくに無い。
もし俺の強化術が無ければ、鎧を着て歩けば数分で
そもそもグリウェルは自力では満足に剣も触れない。聖剣の重量に筋力が追いついていないのだ。だからなんとか持ち歩けても、満足に振れやしない。使いこなすには持ち歩くより多くの筋力が要求されるのだ。
ちなみに巨漢の戦士マケボはいきがって両手持ちの
使いこなせれば
そんな勇者一行を強化した魔法、周囲には
この付与魔法、対象は生き物だけではない。物品にもかけられるのだ。例えば炎の属性を宿した剣、これも付与魔法によって炎の属性を与えられた剣だ。
つまり俺は人などには強化術(バフ)使いお得意の筋力強化などは
強化術使いが肉体強化だけしか出来ないのに対して、肉体だけでなく武器や防具も強化出来るのだ。それがどれだけ有効かと言えば古ぼけた剣を使うまだひ弱な戦士を例に挙げれば、俺の付与魔術によってそんな戦士が筋肉モリモリマッチョマンになってドワーフの鍛治師が打った名剣で切りかかってくるようなものだろう。並の敵なら一刀両断である。
さて、そんな俺の付与魔法だがもう一つ特記事項がある。それは『
燃え盛る俺の家の火を消したあの大量の水…、それは
そして焼け落ちた家を元に戻したのは『
俺は師匠テンコの元で十年魔法の修行をしたが、付与魔法以外は使う事が出来なかった。それこそ初歩の火魔法、薪に火を付ける『
それがコンプレックスにもなった。簡単な魔法が出来ないなんて…と。
だが、師匠の一言で俺は活路を見出す事が出来た。
「自分の出来る事で、出来ない事をカバーすれば良いと…」
俺に出来る事…、付与魔術。そしてそれは『
それを師匠から聞いた時、俺は体に衝撃が走った。俺は魔法の品物を作る事も出来る、なら俺は自分で作れば良いんじゃないかと。魔法の力を宿した
俺自身が付与魔術以外を使えないなら、例えば火を放つ
それ以来、俺は様々な品物を作るようになったのである。
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