「短編」虹の橋をかけにいこうよ

たのし

虹の橋をかけにいこうよ

スシッ スシッ スシッ スシッ


「予定では今日はこの辺りかな。」


雲の上を歩いて、神様が作った計画通りにその場所に行き水色のジョウロを地上に向けて僕は雨を降らしている。


雲の端っこに立って座り地上を覗き込みながら目的の場所に降らせる。


少しでも場所を誤ると神様から大目玉をくらう。神様はいつもは優しいけれど、失敗したら持っている杖でお尻を突っついてくる。これがまた痛い。


ある日僕は、ある森に降らせる様に言われて目的の雲の上からパーって雨を降らせた。


「おっ。今日は虹を上手く描けたぞ。」


僕達の世界では虹を描ける様になれば一人前として独り立ちできる。僕は上手く虹を描ける様になるまで、1500年はかかった。周りのみんなは1000年超えた辺りからボチボチ独り立ちしていたが、僕は要領が悪かったのかだいぶ遅れていた。お師匠様にもよく打たれていた。


僕は上手く虹が描けたなと、虹のアーチの中を口笛を吹きながら潜って雲の上に戻った。


スシッと踏み締める雲の音は僕の鼻を伸ばした。


次の目的地に行こうとした時厄介な奴が現れた。そいつは黒い格好した手に太鼓を持った奴だ。こいつは雷を鳴らすとてもうるさい奴だ。


しかも、こいつ僕の自慢の虹の上に黒い雲を覆い被せドカドゴ太鼓を鳴らし始めた。


僕は自慢の虹を消された悔しさから、ドカドゴ鳴らす迷惑なそいつの頭をコツイてやった。

そいつはドカドゴ更に太鼓を強く叩き始め、僕のホッペを捻ってきた。それから僕達はど付き合いの喧嘩だった。

そいつは太鼓をドカドゴ叩き僕はジョウロをブンブン振り回した。


お互い疲れた頃、空がパッと明るくなりそこから白髭を蓄えた神様が降りてきて、僕達の首根っこを掴んだ。


「お前たちがやった事が分かるのか。」


僕達は雲の縁まで連れて行かれ、頭を雲の地面に押し付けられた。

地上を見ると、山の木が倒れ見るも無惨な光景になっていた。


「自然に水を与えるのがお前たちの仕事だろう。」


そう言って神様は持っている杖で僕達のお尻を何回も打った。


「ごめんよー。自然のみんなごめんよー。」


僕達2人は倒れる木や逃げる動物達を見ながら神様にお尻を打たれた。


「これに懲りてしっかり働くんじゃ。分かったな。」


僕達2人は地上を見てコクリと頷いた。


神様はまた光の中へ姿を消した。


僕とカミナリ君はその後。


「ごめんね。カミナリ君。頭痛かっただろ?」


「ううん。アメ君もほっぺ痛かっただろう?ごめんね。」


僕達は握手をしてこれからは協力する事にした。


「ねー。アメ君地上に降りて皆んなに謝ろうよ。」

「うん。僕もそう思ってた。」


僕達は恐る恐る地上へ降りた。

地上は土砂崩れで木達が倒れ痛そうにウー。ウー。と言っていた。それを見つめる動物達。

僕達2人はごめんなさい。ごめんなさい。と謝り続けた。


「謝るのはもうよしておくれ。それよりワシ達を起こしてくれ。起こしてくれたらまた根を張って体を固定できる。さぁー早くしておくれ。」


僕とカミナリ君は柔らかさも丁度いい蔦を木に回すと力一杯引っ張った。しかし、木はビクともしない。しかし僕達は顔を真っ赤にしながら懸命に蔦を引っ張った。すると手元が少しづつ軽くなっていく。後を見ると沢山の鹿や鳥や虫達が口で蔦を咥え引っ張ってくれていた。


やっと一本の木を立てるとズルルルっと木は根を生やし体を固定した。


「一時期はどうなるかと思ったわい。これで何とか大丈夫じゃ。しかし、他にも沢山倒れている木達がいるから起こしてあげてくれんかね。」


僕達その後も自然のみんなの力を借りて木達を起こした。中には枝が折れ痛そうにしている木もいたので細い蔦の縄で固定し治療した。


日没してからも僕達は木達を起こし、やっと朝日が登る頃みんなを起こし終えた。


「みんなありがとう。そしてごめんなさい。」


僕とカミナリ君は頭を深く下げて謝った。

すると一匹の鹿がツノで僕達の顎を上げると首を横にブンブン振り回していた。下を見ると蟻の大群が澄んだ川の水の入った竹のコップをこぼさない様持って来てくれた。僕達はそれをグビビと呑み喉の渇きをスーッと潤した。


それから、鹿はクルりと僕達に背中を見せ乗る様促した。


僕とカミナリ君は鹿の背中に乗ると鹿は慣れた足取りでピョンピョン森を駆け巡った。葉から滴り落ちる水滴の宝石。木々から落ちる光のエンジェルロード。森を駆ける風のハーモニー。

僕達はそんな森を楽しんだ。


「そろそろ雲に帰らないと。でもここには絶対また来ようね。」


僕はうん。っと言うと鹿は立ち止まり僕達を降ろしてくれた。


僕は小雨を降らし雨を蹴りながら雲に帰った。

スチッスチッ。


雲に戻ると僕は小雨を少しだけ強くし、カミナリ君は雲の縁からタイミングを測っていた。


今だ。カミナリ君はゴロロと一回鳴らすと僕はジョウロをから出る小雨を止めた。


すると森を囲う様な大きな虹ができた。

僕とカミナリ君は2人で虹のアーチを潜った。


「ねー。ねー。カミナリ君。君が良かったらでいいんだけど、これから神様の計画してくれた場所に一緒に虹を咲かせに行こうよ。君となら上手く行きそうだ。」


カミナリ君はコクリと頷くと僕達は雲に戻り、スチッスチッと2人で次の目的地に向かった。


まだ見ぬ場所に虹を咲かせに。




おしまい。

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「短編」虹の橋をかけにいこうよ たのし @tanos1

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