第14話: 登校日

何もやることがなくてゴロゴロしていると、エイカの言葉を思い出す。

──中途半端な人間だって突きつけられるようで嫌だから、かな

「……頑張っているでしょうに」

今の言葉は、エイカには届かない。今の僕には、エイカを支えることものできない。そういう意味で、ちっぽけな存在だ。好きになった女の子一人すら救えない。きっとエイカなら人間を救うことの難しさを滔々と語ってくれるのだろうけれども。

あと二週間。僕が願おうが何をしようがその日はエイカにやって来る。


一応始業のチャイムが鳴る。目を向けた席には誰も座っていない。

「……勉強、忙しいのかな」

基本的にエイカはこういうところでサボるようなことはしない、はず。僕の勘違いかもしれないけど。それとも風邪か何かにかかって大事をとって休息しているとか。可能性はいくつかふわりふわりと浮かんで、消えていく。

「連絡……」

そういえば、連絡するなと言われているんだった。僕が今連絡したところで何かが変わるはずはないし、完全に自己満足以外の何物でもない。

そんなことをぼんやりと考えていれば、すぐに家に帰ってきた。登校日が何のためにあるのか、本当に分からなくなりつつある。

制服を脱いでハンガーにかけ、適当に部屋着に着替えてベッドに倒れ込んでいると着信音がした。

『ごめん、今日が登校日なのすっかり忘れてた』

エイカから来た最初のメッセージ。

『大丈夫なの?』

素早く文字を打ち込んで送信すると、すぐに既読の文字がつく。

『今電車の中。受験帰り』

『ああ、今日試験だったんだ』

『言い忘れていたことは謝る』

『大丈夫。何か問題があったわけじゃないってわかって安心した』

『そう』

そっけないような返事だけど、これがエイカの通常対応なのだろう。

『ところで、明日は暇?』

終わりだと思っていたので音に驚いてしまった。

『一応、しばらくは』

『カラオケに付き合って』

『僕、あまり上手に歌えないよ』

『大丈夫。私が二時間ぐらいぶっ通しで歌うのをずっと聞いてればいいから』

それはカラオケと言うのだろうかと僕は少し首を捻る。

『別にいいよ』

『相当むちゃくちゃ言っている自覚があるんだけど、本当に?』

『うん』

『わかった。10時にこのお店で』

この近場でよく使われる、学生御用達の安いお店の場所が一緒に送られてきた。

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