「短編」どんな形だろうね

たのし

どんな形だろうね

「ねー。ママー。何か欲しいものない。」


チカちゃんは恥ずかしそうに体をモジモジさせながら聞いていた。


「んー。そうだなー。クッキー食べたいかもしれないわ。チーちゃん一緒に作る?」


「クッキー?大丈夫。大丈夫。チーちゃんが作ってあげるからママはそこに座っといて。」


そう言ってチーちゃんは庭に出てポケットから虹色の鉛筆を取り出して空にクッキーを書き始めた。形に大きさは不揃いだが、チョコチップにラズベリーソースが掛かったクッキーを描くと空に向かって描いたクッキーは本物になり、それをお皿に乗っけてママのところに持って言った。


「ママ。できたよ。はい。どうぞ。」


ママはそれを見てビックリ。


「チーちゃんこれどうしたの。それに凄く美味しい。」


チーちゃんは虹色の鉛筆を見せて


「昨日、ママとパパと川に遊びに行った時に、拾ったの。それで、お絵かきしたらそれが本物になったの。」


チーちゃんのママはそれを聞いて凄く驚いた。


「チーちゃんママにもちょっと貸して。」


虹色の鉛筆をママは借りて、庭に出て空に向かって線を引いてみたが、描くことが出来なかった。

「チーちゃんにしか使えないみたいね。」


ママは少し残念そうに虹色の鉛筆をチーちゃんに返した。


「チーちゃんにしかこの虹色の鉛筆は使えないみたいだね。大事にしなきゃだよ。後、余りおやつばかり描いちゃダメよ。」


そう言ってママとチーちゃんは家の中に入ってチーちゃんが描いてくれた形が不揃いのクッキーを食べた。


夜になり、パパが仕事から帰宅した。


「パパー。何か欲しい物ない?」


チーちゃんはモジモジしながらパパに聞いた。


「んー。パパ今凄くビールが呑みたい。」


「分かったー。」


チーちゃんはそう言って、庭に出てビールを描いた。ぐにゃぐにゃのグラスに黄色い液体。そして雲のような泡。


「はい。パパ。ビールよ。お仕事お疲れ様。」


チーちゃんに渡されたぐにゃぐにゃのグラスを持ち。パパは驚いた。


「チーちゃんこれどうしたの?」


チーちゃんは虹色の鉛筆を見せた。そこへママがキッチンからホカホカの枝豆を持って来て虹色の鉛筆の事をパパに話した。


「チーちゃん。それは凄いものを拾ったね。」


そう言うとぐにゃぐにゃのグラスのビールを一口飲んだ。


「んっ?」


それは、ビールではなく無味無臭の液体だった。チーちゃんはビールの味が分からないから味まで描くことが出来なかった。


「パパ。美味しい?」


「凄く美味しいよ。疲れが全部飛んでいってしまった。」


「やったー。」


パパはチーちゃんに優しい嘘をついた。


次の日。チーちゃんは幼稚園で好きな男の子誠君と積み木で遊んでいた。


「マコト君。チーちゃんと結婚して住むお家はこんな感じかな?」


チーちゃんは積み木の屋根を乗せながら言った。

「うん。こんな感じだね。庭をもう少し広くしようよ。」


そう言ってチーちゃんと誠君は立派な家を完成させた。


完成させたくらいにチーちゃんのママがお迎えに来て


「マコト君また明日ね。」


そう言ってバイバイした。


帰り道。ママにチーちゃんは。

「チーちゃん、マコト君と大きくなったら結婚するんだ。」


「へー。そうなの。マコト君カッコいいもんね。」


「そうなの。かけっこも早くて優しいの。」


「あらっ。ママも仲良くしておかなきゃ。楽しみだわ。でもパパに言ったらダメよ。寝込んじゃうかもだから。」


「分かった。」


チーちゃんは口チャックの仕草を見せ笑っていた。


その夜。


「チーちゃんマコト君と結婚するの。」


パパはいきなりのチーちゃんの告白に口に含んだビールを吐き出した。


「マコト君?どんな奴だ。」


チーちゃんはマコト君の事をパパに話した。


「今度、どんなヤツか会っておかなきゃな。」


ママはそれを聞いて、ニコニコ笑っていた。


次の日の幼稚園。


「マコト君おはよう。」


「チーちゃんおはよう。」


二人は早速砂場へ行き、スコップで穴を掘り始めた。

「ねー。ねー。マコト君。欲しい物ない?」

チーちゃんは虹色の鉛筆を見せながらマコト君に聞いた。


「この虹色の鉛筆空に描いたらなんでも本物になるの。凄いでしょ。」


マコト君は穴を掘りながら


「凄いねー。んー。なら。」


マコト君は手を止めて。


「チーちゃんの好きが欲しい。」

マコト君は裾をクシャクシャに握りながら言った。

「マコト君。好きってどんな形かなー。」


チーちゃんな空に指で描きながら言った。


「どんな形だろうね。」

「どんなだろうね。」


2人は隣同士にピッタリとくっつき空に好きの形を指で描いていた。


青い空に描ききれないくらい、2人はいっぱいのスキの形を描いた。



おしまい。

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