「短編」ロボットのコンとナゲキバト

たのし

ロボットのコンとナゲキバト

ボク ハ ダレデスカ。


ココ ハ ドコデスカ。


ダレ 二 オツカエシテイマスカ。


ボク ノ ゴシュジン ハ ドナタデスカ。


プログラムが消去されたロボットのお話。

彼は「作れる品は1000品。胸に80%カロリーカット電子レンジ搭載の自動料理ロボ。」として世間を大々的に賑わせたロボットである。


ボク ハ ダレデスカ。


彼は新型のロボットが産まれ、旧型となったロボット。前の主人がスクラップ費用をケチって初期化され砂漠の誰のいない所に不法投棄された、ロボット。


プログラム ヲ ジドウホセイ シマス。


ワタシ ノ ナマエ ハ ワカリマセン。


ニンゲン デハ アリマセン。


ワタシ ハ ダレデスカ。


ゴショジン ハ イマスカ。


デンシ カイロ イジョウ ナシ。


誰もいない砂漠のど真ん中。

人気もなければ夜は暗い。

彼は自分を思い出そうと、回路を何回も組み換え計算を繰り返していた。


ボク ノ ナマエハ アリマセン。


ムネ ニ オオキナ ハコ ヲ ツケテイマス。


デモ ウゴケマセン。


オイル ヲ ヒザ ノ カドウイキ ニ サシテクダサイ。


ウゴケマセン。


彼は前の主人にメンテナンスをしてもらうことも出来ず、膝と肘は錆びて動くなかった。


デンキカイロ クミカエ エネルギー ノ ショウヒ ヲ オサエマス。


彼は暗い砂漠の中、疑問を抱えながら眠りについた。


オハヨウ ゴザイマス。ジドウウンテン ニ キリカエマス。


その時である。頭にナゲキバトが休むために止まって大事そうに羽を嘴で整えてだした。


アナタ ハ ボク ノ ゴショジン デスカ。


彼は首を上下させながらナゲキバトに問いかけた。ナゲキバトは一瞬空に飛びたったが、自分に害がない事を確信してまた彼の頭に戻って来た。


アナタ ハ ワタシ ノ ゴショジン デハ ナイノデスネ。


彼は頭を上下に振りながらナゲキバトと会話を試みようとするが、ナゲキバトは彼の頭を突くだけだった。


ボク ハ ヒトリミタイデス。


ナマエハ ワカリマセン。 ヨカッタラ 

ボク ニ ナマエ ヲ クダサイ。


するとナゲキバトは彼の足元から小石をとり

空高く舞うと彼の頭めがけて小石を落とした。


コン。


彼の頭に小石があたり、ナゲキバトはまた彼の頭に戻って来て羽の手入れを始めた。


コン デスネ。

ボクのナマエ ハ コンデス。

ヨロシク。


ナゲキバトはコンの頭を突いて返事をした。


ソロソロ ヨル ニ ナリマス。

サムイデショウカラ ボク ノ ナカニ。


そう言うとコンは胸にある電子レンジの蓋を開けた。


ココ ニ ドウゾ。


ナゲキバトはコンの胸の中に入り耐熱皿の上に丸まった。


サムイ ノデ ヨル ハ シメテオキマス。

ユックリ ネムッテ クダサイ。


そう言ってコンは蓋を閉め、少しだけ箱の中を暖かく調整した。


サムカッタラ ツツイテ クダサイ。

オヤスミナサイ。


コンは胸の中に暖かさを感じ夜を過ごした。


朝になり、ナゲキバトは何処かへ行っては小枝を咥え戻ってきてを繰り返しコンの頭の上に巣を作り出した。




コノ モフモフ ハ ナンデスカ。


ボウシ デスカ。


コンは目をキョロキョロさせながら言った。

ナゲキバトはそれからも枝や落ち葉を集めて来て立派な巣をコンの頭の上に作り出来上がった巣の中に身を屈めた。


それから数日。コンは頭の上にコロコロする違和感を感じた。ナゲキバトは巣の中に卵を生んでいたのだ。


コレ ハ タマゴ デスカ。

ボク ノ トモダチ ガ フエルノデスネ。

ウレシイ デス。


コンは頭を動かさない様目をキョロキョロさせながら喜びを表現した。ナゲキバトは夫婦で卵を温めて子育てをするのだか、そのナゲキバトは一人で卵を温めている様だった。餌も食べずずっと卵を温めている。少しづつ彼女の元気がなくなっていくのをコンは心配した。


ヨカッタラ ボクモ テツダイマス。

ボク ノ カラダ ノ ナカニ タマゴ ヲ

イドウ サセテ モ イイデスカ。


そう言うと、ナゲキバトは温めていた体を起こしコンの顔辺りをパタパタと飛んだ。


コンは何とか動く左手をギシギシと動かし頭の上の巣を胸にある電子レンジの中に移した。


コレデ ダイジョウブ。

ボクモ オテツダイシマス。


コンは胸の扉を閉めて適温に温め始めた。

ナゲキバトはその様子を見て安心したのか、餌を食べに飛んでいった。


ボク ノ オトモダチ フエマス。

ウレシイデス。


コンは胸に宿る暖かさを感じていたら。

太陽がコンの真上にやって来た頃。事件は起きた。

ハゲワシがコンの上空を旋回しだしたのだ。

ハゲワシの目はコンの胸の中にある卵を捉えていた。

旋回していたハゲワシはコンの胸にある電子レンジめがけて直滑降で突っ込んできた。


幸い胸の扉は閉まっていたため卵は無事だが、

コンの体をハゲワシは鋭利な爪と尖った嘴で攻撃してくる。


ヤメナサイ。ヤメナサイ。


コンは動く左腕を振り回し、頭を上下左右に動かしながら抵抗した。メンテナンスをしてない左腕はボトッとコンの肩から外れ地面に落ちた。ハゲワシは諦めたのかまた上空に飛び立ち姿を消した。


ウデガ。。。


コンは少しだけ動いた右腕で左腕を持ち、目をキョロキョロさせながら呆然と立っていた。


ゴシュ キタラ ナオシテ モライマショウ。


そう言ってコンはナゲキバトの帰りを待った。


日が少し傾き始めた頃、ナゲキバトはコンの元に戻って来た。コンは胸の扉を開けナゲキバトを中に入れた。


キョウ ハ タイヘン デシタ。


扉を閉め、一体のロボットと一羽のナゲキバトの1日は終わった。


次の日、ナゲキバトはまた餌を取りに出かけている頃。コンは胸の中に声らしきものを聞いた。


タマゴ カラ ウマレタンデスネ。

ヤッタ。ヤッタ。ヨウコソ。ボク ノ トモダチ。


コンは首をガタガタと動かし、目をキョロキョロさせ、左腕を持った右腕をジタバタさせながら喜んだ。


カゼ ヲ ヒクト イケナイノデ ナカ ニ イテクダサイ。


コンは胸の中の雛を慎重に温めながら母ナゲキバトの帰りを待った。

母ナゲキバトが帰ると胸を開けて


ウマレマシタヨ。ボク ノ トモダチ。


コンは体いっぱい使って喜びを表現した。


ボク ノ デキルコトハ ナンデモ ヤリマス。


コンは胸に沢山の温もりを感じて、その夜は嬉しさのあまり目をキョロキョロさせながら過ごした。


その日からナゲキバトは餌を取っては戻って来てを繰り返していた。食欲旺盛な2羽のナゲキバトの雛は見る見る大きくなっていった。


コンは胸のナゲキバトと雛を温め続けた。

ある日。母ナゲキバトが帰って来た時、コンの前でパタパタと飛び嘴に小さなピンクの小石を咥えていた。


キレイナ イシ デスネ。


母ナゲキバトはピンクの小石をコンの胸の中に入れてまた餌を取りに飛びだって言った。


アリガトウ ゴザイマス。

ダイジ ニ シマス。


母ナゲキバトの後ろ姿にコンは感謝を伝えた。

胸の中に温かみを感じて。


それから、数日経った頃。

大きくなった2羽のナゲキバトの雛はコンの胸から出てきて、頭の上に乗っかった。


母ナゲキバトがパタパタと少し離れたところで飛んでいると、雛のナゲキバトは羽をその場でパタパタし始めた。


ガンバレ。ガンバレ。


コンは目をキョロキョロさせながら言った。

雛のナゲキバトの一匹がパタパタさせながら舞い上がった。ヨロヨロしながら始めは飛んでいたがすぐに体制を戻した。それに釣られて二匹目も飛び上がり二匹の雛は空に舞い上がった。


母ナゲキバトはその後コンの胸に入り、巣キレイに整え、耐熱皿の端っこに追いやられたピンクの小石を巣の中に入れた。


ドコカ 二 イクノデスカ。


胸から出てきた母ナゲキバトにコンは聞いた。

母ナゲキバトはコンの頭に乗り嘴でコンの頭の上を二回コンコン。と突くと2羽の雛と一緒に飛びだって行った。


少し離れたところで3匹のナゲキバトはコンの方を振り返り、円を描くように飛ぶと遠くへ飛んでいってしまった。


オトモダチ ハ タビ 二 デルンデスネ。


イッテラッシャイ。ボク ノ オトモダチ。


コンはまたそれから砂漠の真ん中で一人になってしまった。前とは違い胸は暖かった。


イツデモ カエッテ オイデ。ボク ノ トモダチ。


散々と降り注ぐ太陽の下で今日もコンはナゲキバトを待つ。ピンクの小石を胸に閉まって。





おしまい。

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「短編」ロボットのコンとナゲキバト たのし @tanos1

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