第13話 情報収集
見せかけ上、協力的な態度をしていたことで城下町に行く許可が出た俺は、さっそく情報収集のため城下町に出てみた、最弱ではあるが勇者なので護衛はいらないと伝えて城門を出ていく。
城下町は暗く、全体がスラムの様な雰囲気で、何人もの住民に絡まれたが、俺のステータスで一般人に負けるわけが無い。
ガリガリに痩せたオッサンや、不良っぽい奴等が食料や金を求めて襲い掛かってくるが、簡単に腕をひねって無力化する。
皆服装もボロボロで汚い、それに比べて俺の服は新品なので金持ちに見えるんだろう。
また、この国の貨幣はギニーといい、今回俺もカッツエ侯爵から5万円程度になるギニーをもらった、ガキの小遣いにしては多いよな。
モンスターの脅威の為、流通が細く、都市全体で経済が上手く回っていないようだ。
今回の討伐で得たモンスターの素材が出回っていれば少しは活気もあるんだろうが、その様子は全くないことから、国王と貴族たちの私財になっている様だった。
露店などで話を聞いたが、行商人によると北のパーメイヤという国以外は他国も同じ様な状態らしく、どの国も王族や貴族に不満を溜め込んでいるらしい。
今一番裕福だと思われるパーメイヤでも自治都市化の動きも出ているらしく、ますます詰んだ世界だと理解出来た。
行く当てがないので、娼館に向かいミーアを探した。
大きめの娼館をあたって2軒目でミーア発見、お金は国に請求するということで娼館の部屋を一つ借りた、さっそくミーアに自分から見たこの国の状況を正直に話してみた。
ミーアは笑いながら、その通りと肯定し、国民達も他国に行く当ても無く、滅びを待っているのかもしれないと言っていた。
「モンスターは昔から居たんだけど、こいつらが急に増えだしたのは100年前くらいといわれているわ、増えたモンスターは人々を襲いだし、人々は神に縋り、神は勇者を遣わせた、だけどモンスターの進行は止まらず、各国が力を合わせることもなく徐々に滅びに向かっているのよ」
この世界の傭兵になれば、他国に行く事も難しく無いとの事だが、ミーアも元傭兵で傭兵団も実質野盗のようなものだそうで、団長の命令が絶対でろくに給料も支払わえないらしく、身寄りのない女の身では一番安全なのが娼館だと言う。
「私は【土魔法】が得意だから傭兵をしていたんだけど、結局娼館に来ちゃってね、まあここの娼館の女主人がいい人だから助かってるし、今の生活に満足しているわ」
傭兵団が依頼を破棄したり嘘の報告をすると言う事も多いらしく、住民からはほとんどの傭兵団が恐れられていると言う事だった。
しかし、これは騎士も同じで、騎士が町を護っているなどと言いながら無銭飲食や商品の強奪も当たり前に行われているらしい。
これに関してはどっちもヤクザで国営か自営の違いだと感じた。
しかし傭兵ギルドは現状を憂いており、質の良い傭兵にいい仕事を回したり、傭兵団にランクを付けたりしているらしいがなかなか上手く運用出来ていないとの事。
傭兵ギルドだけでなく、他のギルドも、各国間で連携しており、様々な情報交換をしているらしい。
余談だが傭兵ギルドは、偉そうにしている割にモンスターに敗戦を続けている騎士団を毛嫌いしているらしい。
この辺りは騎士団を擁する貴族が金で動く傭兵ギルドを毛嫌いしているのと同じで、同族嫌悪みたいな物だろうと考えた。
他国も同じと言う事は、俺が勇者と判ればこのアトク国と同じ扱いをされてしまう可能性が高く直ぐに今のような状況に陥るのだろう。
かといって身寄りのない俺が15歳という子供の身体で何かの職に就けるかはなはだ疑問だ、まあ料理が得意だし何とかできるかもしれないが、それだと賢神の目論見が外れるので何らかのペナルティを受けるかもしれない。
傭兵であれば年齢も経歴も関係ないそうだが、俺のような戦い方も肯定されると考えにくいし、そうなると個人で頑張るしかない、ところが個人の傭兵では討伐系などの割のいい依頼は受けれないらしく、最低でも40人規模の傭兵団になってやっと討伐依頼が受けれるらしい。
一度、傭兵団の「鷹の目」に声を掛けても良いかも知れない。
収集出来る情報は集まった感じだ。
その後も城下町でブラブラしながら情報収集や保存食などの買い込み、ミーアに会いに行ったりしていると、セレモニーまで後2日となっていた。
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