第8話 実戦
34人の勇者とライル卿、戦果報告と食糧を準備する7名の騎士の編成で森の中を進む。
最後尾がヅラ勇者とビッチ、怠け者に最弱の俺、あとは5名の騎士だ、騎士2名は馬車を守るため森の入り口付近に残っている。
「鷹の目」の人達はガルド団長に報告後、木の板にサインをもらって帰っていったので居ない。
先頭集団が武器を構えたその先には、狼とクマを足したような2~3メートル位の大きさの獣が10数頭見えて来た、あと数秒で戦闘が始まる。
よし、【ハッキング】でスキャンを掛けてみる、平均するとこんな感じだな。
***
称号:
『なし』
スキル:
【格闘適性】【斬撃耐性】
ステータス:
肉体:万全
精神;異常なし
攻撃:10~20
防御:10~20
弱点:炎に弱い
***
オイオイ、俺よりステータスが高い、弱点が火なら【元素魔法】で牽制くらいは出来るか?
「こいつらの弱点は火だ!剣での攻撃は皮で防がれるぞ!」
良かれと思って叫んだが、ガルドから怒号が飛ぶ。
「我々勇者の剣が獣如きに防げるかッ!弱兵は黙っておれ!」
「少しでも有利に戦うのが戦闘だろうがッ!メンツだとか正々堂々は犬にでも喰わせとけよッ!」
「ええい
ダメだ、コイツら脳筋軍団だわ。
皆がそれぞれの武器を構え突撃していく、熊狼たちも腕や牙で応戦する。
ヅラ勇者ガラハドは何処からか戦斧を取り出している。ダメ勇者は呪文の詠唱を始めた。
「ライルは私が守ってあげる!」
そして自分は、足が竦んで動けず、勇者達と熊狼の戦いを見ていた。
俺の警告は杞憂で終わり、団長のガルド始め先頭集団がが次々と熊狼を屠って行く。
「ワハハハハッ!我々勇者に敵は居ない!この様な獣如きに遅れを取るわけがないのだッ!」
それぞれが何らかのスキルを使い、次々と熊狼を斃して行く。
ほんの数分で、既に動いている熊狼は居なくなっていた。
俺達最後尾組は何も手を出せなかったが、正直俺はホッとしていた、とてもではないが2メートル以上のモンスターに槍で戦える気がしない、自分の近くに迫ってきたらどう逃げるかだけを考えていた。
「どうだ!これが勇者の力だ!皆のもの!このまま森の中を進み、獣どもを殲滅するッ!」
ガルドが率先して森の中を進む、後ろをついて行く勇者達。
このままいけるのではないか?
自分の危惧していた危険はなく、ガルド達が全てを終わらせるのではないかと思える快進撃だった。
それから数時間、もう既に100体以上のモンスターを討伐している、熊狼以外にも大蛇や巨大な鹿、大きなトカゲや牙の長い虎、緑色の肌をした類人猿のようなものなど色々といたが先頭の脳筋組がガンガン斃している。
その時、カンガルーをマッチョにしたようなモンスターが前衛を抜けてこちらに5体走りこんできた。
「迎撃するぞ!」
ガラハドが斧を構えて1体と対峙する。
「ふう、雷電よ、
ケリーが【雷魔法】で2体を攻撃している、ケリーはこの雷を自在に操れるようだ。
「ライルは私が護るわ!」
女勇者も剣と盾を器用に使い1体を相手している。
「もう、やるしかない!」
俺も恐怖を抑え込み、マッチョカンガルーに対峙する、マッチョカンガルーの動きは速く、器用に前足でジャブを繰り出してくる。
【格闘適性】の補正のおかげで何とか躱し、槍で牽制する、腕に少し傷を負わせることができたが、城で練習はしたものの、とてもではないが魔法やスキルを使う余裕はない。
マッチョカンガルーが血走った眼で俺を睨む、2メートル越えの巨体に筋肉質な身体、怖すぎる。
「ギシャーーーーッ!」
ジャブからのストレートにフック、どれも素早く力強い、一発でも受けてしまうとヤバそうなので、俺は槍で牽制してマッチョカンガルーの勢いを殺す。
「これでどうだ!」
マッチョカンガルーの懐に飛び込み、槍を斜め下から首に向けて刺し込む。
「グバッ!ゲゲゲゲッ!」
マッチョカンガルーが口から血を吐き出し、槍が刺さったままショートアッパーを繰り出してきた、咄嗟に両腕でカバーしたが2メートルほど飛ばされた。
着地と同時に腰の短刀を抜いて構え、マッチョカンガルーの様子を確認すると、ドウッ!と白目をむいて後ろに倒れた。
「斃せた、のか?」
俺は【スキャン】を使ってマッチョカンガルーの状態を確認したら、肉体の項目が死亡となっていた、またコイツの正式名称は『キラーボクサー』だった。
しかしようやく1体を自分の手で斃した、それだけで手足が震え、緊張で練習した動きが全くできなかった、慣れていくしかないのか・・・
その後は他の勇者が斃したモンスターを【無限収納】にしまっていく。
【無限収納】は手で触れたものを一瞬で仕舞え、出す時は頭に浮かんだリストから選ぶだけなので大変便利だ、検証の結果時間停止もするようだ、賢神に感謝する。
森の中でモンスターの声がすると勇者達は導かれる様に進んで行く。
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