第5話 勇者は軟禁されるらしい
その後しばらくその場で待機させられ、他にも数名の異世界人が召喚された、全部で30人くらいは呼ばれただろうか・・・
背の小さい爺さんが皆に聞こえるよう大声を上げる。
「勇者の皆様には数日間英気を養ってもらった後、付近の森に潜むモンスターを討伐してもらいます、申し訳ないですがそれまでの間、城内にて暮らしていただくことになります、武器、防具等必要であれば城内の者に声を掛けてください」
どうやら身の回りの世話なのか、監視なのか俺達には一人ずつメイドが付くらしい。
俺の担当は赤茶色の髪をした10代後半に見えるメイドさんだ、俺についたのがよっぽど不満なのか不愛想で名前も教えてくれない。
部屋に案内してもらう途中で、俺をかばってくれたハゲ貴族に声を掛けられた。
「ジル・イツカ様、私はこのアトク国の侯爵でカッツェといいます、この数日間で装備を整える必要がありますので、私のほうで用立てさせていたけないか?」
「ああ、さっきはありがとうございました。お手間をかけますが、装備のことについてはお願いいたします、またこの世界の状況や周辺、モンスターについて教えていただけないでしょうか?」
少なくともこの貴族、カッツェ侯爵だけは俺の味方になってくれそうだ。
自分はハゲ貴族、カッツェ侯爵にこの世界の現状を教えてもらう。
この世界は、モンスターが蔓延り、各種族や国家間で争う余裕もない程荒んでいるらしい。
人間が住んでいた大陸はもともと2つあったが、この大陸とは別の大陸では人間が駆逐され、モンスターの住みかとなったらしい、それを知ったのは主神を崇める神官だったそうだ。
また魔王などは居らず、モンスターも動物や恐竜の凶悪になったものの様なのがそれぞれ暴れており、人間種の生活圏内を荒らしているという事。
騎士団も懸命に戦っているが、圧倒的にモンスターが強く、多勢で多数の犠牲を出してやっと勝利できる程度の残念な勝率らしい。
過去もこの様な状況に陥り、その時は召喚された勇者がその強力な力でモンスターを打ち破ったことから、国王が神々に祈りを捧げて勇者召喚を行なっているらしく、既に数十名の勇者が揃い、そろそろ討伐が始まるらしい。
このアトク国の他にも北にはパーメイヤと周辺の小国群、皆にはバダン帝国という国があるが国同士は連携していないそうだ。
今後は暫く俺達の英気を養った後装備を揃え、勇者団としてモンスター狩りが行われる事などが教えてもらえた。
ちなみに自分のステータスは騎士達の3倍程度、勇者はバラツキがあるが5倍から20倍程度になる。
ガラハドのステータスは騎士達の10倍、ヅラがない今、役に立つのか不明だけどな。
ステータス画面の弱点は他人には見せれない仕様らしく、称号、スキルと各数値までがオープンできる内容らしい、【ハッキング】では全部見えたけどね。
しかし、やっぱり勇者は強いね。
魔法は、火属性や水属性などがあり、自分の元素魔法などは殆どないらしい。
神官・司祭は結構居て、回復魔法が使えるらしい。
冒険者などは居なくて、当然冒険者ギルドもない。あるのは傭兵ギルドで、ここで採集依頼から討伐依頼までやってるらしいが、傭兵は食い詰め者がなる職業らしく、荒くれ物が多いので今後城下町に行くことがあっても関わらないように言われた。
勇者団の初陣は3日後、慣れない行軍で疲れてしまうのも嫌だったので軽めの装備として革鎧、ぶっちゃけ実戦なんて怖いので距離が確保できる槍、あと短刀を準備してもらい、他にもロープや毛布、一人用のキャンプや食器などを用意してもらった。
空いている時間に城の厨房に入り、パンや保存のききそうなソーセージなどの肉類などを調達して【無限収納】に保管しておいた、この【無限収納】に収めたものは時間停止しているように思えるが、今は検証が途中なので取り敢えず保存の利きそうなものと水を優先して収納しておいた。
麦が主体で麦粥や元居た世界では売ってないような固いパンが主食で、飲み物は水かエール、ワイン等、肉や野菜は貴重品らしく城下町ではなかなか買えないと厨房の調理師たちに教えてもらった。
調味料は基本塩のみ、料理にはソースがかかってたりしたがそれは極秘らしく、色々と調達したお礼に骨で出汁をとるのを教えてあげたら調理師たちが皆フレンドリーになった、独身男の料理知識がこんなところで活きるとは・・・
騎士たちの練習場で色々と魔法やスキルを試してみたが、スキルや魔法は使い過ぎると精神的な疲労が溜まること、使い続けることで威力などが強化されることが判った。
この辺りは騎士たちと徒手の訓練をしているときに教えてもらえた、皆技術も何もない喧嘩殺法しか使ってこないうえ、ステータスは俺のほうが上なのであまり練習にならなかった。
ちなみに一般的なステータスはこうだ
一般人で1~3程度
兵士や騎士が2~5程度
騎士団長クラスで5か6
あと、城には風呂があるが王族専用らしく、俺達は樽にお湯を張ったものに浸かりつつ身体を拭く、風呂が使えないのはキツイ。
俺以外の勇者達は酒を飲んで女を抱いてお楽しみらしいが、自分は15歳という事と、最初の印象が悪く、他の勇者から嫌われているようで、声を掛けられることもなく、自分から声を掛けることもなかったので、カッツェ侯爵と専属のメイドさん、あと厨房の調理師達くらいしか会話していない。
他の勇者達を観察したら女勇者も1人いたが、美形の騎士を侍らせてチヤホヤされていた。
この世界、どこまで他人任せなんだ、大丈夫かよ?
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