第4話 マウントはとらせない

「なんだ此奴こやつ戦えるのか?闘神の加護である剣勇者を持つワシからすれば、足手まといではないか!」


突然の大声にそちらを向くとステータス画面が消えた、そういう仕様なんだ。

筋肉オヤジが自己アピールを始める、馬鹿馬鹿しいので無視していると、貴族風の服を着たハゲが近づいてきた。

50歳台くらいに見える、腰に剣を差しており身体も締まっている、他の貴族たちが音楽の教室に飾られてそうな格好をしているのに比べこちらは質実剛健といったところか?


「まあまあ、賢神の勇者の称号を持たれていると言うのは、おそらく初めてです。よく分からない称号も有りますが、元素魔法ということはあらゆる魔法を使いこなすことが可能ということです、他の勇者様を魔法でサポートして頂けるでしょう!」


おっ、ハゲナイスフォロー。でも今まで魔法なんか使ったことないし、こんなオッサン供のサポートなんか気乗りしないけどね。


「いらん、いらん、こんな貧弱な者のフォローなぞ不要じゃあ!」


いきなり筋肉オヤジが俺の肩を掴んで持ち上げてきた。

自己アピールも大概にしろっ!


「危ないだろっ!オッサン!降ろせよ」

あ、やっぱり声も若いな、俺。


「ガハハ、なぁんだ坊主、怖いのかぁ!?」


まさか来て早々に筋肉オヤジに絡まれるとは、他の勇者っぽいのや貴族風も皆ニヤニヤ笑ってやがる。

唯一ハゲ貴族だけがオロオロしている。


「ガラハド様、イツカ様も勇者です、おたわむれはそのくらいで、、、」


ハゲ貴族が頑張っているが聞いちゃいない。


「ジルだぁ?こんな女みたいな名前の坊主など、ワシら勇者には不要じゃあ!」


筋肉オヤジはますます調子に乗って俺を上下に揺さぶる。

こうやって周りの他の勇者にもアピールしてマウントをとるつもりなんだろうか?こんな奴は社会に出ればそこそこの確率で出会ってきた。


このままトレーニング機器扱いされるのも腹が立つが、全く振りほどける気がしない。


ステータスが念じることで見えるのであれば、スキルも同じ要領で使うのだろうか?

なのでハッキングのスキルを使ってみる。

相手を攻略するには先ず、弱点を見つける事。

システムの脆弱性を見つけてそこから攻略していくのは基本中の基本だ。

ステータスが自分の意思で見れるなら、ハッキングスキルを使って筋肉オヤジをスキャンできるかもしれない。


***

ガラハド・ドエル 男 ヒューマン 33歳

称号:

『剣勇者』

スキル:

【言語理解】【肉体強化】【剣適性】【斧適正】【スラッシュ】【超旋風切り】

ステータス:

肉体:万全

精神;異常なし

攻撃:50

防御:30

弱点:カツラ、外されると気弱になり戦えなくなる

***


うん、出来たな、これは確かに、攻撃や防御の数値が全然違う。。。

しかも転移される前の俺より若いくせにズラなのかよ。


「テメェ、いい加減にしろよ!」


俺は持ち上げられたまま、筋肉オヤジのズラを両足ではさみ、引っぺがした。

ガラハドは俺を解放しうずくまる。

河童か落ち武者といった感じで禿げ上がっている、他の勇者はそれを見て笑っているが、貴族たちの反応は薄い、中世の感覚では結構多かったらしいし、しらみ対策で剃ってたらしいから、この反応の差なのか?


俺は器用に着地すると、ズラを両手で弄ぶ、なかなかにいい出来のズラだ。


「あああっ!なんて事を、返して!返して下さい!」


今までの態度とは一変してガラハドが懇願してくるが、こっちの気持ちが収まらない。


「ステータスの能力値が低くても、弱点が見えれば攻略は可能だ、俺も好きで召喚されたわけじゃないんだぜ?

協力しろとは言わないが、邪魔だけは絶対にするな!」

俺は更に、元素魔法を使ってみる、元素という位だから、火は出せるだろう?


心で炎をイメージすると、指先からライターほどの火が出たのでヅラを燃やしてやった。

ザマアミロだな、うんうん。


「うわぁぁぁ!なんて事を!もうワシ戦えない~!」


内股で走って逃げていく筋肉オヤジを見ながら、今後のことを考える。

この世界で俺って生きていけるんだろうか?



*作者より

 当面は毎日6時に更新していきます、やはり流行りの「追放された系」などではないので、PVの伸びがイマイチですね、3年くらい前の作品の焼き直しなのでしょうがないのかもしれませんが、、、

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