第2話 異世界にも色々と事情があるらしい

「困ったな、転移ということは行方不明になるということですか?拒否でお願いできませんかね?仕事もあるし彼女もいるので困るんですよ、これって誘拐ですよ?

いつもこんな感じで人間を転移させてるんですか?」


自称神様は心が広いらしく、特に気分を害していなかった様なので、いくつか気になることをぶつけてみた。


ぶっちゃけ彼女と会えないのは嫌だ。今週末も俺の部屋でゲームしながらイチャコラする予定だったし、毎日会社でも会えててハッピーな毎日だった、神様といえど俺の幸せを邪魔しないで欲しい。


それに35歳のオッサンが異世界に行っても生き残れる気がしないし、行方不明扱いされて彼女が悲しむのも嫌だ、なんで俺なんだ?


「あ~、スマン。お主は特別じゃよ。通常は間引き人とワシらが呼んでいる、この世界に馴染めない、且つ突然消えても誰も関心を持たない様な人間を誘って、相手がその気になれば連れて行っておる」


間引き人って酷い話だな、でも別世界でやり直せるならその人には良いかもしれない。

自分も若干捻くれた性格ゆえに苦労はしたが、今の生活にはかなり愛着があるんだけど。


色々考えていたら、自称神様がそのまま話を続けてきた。


「お主の場合、これから行ってもらう世界、エルピーダの賢神からの希望での、まだまだ寿命もあったのだが、遺体をワシのほうで作って現場においてある。すまんが脳梗塞という病で急死しという感じじゃよ。勿論その分の補償はするので異世界で賢神を助けてやってほしい」


えっ?俺の遺体(ニセ)が職場にあるってことか?


「取り敢えずじゃが、お主の彼女には十分な加護を与えるので現世での生活で苦労する事もない。すぐに新しい彼氏を見つけて幸せな生活を過ごせる様にしておこう。

ワシの使徒が常に監視するからアフターサポートも万全じゃよ?」


何それ?別の彼氏とか、俺的に絶対嫌なんだけどさ。


自称神様はそのまま話を続けるみたい。


「そしてお主自身は、これから剣と魔法がある世界で、モンスターの脅威から人々を救ってやってほしい、モンスターは強大で様々な世界から勇者が送り込まれておるが、罪もない人々がモンスターの脅威に晒されているという事じゃ」


「いやいや、新しい彼氏とか勘弁してください、絶対嫌に決まってるだろうが、

俺はそんな世界で血生臭い生活をするよりも、元に戻してほしいのですが、異世界が大変とか正直俺には関係ありませんよね!?

迷惑でしかないですし、そのエルピーダでしたっけ?そっちの神様や人間が頑張れば良いじゃないですか!?」


おそらくここまでの話に嘘はないんだろう、そんな超常

しばらく黙った後で溜息をついて語り出した。


「ふむ、彼女の件はエルピーダ側とも協議しておく、まあお主のいう事ももっともじゃがあちらの世界は文明がまだこちらほど進んでおらんので、様々な世界からも支援をする事になっておるのじゃ。

お主には全く無関係な話なのも判っておるが、いろいろとこちらにも都合があって、今回の件は断れないんじゃよ。

特にお主に関してはエルピーダの賢神がかなり執着しておっての、モテる男はつらいの、テヘっ」


ジジイのテヘペロなんて見たくはなかった。

しかし、いくらゴネても元には戻してもらえないという事か、普通に転移されて大丈夫なのか、異世界とやらはどんな感じなのか?他の世界からも支援受けててもキツイって、もう詰んでるんじゃないのか?色々と疑問が湧いてくるが、新しい彼氏の件を保留にできただけマシか。


「取り敢えず、戻せない事は理解してもらえたじゃろうか?

ではまずワシからの恩恵じゃが、本来の寿命分肉体を若返らせて、異世界に送ろう。他に欲しい恩恵はあるか?」


無理やり話を進めてきたよ、このジジイ。


「じゃあ、賢神が執着ってなんで?そこが気になるんだけど、俺は特に賢くないよ、変人である自覚はあるけどさ。

若返るのは素直に嬉しいけど、記憶はちゃんとあるよね?あと赤ン坊とかだとすぐ死ぬんじゃないですか?」


ジジイがその気ならと、こちらも無視して疑問をぶつけてやった。


「ぬぬぅ、賢神の事は向こうに行く時に会えるじゃろうから直接聞いとくれ、確かに残りの寿命分だと3歳になるので、希望があれば聞こうか?」


おいおい、あと32年生きられたのかよ、でも平均寿命より早いじゃん、、、


「じゃあ取り敢えず15歳くらいにしといてください、3歳だと即死確定じゃないですか、馬鹿ですか?

それと向こうの言語の読み書きと会話、肉体強化と自己回復を強めで、あとは、、、」


俺の得意な事と言えば、、、


「ハッキングに似たスキルを貰えませんか?」


「ふむ、よかろう。後は向こうで賢神からの加護を受けると良い。

では、こちらの都合ですまんが、向こうで頑張ってくれい」


それだけ言うと自称神様は消えていた。

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