第19話 作戦失敗?

作戦の時が来た。


「いいかい?


この作戦はトウマ君、

お前さんにかかってるぞ。


工場を壊さない限り、

ワシたちは誰も工場に入れない。」


作戦の確認をし終わると、

すかさずレムが言う。


「私は何をすればいい?

さっき私にしかできない仕事があると

言いましたな。」


「ああ、お前さんを助ける為の口から出まかせだよ。」


「私も手伝わせてくれないか。」


「なんだと?」


「だって、夢工場をガギから取り戻さなくちゃ

夢が食べられないじゃないか。

そのかわり……」

レムがパケジに耳打ちをする。


 パケジは少しの間考えて

「相談してみよう。」と答えた。


「ではレム、

お前さんにしかできない仕事を頼むぞ。」


レムは誇らしげだった。


「何です?」


「ガギの注意をひいてもらう。

そうすればトウマ君も忍び込みやすい。」


「なるほど。どうやって注意をひくか。」


レムは顎に手を置いて考えた。


「正面から入りなさい。

サイレンがなって

セキュリティーシステムのトラップが発動すれば、

ガギもうるさくて気が散るでしょ。

それを何度も繰り返すの。」


リーがいたずらっぽく微笑んで言った。


「はあ?またあの、トラップにつっこめと?」


レムが目を白黒させた。


「そりゃ、名案だ。」


パケジも声を上げて笑った。


「レム、頑張って。」


トウマも冗談に乗っかった。


この時は、

後にこの冗談を本当にやるはめになるとは

思ってもいなかった。



工場は駒の形をしている。

駒の手で持つ所から煙が出ている。

その先っぽから中に忍び込めるという。


先端部分につくと、

はしごが伸びていた。

はしごをのぼっていくと広い場所にでる。


 この部屋は外からでは

確認できないようになっていた。


天井は高く、

ごおんごおんと大きな洗濯機が

回っているような音がひびいていた。


鏡のような素材でできているタイルが

びっしりとはられている。


そこの右から3番目のタイルだけが

外れるようになっている。


トウマは爪をたてて溝に入れると

タイルを動かすことができた。


そこからはピラミッドの抜け道のように

細い通路が伸びていた。


トウマは四つん這いになって前へと進む。


中は暗いが

10メートル間隔くらいでライトが光っていた。


15分程進むと、

行き詰まりになった。


手でさぐるとレバーらしきものがある。

握って右に動かしてみた。


ガコンという音がして扉が開く。

そっと開けると、

工場の中だった。


工場の部屋から振り返ると扉だと思ったものは、

リーの家族写真だった。


バクがいて、リーが隣で赤ちゃんを抱いている。

おそらくレムだろう。

リーがレムのお母さんだということを教えてもらった時は

トウマは驚いた。


トウマは

すぐにガムを付けられるように工場の入り口のところから

ずっとガムを噛んできた。


トウマは前に自分がガムをつけた機械を見つけた。

そこに近づき、ガムを口から取りだそうとした時、


「みぃつけた」


 ぞっとする声がした。

ふりむくとトウマに息の届く距離にガギが立っていた。

 

トウマはこの時、ガムを落としてしまう。

ガギはそのガムを踏んだ。


 ガギは指笛を吹くと蛇がガギの服の中から出てきた。

もう一度指笛を吹くと蛇はトウマの右手に巻きついてきた。


トウマは逃げ出す。

周りの風景がゆがんで見える。

気づくと工場にいたはずなのに違う場所を走っていた。

さっきまでいっぱいあった機械が壺になって並んでいる。


後ろから声が追いかけてくる。

 「せっかく逃がしてやったのになぁ。戻って来るなんてよ。


犯罪者も現場に戻って来るなんて言うよな。

貴様がもしまた工場に忍び込むことがあれば、

同じ機械のところに戻って来て小細工すると思ったんだよ。


考えを読まれてたか?

たくさんの夢を見てるから

たくさんの人の考えを見てるようなもんさ。

浅はかな考えなんてお見通しなんだよ。


貴様はガムを噛みながら入ってきただろ?

空洞の通路でガムをかみながら移動するから、

クチャクチャ言う音が反響して移動してた。

すぐにわかったぜ。」


 ガギが足を引っ掛けてきた、

躓きそうになり、よろめく。


態勢を立て直そうとするが、

また足にひっかかって躓いた。


足元には蛇がとぐろを巻いている。

しかし、よく見ると蛇に札がついていた。


「予約 ノンノ・レム・ルムレム3世」

蛇の頭にもアリスと書かれている。


「これは蛇じゃない。

夢工場のレーンだ。

僕はやっぱり工場にいるんだ。」

トウマはハッキリと確信した。


ガギがトウマに悪夢を見せている。


 その時、トウマは

アリスが悪夢にうなされているような感覚に

なっていることを感じた。

アリスが目をさましそう。


「アリスが目覚める前に夢から出れば、

貴様はこれからも一生夢を見ないですむ。

ずっとな。

ただし、貴様も他のみんなも

ずっと眠れない苦しみを味わうのだ。

眠いのに夢を見ないから眠れない。

ずっとな。


貴様が夢から出る前にアリスが目を覚ましたら

貴様は一生夢の中から出られない。

ずっとな。

ずっと悪夢の中でうなされるのだ。


くっくっく、さあどうする?

時間がないぞ。

もう目覚まし時計がなってしまうぞ」


ガギが目覚まし時計をみせてきた。

時計の針は6時58分をさしている。


夢の外からも時計の時を刻む音がきこえる。

時間がない。

ガムも落としてしまったし、今更何もできないのかも。

作戦は失敗した。

早く帰らなきゃ。

アリスのレーンに足をかけた。

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