第15話 おしよせる危機
トウマが目を覚ますと 自分の部屋にいた。
手にはガムの包み紙が残っている。
その日からトウマは悪夢を見なくなった。
「これでよかったんだ。」
最初はそう思った。
夢工場を壊したから、
悪夢を見なくなったのだろう。
ところが、だ。
その日からアリスの他にも
眠れない人が続出した。
世界中の人が夢を見なくなり、
眠れなくなっていた。
トウマも眠いのだが眠れなくて
頭が鈍い感じになっていた。
眠れなくてイライラして
問題を起こす人が増えた。
事故も犯罪も争いも増えた。
免疫力が低下して病気にもなりやすくなった。
「僕のせいだ。」
トウマがつぶやく。
トウマが工場に忍び込んだあの日。
パケジ警部に変装したガギにだまされて、
工場を壊してしまった。
こんなことになるとは思わなかった。
みんなおかしくなってしまった。
でも、トウマは何をすれば
いいのかわからなかった。
誰もトウマが悪いとは言わない。
責める人もいない。
このまま知らないふりをしてれば
やり過ごせるけど、
謝りたかった。
こんなことになるとは思わなかった。
知らなかった。
でも、僕のせいで夢の世界も現実も
おかしくなっちゃった。
でも、あの時は、こうするしかなかった。
それが正しいと思ったんだ。
アリスはとうとう学校に来られなくなった。
自宅療養している。
眠れる薬を飲んで決まった時間、
朝の7時に起きるという練習をしている。
学校に行けなくなる前の日に、
アリスから自分に届く手紙を
読み続けてほしいと頼まれた。
「でも、僕になにができるんだ。」
アリスが寝ているベットのそばに椅子を置き、そこに座る。
ここは、アリスの家だ。
アリスの家に毎日お見舞いに来ている。
それで手紙を待っていた。
最近は手紙が来ていない。
諦めて帰ろうとした時だった。
寝ているアリスの体から風が巻き起こり、
白いものがアリスの鼻の穴から飛んで出た。
白いそれは、手紙だった。
レムのエンブレムの模様の封筒。
トウマは急いで封筒を開ける。
中には1本の茶色の細い紐と
手紙が3枚入っていた。
手紙はいつもと筆跡が違う。
レムの手紙よりきれいな印象だった。
手紙には
「トウマ様
ご無沙汰しております。
カミュです。
実はトウマ様にご主人様の無実を
証明してもらいたくて
お手紙書きました。」
と、いう書き出しで始まり、
今、何が起きているのか、
解決策、
レムの身に起こったことが書かれていた。
手紙の終わりは
「あの日、工場で何があったのかを
知っているのはトウマ様だけです。
夢の世界に来てご主人様の潔白を
証明して頂きたいのです。
何卒よろしくお願い申し上げます。」
と、締めくくられていた。
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