第2話 夢の世界
一週間前
トウマが同じ悪夢を見るようになる前、
夢の世界で大変なことが起ころうとしていた。
夢の世界にある警察署の警部の部屋。
夢の世界の秩序を守る使命に燃えている男、パケジ。
パケジは腹ただしげにウロウロしていた。
警部の勘としかいいようがないが
「いやな予感がする。」
そう言って机の上にある新聞に目をやった。
「バク騎士団、集団食中毒!
ナスコ医師よりしばらくの休息をとるようにとのこと」
「夢の世界では影響はない。
影響は現実世界に起こるわけだけど、たいしたことないでしょ。
悪夢を見る人が増えるだけのこと。
パーフェクトよ。」
夢工場長のリー氏は、そう言っていた。
夢は脳の整理で必要な現象だ。
その現れ方は3パターン。
楽しい思い出などの
精神的に害を与える
予知夢など霊的条件で発生する
リー氏によれば夢の黄金比率は6対3対1.
黄金比率を保つために、
バク騎士団が個人個人に配備され、夢を食べてくれる。
バク騎士団が動けない間は、均衡がくずれるだろう。
工場の方で生産の調整をできないかと相談しにいったが、
相手にしてくれなかった。
「なんて低レベルなの。幼稚園児以下。ノットパーフェクト。」
リー氏は、フンと鼻をならす。
リー氏は、知的で美しい。
小顔で切れ長の目。
繊細な鼻。
セクシーな厚い唇。
すらっとしたモデル体型。
腰まで届く金髪の長い髪。
パケジと目線の高さがほぼ同じのことから、
身長は178センチくらいだろう。
エナメルのド派手なピンクのピンヒールは約10センチ。
どこで買ってるんだろう。
ヒョウ柄ミニスカートの白衣。
模様がここまではびこっていたら、
もう白衣と呼べない気がするけど、
実験用で丈夫な生地でできているんだろう。
「夢は、私の工場で作っていることぐらいは
無知な貴方でもご存知でしょ。
私の工場で作られた夢を配達員が人間たちに運ぶの。」
リー氏が早口でまくしたてる。
口は悪いがパケジは気にしない。
むしろ、もっときつく言ってほしいと願ってしまう。
「夢はね、人間たちの経験、考え、記憶に合わせて調合してるの。
私達は与えられた材料でしか夢をつくることしかできない。
夢を作る私達の方で勝手に材料を変えることはできないのよ。
悪夢の過剰摂取により、
人間の許容量を超えれば人間の精神を犯す場合がある。
悪夢の過剰摂取を抑制するために
バク騎士団が変わりに悪夢を食べてくれる。
そうでしょ?」
「はっ。さようで。」
リー氏が自分の奥さんで、
毎日「行ってらっしゃい」のキスを頬にしてくれる。
そんな妄想を終わらせるのが惜しいが、
そろそろ話が終わる頃だろう。
「しかしですな、
バク騎士団が機能しない事態なのです。
だから、夢の研究をされている工場長のリーさんに
ご相談をしに参ったわけです。」
「パーフェクト!問題ないって言ってるでしょ。」
(うざいと思われたよな。)
リーのしかめ面を思い出し、パケジは苦笑した。
しかし、
あれがリーの失踪前の最後の姿になるとは
誰が想像できただろうか。
ドアのノックの音と共にパケジの部下の声がする。
「パケジ警部!
13番外地で指名手配中の夢ドロボーが現れました!」
パケジはすぐに上着を羽織ると
パトカーで13番外地へと急いだ。
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