出会いは唐突に 3
私はキーシャの視線から逃げないように、見返した。
「お前は私を恨んでいるか?」
その言葉以外にも言いたい事はあったが、自然とその言葉が口から零れ落ちた。
キーシャは、口を開いた。
「ウィルならそう言うと思ったけど、いつまで過去で悩んでいるつもり? 父の思いがよく分かる…忘れたとは言わせないで、我々は貴方に感謝している」
キーシャは魔族であるので、実はぱっと見よりは年齢が高い。その事実を私は先ほどの姿から、ついつい忘れそうになる。
言葉からキーシャ達、一族が私をあの日から恨んではいないと、確認出来た。信用していない訳ではないが、やっぱり気にしてしまう。
一人の死が関係しているからである。
「ここにいると言う事は、ウィルは人から逃げて来たのだろう?」
「そうだよ……キーシャはどうしたのだ? さっきはやられそうになっていたけど」
キーシャは腰に手を当てた。
「察しろ、ウィル」
魔王の娘である、キーシャは自分勝手である。
やれやれと思いながらも、私は返事をした。
「キーシャが弱いからか?」
魔族でも、まだ若年者であるキーシャの力は、弱いはずである。果たして、それが人にどれほど敵うかは、分からないが。
私の指摘に、地団駄踏んでキーシャは悔しそうにした。
「違う、そんな事ない。魔王の血が流れる者を、劣等種と同じにするな。ウィルなら分かるだろ?」
今度は答えて欲しい顔をする。本当にこの人を理解するのは、大変だ。
「だが、強いとしても、何故自分を守ろうとしなかった?」
「人を殺してはならないと、父から言われたからだ。我々は人を些細な力で殺める事が出来る。なら、傷付けないために、何も出来ないのだ」
「何故? 不可能ではないだろう?」
「失敗したら、ウィルが殺しに来るからだ」
もし、キーシャが人を殺したと判明すれば、英雄として私が駆り出されると、言いたいのだろう。
私は、キーシャを見た。
「本当か? キーシャは強いのだろう?」
キーシャが、私を睨んだ。
「我々の王を殺められるウィルが、他を殺められない訳ない。自分の力を知らないのか? 我々なら、小さな虫を潰すぐらいだろ…」
「そうか?」
魔王の娘が、自分の事を虫と表現する事に、私は抵抗を感じた。
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