出会いは唐突に 2
私に剣を突き付けられた男は、怖気ながら、答えた。
「お前も…分かるだろ」
はっきりと言わない男に私は、苛ついた。
「何がだ?」
「…あいつは魔族だぜ。人類の敵だ」
私は、少女を見た。フードで隠れて分からないが、敵対している様子ではない。
「だから、どうした? 魔族だからと言って、少女を危険な目に遭わせたのは誰だ?」
男は慌てふためいた。私がこのような事を言うと、予想していなかったのだろう。
「お前がおかしい。こちらが死ぬかもしれなかったのだぞ。魔族を差し出せば、金がたくさん手に入るのだ。どうだ? 一緒にやるか?」
男は私をおかしいと言った後、いかがわしい事に私を誘った。その二つだけでも、この男達が、最低であると証明された。
溜め息を吐いてから、私は男達を気絶させた。そして、縄で近くの木に縛り付けた。
運が良ければ、誰かに助けてもらえるが、その後、衛兵に逮捕されるだろう。運が悪ければ、獣の餌にされる。男達がどうなろうが、自分には関係ない。
自業自得だからである。
少女に近付くと、同じ目線まで体を下ろした。
「大丈夫?」
「はい。ありがとうございます」と、少女の浮かべる笑みは何とも可愛く、子供らしいものである。
少女の笑みを見て、私はふと、最後にいつ笑ったか、考えた。が、思い出せない。
自分は最近、何かに楽しいと思った事はあっただろうか?
「君が魔族と言うのは本当? もしよければ、見せてくれる?」
魔族は、人にはない特徴的な角が頭にある。それを出来れば見たいと私は言った。安心させるために頭を撫でなかったのは、魔族の角を勝手に触るのは、失礼だからである。
「いいですよ」
少女は、ゆっくりとフードを下ろした。聳え立つ小さな角が、姿を現した。
「お久しぶりです、ウィルさん」
子供にしては、丁寧過ぎる言葉に、私は疑問を抱いた。そして、何故、私の名前を知っている?
「君の名前は?」
少女は私を見ながら、答えた。
「キーシャ・ゾグロフ…が私の名前です」
ゾグロフ。
それは、私が倒した魔王の名前である。
「あの人の娘です」と、少女、キーシャはこちらを見ながら、言った。
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