出会いは唐突に

 検問所を抜けると、首都とは比べ物にならないほどの暗い世界が、広がっていた。


 首都の明るい夜に慣れていた目が、大丈夫かどうか気になった。が、冒険者として、自分の目は環境にすぐ対応した。


 次第にその暗さにも慣れ、それほど暗くない事を知った。

 完全な夜ではないとしても、空には星が散らばっていた。


 都会では見れない久しぶりの景色に、私は見惚れた。

 一歩だけでも外に出れば、このような景色が広がっていたのだった。

 もっと早く気付いていれば、私の心はより気楽な物であったはずである。

 後悔しても遅いのだが、何となく、そのような気持ちに浸ってしまう。


 もし、あの時、こうしていれば…違っていたのかもしれない、と。


 何も変わらないのに、綺麗な星空を眺めていると、どうしても。


 こんな気持ちになるのはよくない、と切り替えながら、私は歩みを進めた。

 先ほどの決断を忘れないように、地面をしっかりと踏む。


 次第に整備された地面は終わり、靴に砂埃が付く。目前に視線を送ると、生い茂る森が見える。

 森の中で野営も出来るが、危険性は増える。安全のため、門の近くで眠る事も出来るが、手配書が出た時には逃れられない。

 体力もあるので、最悪、近くの街まで夜通し、歩き続ける事も出来る。



 悩み、自然と歩みが止まった時に、音が聞こえてきた。

 若い女性の悲鳴。少女の可能性もあった。


 私は自分の事を気にするより、その声へと行くべきだと考えた。

 自分は見つかったとしても、何とか逃れる事が出来る。

 が、その者に次があるとは限らない。

 もしかしたら、今この瞬間にも、何者かに殺されそうになっているのかもしれない。

 困っている人を見捨てるなど、英雄など関係なく、人として最低である。


 草木を分けながら、進むとそこには、フードを被った少女が、武器を持った男達に取り囲まれていた。

 武器を突き付けられた少女が、悲鳴を上げたのだった。


 私は男達の横に回ると、素早く体当たりをした。

 将棋倒しになった男達の武器を、足で蹴飛ばすと、首に剣を突き付ける。


「子供に手を出すとは、何の真似だ?」


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