第5話
Z Life 5
俺と真奈美は行動を共にしていた。
仕事のように朝八時に集合して夕方五時まで近所の腐った奴等を殺して畑に穴を掘り埋めていった。使命感のようにそれが日課になっていた。
俺がバックホーで穴を掘り、軽トラに乗せた死体を真奈美がダンプする。最初は不馴れな感じで毎回教えていたが最近は何も言わずにこなしている。この辺りは多くても三匹位の塊だから俺と真奈美は作業のように排除していった。
「これで何匹だった?」
「35匹…」
「今日もおつかれさん…」
「お疲れ様…さっきの家なんだけど」
「なんかあった?」
「たぶん太陽光で自家製発電だったよ…湯沸し器からお湯が出た」
「まじか!風呂が入れる!」
俺たちは軽トラでその家に向かった。
腐った奴等を処分したとはいえ、まだ警戒は怠らない。
家の中に入り戸締まりを確認してから電気を着けてみた。
「おお!」
「お!やっぱり!」
真奈美はどや顔している。
俺は直ぐに光が外から解らないように雨戸を閉めて行った。
冷蔵庫も動いていて冷えたビールがあった。生鮮品はさすがに腐っていたが、冷凍食品は食べれる状態であった。
「じゃんけんで勝った方から風呂に入ろう!」
「いいね!」
そして、俺が勝った。
引出しからタオルと下着を拝借して久しぶりの湯船に浸かった…。
「なんとも…風呂ってこんなに気持ちいいものだっけなぁ…」
俺は何度も潜った。
落ち着いて湯気の漂う天井を見上げているとドアが急に開いた。
「うわ!」
「…ごめん…一緒に入っていい?」
「え!いや…いいけど…」
湯気の中にぼんやりと裸の真奈美が現れた。
「一人で待ってるのが寂しくて…」
俺は真奈美の身体を見るのが恥ずかしくて顔を背けてしまった。
真奈美は湯船の隣で身体を洗い出した。
俺はそっと真奈美の身体を見た。忘れかけていた性欲が湧き出てきた。
髪を洗っている泡だらけの真奈美を湯船に抱き寄せて目が開けられない真奈美にキスをした。
真奈美も抵抗しないで俺に抱きついてきて舌を絡ませながら二人で湯船に浸かった。
激しく絡み合いながらお互いに求めあった。
男女が二人っきりでいるとなぜに惹かれ合ってしまうのだろうか…。
危機感からくる心情、必然なのか、それとも昔に真奈美に会っていたとしても惹かれ合っていたのだろうか…。
こんな世界だから…。
いや、考えるのはよそう…どうせ答えは出ないのだから…。
俺たちはお湯が冷めるまで抱き合っていた。人間の体温を互いに確かめあっている気がした。
その日はこの電気の使える家で過ごした。
冷凍食品をレンジでチンしてビールで乾杯しながら食事をした。
真奈美が腐っていく…皮膚が剥けて内蔵がこぼれ落ちて、口からはウジ虫がボロボロと溢れだしている。
俺はハッと目を覚ました。
真奈美はぐっすりと俺の胸に顔を埋めて寝息をたてているー。
「夢か…」
良い出来事が起こった後は必ず悪い出来事が起こる。俺は真奈美を失うのが急に怖くなった。
真奈美の細い手を握り“こんな手でボーガンを扱っているのか…あ!ダリルだ!ウォーキングデッドのキャラでボーガンを使っている…”真奈美はダリルだ…。
俺たちは此処に留まるか移動するかを話し合った。
此処に居るとするとただ、時間だけが過ぎていく。だが、比較的安定している。移動すると今の世の中を見ることが出来るがかなり危険である。俺は内心ここに留まりたいと思っている。しかし、真奈美は悩んでいた。世の中がどうなっているのか、どこへ向かうのか…知りたい。
「真奈美が進むと言うなら俺は着いていく」
「進みたい…でも、怖い」
「俺も怖いんだ…」
俺たちは布団の中で抱き合いながら不安を互いの熱で緩和している。
この腐った奴等が徘徊するようになってからどれくらいの時が経ったのか…たまに見かけるヘリコプターや車、バイカー等、全く見なくなっていた。腐った奴等だけが徘徊している。奴等は腐っているのに動いている。
腐ってない奴等が減っていき、腐ってる奴等が増えていく…奴等を見ていると腐敗が止まっている訳ではなくただ動いている。腐敗が進み動かなくなると動く部分だけを稼働させてひたすら徘徊している。
五感の内、生きているモノだけを使っているように思える。耳が聞こえない奴は視覚や嗅覚を使っている。逆に耳だけを使っている奴もいて纏まっている奴等はそれぞれの動きに反応して動いている。数体いる所を攻撃するときはまず何かしら反応させて最初に動き出した奴を駆除すると後の奴等は動きが定まらなくなるから、駆除しやすいのである。一番反応しやすいのは聴覚である。
俺達はまず音を出してから奴等を誘きだす。
俺達はこの家をシェルターとして、まだ行っていない地域へ行くことにした。
七里岩ラインを長阪方面へ歩き出したー。
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