蠅の王と尊大な狗
#壹 『少女、時に舞う。』
日光とそれまで呼んでいたモノが平時通りの働きをする。
すなわち、ソレは本日も日光であることに変わりないということだ。
ある人はこれを喜び、またある人はこれを退屈と感じるだろう。
この物語は後者に属する少女――
――少女、時に舞う。――
現在繁栄する人類の史上では初めての記録となる"怪獣"の出現。
その第一出現場所となった首都を持つ国、そこに存在する田舎町"
そこに住む自称齢14の彼女こそが、国からの多大なる支援を受けていると噂される狗奴川家の一人娘、覇吞嬢である。
金崎から離れた同県内のお嬢様学校"国立
家から学校までの道程、その半分まで来たところで彼女の横へ並び共に歩を進めようとする同じ制服を着用し、学年を表すスカーフが同色、すなわち同学年ということを示した少女がその小柄な身体と艶やかに輝く鮮紅のランドセルを揺らして覇吞へとその威厳(など皆無で覇気の全くない震えた幼児の恐れ)ある声で語りかける!
「貴様、友,,,否、供を欲してはおらぬか?我も同じでな、
下僕からというのならば、我自らが貴様の主として君臨してもよいのだぞ?」
右隣の遥か下方から射される深淵の眼光を認識した覇吞は、その愚かなか細き輝きに哀れみを感じ、息を漏らすのだった。
「・・・」
「ほう?どうした
迷っている時間など無駄であろう
この我が貴様に声をかけたという事象が成立したその時点で、もう返答はたった一つへと収束されたであろうに」
そのセリフを聞いた覇吞は意を決すると、一拍空けてその少女へと向き直る。
そのとき彼女の胸に提げられた名札が視界へと映ったが、陽光を反射するそれに本来の役目を果たすことは不可能だった。
だから覇吞はそのランドセルにぶら下がるマスコットの模している小型生物の名前で呼んだ。
「さすが
鬱陶しさなら熱帯夜の飛蚊にも勝らずとも劣らずだわ」
「な、ぬぁにうぉほざくか蛆めが!」
「蛆、ね
そうね、私が蠅の魔王だとしたらあなたは精々自分に意識と形状があることを理解することのできた仔犬に過ぎないわ
えぇっと、それで,,,下僕にして欲しいんだったかしら?」
向かい合った背丈の違う二人の少女たちからは、彼女らの立つ路に他何者をも通すことを許さないほどの覇気を満たして壁を作っていた。
その中で交差しあう血潮漲る敵意はヒトの形状をしつつも、人々に怪獣の恐怖を思い出させるには十分な存在感があった。
一人は一見、寝癖を付けた長髪の中学生。
一人は一見、背中側でスカートが捲れていることに気付いていない小学生。
通行人を震撼させる二名は、着実に速度を上げるこの世界規模の転換期という時に一体何を見るというのか。
新時代はまだ、始まったばかりだ。
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