荒ぶる血潮とキリマンジャロ物語
万城目★ガラシャ
未知なる世界との邂逅
新時代への突入
#零 『影、鐵を衝く。』
黒く閉ざされた世界に響き渡るのは、セミの鳴き声と人の雑踏。
目蓋を開いて映し出される世界は、見下ろすかのような高層ビルによって作られる大きな影。
皆汗で濡れ服を張り付けながらも、なにかに追われるかのようにして湯気を上げるアスファルトの上を歩み続けるのだった。
そんな憂鬱から目を背けるようにして遥か上空を見上げると、建ち並ぶビルの陰の隙間を縫うように光の尾を伸ばす太陽が爛々と燃えていた。
その時、海のようにうねる人々はなにを考え、何を想い、何を見ただろうか。
突如として裂かれた大地、隆起する"影"。
彼らがそれまで信じていた自然の摂理を、人類の英知を示すような高層ビルを、ありとあらゆる正しさを木端微塵に粉砕し"ソレ"は現れた。
多くの命を一瞬の内に奪い去り、地球がその神秘の世界の広さを改めて人類に突き付けたのだった。
――影、
全国の新聞全てが、一面に同じ文面を並べていた。
"超巨大生物現る!" "巨大怪獣、都心を襲撃!!"
"首都、地下より大型生物出現す。"
日中、不安感を煽る警報がなり響き、テレビに巨躯を揺らして都内を破壊する化け物が映し出された時、誰もが今日の日付を確認したが、扇風機が回り西瓜を切る四月がこの国のどこにあるというのか。
映画のようなソレは、確かに我々の住居を踏みつぶし、近寄る航空機を睨んでは大きく裂けた口を広げ、その無数の歯牙と波打つ舌を覗かせていた。
おぞましいという言葉を体現したかのようなその巨体が地下より現れたという事実は、出現地より遠く離れた大海の彼方の大陸までをも震撼させた。
しかし、人類を襲う驚異は地底大怪獣のみにとどまらなかった!
世界各国で頻出する未確認生物群、通称――"怪獣"。
彼方の大宇宙より来訪する先進技術を持った侵略者や、守護者。
突如として覚醒する特異なる力を持った地球人。
明るみになる、超古代の旧人類文明。
破壊の限りを尽くす闇と、それを払う輝きたち。
後の世に言う地球人類転換期の訪れである!!
我々は広大な世界に何を見るか、はたまた母星は我々に何を見るのか。
今、人間の存亡を賭けた荒波の時代が幕をあけたのだ!!
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