使徒

バブみ道日丿宮組

お題:もしかして極刑 制限時間:15分

 使徒は不老不死といわれる。

 仮にそうだったとしても、ひたすら殺すというのは極刑として成立しない。

 そもそも使徒である彼女はなにも悪くない。殺される理由はどこにもない。罪があるとすれば、処刑人であるこの国の王子だ。

 異端を許さないという精神は理解できない。使徒であっても人間だ。それも私を作ってくれた聖人のような人なのだ。

 隠れてる身体が思わず動きそうになり、

「慌てないで」

 肩を叩かれ、

「……わかってる」

 呼吸を抑え込むように整える。

 ここは処刑場。

 沢山の人が死んだ場所。

 円形闘技場の作りをしてるその場所の中心地で、彼女は磔にされてる。

 十字の形をした台に、それぞれ頭、両手、足が固定されてる。

 動かせそうなおへその前には、大きなドリルが設置されてた。あれでおそらく彼女のお腹を掘り進むつもりのだろう。他にはギロチン、大きな斧、刀、銃、アイアンメイデンなど、拷問に使うものや、軽症、重症を与えるものが周囲に散らばってる。

「これはチャンスなの。拷問を行うのは王子1人で護衛もつけてない」

「……そこに偽りはないの?」

 仮にも一国の王子だ。護衛が1人もいないのもおかしいし、観客が誰もいないのも不可解だ。

 一般的に処刑や、拷問を王子は一般公開してる。

 刑に処される親族には精神的苦痛を、刑を楽しむものには精神的快楽を。

 それがこの国のやり方だ。

 今まで違うことなんてなかった。

 両親、お兄ちゃんに限らず、みんなそうして殺されてきた。

 私が生かされてるのは、王子のおもちゃだから。身体の至るところをいじられ、もはや人間の快楽を得ることはできない。

 街でひたすら快楽を求めて、歩き回ってるときにであったのが彼女だ。彼女によって、私は新たな快楽を得ることができた。

 そしてこの国を変えてやろうという意思さえももたせてくれた。それから私は革命軍に入り、準備を整えてると、そのニュースが耳に入った。

 不思議な力があると噂になった彼女が捕まったと。持ってるはずの力を使わず、無抵抗に従ったと。

 そのニュースを聞いた時、だから言ったのに、だから嫌だったのに、お願いを聞いてくれればと、落胆した。

『大丈夫だから、1人でも大丈夫』

 そう笑顔で私のもとを去った。

 その後をついていけばよかったのに、なぜか私は後を追えなかった。まるで障壁のようなものが私を縛り付けた。

 その障壁があったのに、なぜただの兵士に捕まることになったのか?

 理解できない。……でも現実なのだ。受け入れなくてはいけない。

 彼女の行方や、行われることを調べて、やっとのことでチャンスが生まれた。それが今日の拷問。

「絶対助ける」

「えぇ、助けるの」


 そうして、私の長い戦いははじまりを告げたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

使徒 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る