第24話 シリウス発射

 シリウス系が高速で回転する。

 ぐるぐる。

 ぐるぐる。

 中央のシリウスA・Bは軌道が小さいので忙しなく。

 軌道の大きい惑星達は豪快に。

 一番外側にはシリウス系の惑星と一緒に木星も回っている。

 残っている惑星は幾つだろうか、と秀将は気になる。

 一つ、二つ、三つ……

 あと、最も外側で木星と一緒に回っている星を含めて四つ。

 こう見ていくと、気付いたことがあった。

「太陽系って惑星多い方なんですか?」

 すると徳丸は顎に指を当てて、考え込むように応じた。

「それは難しい質問だね。確かに今までの対戦相手の星系は惑星が少なかった。でも、ベテルギウスの場合は膨らんだために軌道の小さい星が呑み込まれてしまった後だから少ない。シリウスもシリウスBが膨らんだ時に同様のことが起こっているから惑星が少ない。元々はもっと惑星の数が多かったんだよ」

「へえ~そうなんですか」

「うん。それに、太陽系以外の星系の惑星の数がはっきり観測できた例がまだ無いんだ。だから太陽系の惑星が多い方なのかどうか、結論を出すには情報が足りない」

 たまたま、これまでの対戦相手の惑星が少なかっただけなのか。プロキシマの時は幾つあっただろうか。

 そんなことを考えている時、シリウス系に変化が起こる。

 星が射出されたのだ。

 射出されたが、一瞬、何が起きたのか秀将は理解できなかった。

 周囲を見回しても、困惑の声が上がっている。

 それは会場中に伝播し、どよめきが波打っていた。

「えーと……これって良いんですか?」

 秀将は隣に訊ねる。

 徳丸は腕組して困ったようだった。

「これは、うーん……良いのかな?」

 二人とも、反則なのかどうか決めかねている。

 なぜかというと。

 射出されたのがシリウスBだったからだ。

 シリウスBは恒星だという。

 惑星ではないのだ。

 惑星でないものを射出して良いのだろうか?

 どよめきを残したままシリウスBが星間空間を疾走する。

 白く輝く星、白色矮星。

 太陽もいずれこうなるという噂の、白色矮星だ。

 ぼんやり輝くその姿は惑星に比べるとまだまだ明るい。

 これが、太陽系目指して飛んできている。

 ディスプレイの中ではシリウスBが太陽系に到着した。

「さーてシリウスの方角を探そうか」

 徳丸が全周囲に広がる宇宙からシリウスを探し始める。

「あ、あの、もうちょっと」

 秀将はもうちょっとディスプレイを見ておきたい。

 シリウスBがどの星を狙うのか定まるところまで。

「そろそろ見えるんじゃないかなー」

「もうちょっとだけ」

「お、シリウスはあれだな」

 早くも徳丸はシリウスの位置を見付けたらしい。

 秀将はぎりぎりまでディスプレイを確認し、どうやらコースが決まった辺りでようやく目を離した。

「シリウス、どこですか?」

「あそこのベテルギウスの、左下の方だ、あの輝きの強い……」

 徳丸のガイドで秀将は視線を移動させていく。

 まずベテルギウスがあって。

 そこから左下。

 すぐには分からず、少し探す時間が発生する。

 徳丸にもう少し視線を誘導してもらい、ようやく発見。

 輝きが強い、シリウスだ。

「ああ、これですか。てゆうか、シリウスってベテルギウスの近くにあったんですね」

 これが意外だった。

 ビッグネーム同士がこんなに近くにあるなんて。

「そうなんだよ。面白いだろう? ベテルギウスは探しやすいから、あそこら辺の星を探す時の基準になる」

「ベテルギウス存在感凄いですね」

 これまで秀将は特段夜空に関心があるわけではなかった。

 しかしこの星系輪舞祭を観て、色んな星を知ってくると、だんだん面白くなってきた。

 シリウスの輝きに変化が現れた。

「お、遂に来たぞ」

 徳丸がニヤつきながら待ち構える。

 秀将もこの瞬間を見逃すまいとする。

 シリウスから光が分離する。

 分離した白い輝きが走る。

 流れ星のように。

 宇宙を駆け抜ける。

 ヒューンと疾駆して、しかし、それで終わらない。

 角度を変えてまたヒューンと行く。

 また角度を変えてヒューンと。

 もう一回角度を変えてヒューン。

 それでようやく終わった。

 今までとは明らかに違う事象が起きているようだった。

 いったいシリウスBは何をしたのか。

 何度も角度を変えたのが気になる。

 会場がざわついている。

「これは凄いことが起こったのかもしれないな」

 徳丸がニヤけ顔をやめて思案顔になっている。何が起きたのか想像しているらしい。

『これはなかなかのが来ましたね』

 地球ちゃんも、してやられた感のある調子だった。

 何度も角度を変えて駆け抜けていった輝き。

 そこでは一体、何が起こっていたのか。

 それはこれから始まるリプレイを見てみるしかない。

 秀将は期待と不安がないまぜになった状態でリプレイを待った。

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