第12話

 その時だった。観衆の歓声が沸いた。

 場に響く強烈な金属音の連続。武士の刀と獣の爪のぶつかり合い。

 それは鍔迫り合いに移行していく。

「ほう。なかなかの業物よのぉ!」

「くっ、どうして爪を切り落とせないっ!」


 獅子は笑う。その中でマオは歯を食いしばり足に力を込める。圧倒的な力。

 このままではだめだ。力押しで勝てる相手ではない。マオは迅速に判断する。

「こっち見ろライオン!」

 マオは、ヴァリアヴァロンを睨み付け、吐き捨てる。


 獅子の瞳が、こちらを射抜く、その時だった。

 彼女の鉢巻きが赤く燃え、その瞳を襲う。

「ふっ、小賢しい」

 ヴァリアヴァロンはその火焔を後ろに下がり、容易くかわす。そう思われた時だった。彼女の放った火焔は腕の形に変わり、獅子の身体を掴む。

 獅子は体勢を崩した。狙って作ったその隙を彼女は逃さない。

「もらったぁぁぁぁあ!」

 マオは雄叫びをあげる。彼女の刃は獅子の身体を袈裟切りにする。

 戦況が大きく動いた最中、マーマレードは退屈そうに首の骨を鳴らした。

「くっ、くそっ!はずれねぇっ!」

 バンジェリンは身体を捩るものの、ツタは外れることなく、より複雑に絡みついていく。そして、そこから数メートル離れた場所にマーマレードは立っていた。

「……一撃で終わらせてあげるわ」

 彼女は一言呟くと、右腕を胸元の高さまで掲げる。すると橙に光り始めた。

「……な、なにをするつもりだ」

 バンジェリンは怯えを隠せていなかった。

 すると、観衆の誰かが口を開いた。

「……ヴァージンロードか」


 状況に似使わない言葉。それは不穏な空気を纏う。

「……行くわよ。『進撃の十三歩』」

 マーマレードはゆっくりと一歩ずつ歩みを進めていく。ひとつ歩みを進めるごとに腕の光は増していく。それは十二歩目には目が眩むほどだった。

 十三歩目。それはバンジェリンの目の前。

「あ、あぁぁああ」

 バンジェリンは恐怖に身体が動かない事を自覚した。

「……大丈夫よ。痛いのは最初だけだから」


 マーマレードは最後の一歩を歩み、そう言葉にした。右腕を一気に振り上げる。

 そして、必殺の一撃が振り下ろされる。 ――その時だった。

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