第11話

「があっはっはっは!なんと素晴らしい口上であろうか!これが、かの国の武士道たるものか!これだけでジャポンに来た意味があろうと言うものよぉ!」


それはヴァリアヴァロンだった。漢は豪快に笑うと、たてがみを金色に逆立てた。

獅子の言葉に、マオは目をキラキラと輝かせる。こいつは分かっている!


「――ふっ、やってやりますぜぇ!」

そして、その隣でバンジェリンも両手の爪を鋭く伸ばす。

――開戦。

二人のヴィランは駆けだした。一直線にこちらに向かう。

「くるよ!ブシドー!」


マーマレードは状況を伝えると共に杖を一振り、前方の地面に橙色の輪が出来る。先ほどまで余裕に笑みを浮かべていた、彼女の顔色は良くない。

「――はい!私はライオンをやります!」

「――えぇ!?ちょっと待って!」


マーマレードの言葉に応えるマオ。その言葉にマーマレードは耳を疑う。


マオは自身の口上を称賛したあの男と刃を交えたかった。決して照れ隠しではない。

それはひとつ武士としての心構えであり礼儀。礼には、礼を尽くす。

彼女は真紅の刀を固く握ると飛び出す。目標は獅子。あちらも真っ直ぐこちらに来ているようだった。彼もまた武士道に通ずる者なのだろう。とマオは軽く微笑む。

しかし、マーマレードは慌てていた。今のマオに、あの獅子は明らかに荷が重い。

「おいーらが加勢するーぜー」

飛び出したマオを追って、マーマレードの隣をすり抜けるウサギ。

「くっ、早く終わらせないと!」

マーマレードは前方を睨み付ける。そこには一直線に走ってくるバンジェリン。

二人の間には先ほどの橙の輪が存在している。


あのままの進路をとれば、あのヴィランは輪を踏むだろう。

「――はっ!そんなに見てたら、躱したくなっちまうだろうがよおっ!」

すると、その視線に気付いたバンジェリンは叫ぶ。そして橙の輪を左に避けた。

その時だった。マーマレードはヒーローと言うには程遠い嘲笑を浮かべた。

「やはり、貴女は小賢しい狐を脱していない様ね。咲け、橙の華」

彼女の言葉が世界に放たれた瞬間。輪は強烈な光を放つ。


その直後、隣を駆け抜けようとするバンジェリンの足元から、いくつものツタが伸び、その体から自由を奪う。

「――チッ!なんでぇいこれはっ!」

「さぁ、さっさと終わらせましょう。巻きで行くわ」


慌てる狐は罠にかかった。それを射抜くのは橙の魔女。

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