第11話・捜索

 ルツコイの命令で、すぐに大規模に兵士達が動員され、メリナが拉致された場所を中心として比較的広い範囲が封鎖された。主要な通りには多くの兵士達が並んで誰も通れないように塞いでいる。


 別の兵士たちが建物の中を一件一件調べる。傭兵部隊も全員が動員されて、軍と共にこの捜索を行っている。

 さすがにローデンベルガーといえども、これだけの数の兵士を倒すことはできないだろう。封鎖された地域から逃げ出すことは難しいと思われた。まだ、この辺りに居ればだが。付近が封鎖される前に、あの空間魔術を使って遠くに逃げている可能性もあると、私は思った。

 しかし、奴が一体何が目的でメリナを拉致したのか、全く不明であった。彼女が無事であると良いが。


 私は傭兵部隊の部下十名を率いて、港に並んでいるレンガ造りの倉庫を捜索していた。

 倉庫の扉を開けると、その中には穀物が入った袋が数多く積み上げられていた。天井近くの窓から、外の明かりが入っているので、松明がなくともかろうじて中の様子がうかがえた。何軒か倉庫を調べたが、何も見つからなかった。それでも並んでいる倉庫を次々に調べる。


 しかし、ついにある倉庫の奥で、ローデンベルガーとメリナを見つけた。

ローデンベルガーは我々に気付くと、メリナの腕をつかんだ。ローデンベルガーは剣を抜いている。我々は身構えた。

 私は叫んだ。

 「メリナを放せ!」

 ローデンベルガーは叫び返す

 「そうは行くか!」

 「一体、何が目的だ?」

 私の横から隊員達が少しずつローデンベルガーに近づこうする。ローデンベルガーはそれに気が付いて叫ぶ。

 「下がれ!」

 私は部下たちに手で合図をし、後ろに下がらせた。そして、ローデンベルガーに話しかける。

 「目的は何だ?」

 「私が、街から脱出できるようにしろ」

 なるほど、そのために人質を取ったのか。

 ローデンベルガーは、やや興奮気味に話を続ける。

 「お前とサシで話がしたい。仲間をここから出て行かせろ」

 「断る」

 「こいつがどうなってもいいのか?」ローデンベルガーはメリナの首に剣を近づけた、再び叫んだ。「お前以外はこの倉庫から出ろ」


 メリナの身に危害が及ぶのを恐れ、私は仕方なく奴の言いなりになることにした。私は隊員達に倉庫から出る様に言う。

 奴は何のつもりなのだろうか? 一対一で勝負をつけようということだろうか。

 メリナが傍にいるので、魔術による攻撃は彼女を巻き込んでしまう。剣のみの戦いでは勝ち目はないだろう。しかも、奴は既に剣を抜いているが、こちらの剣は、まだ鞘の中だ。


 私は隊員達が出て行ったのを確認する。

「言う通りにしたぞ」

「いいだろう。では、私が街から脱出する手伝いをしろ、私が死んだことにすればいい。そうすれば、もう私は追われることもない」

「死んだことに、だと?」私は少し考えてから叫ぶ。「遺体がなければ、他の者にそれを納得させることができないぞ」

「うまく考えろ」

 私は、考えを巡らせる。

 なんとか隙をついて、ローデンベルガーを倒すことは出来ないだろうか。

 

 奴を倒す方法は…。

 

 船か。

 奴を逃がすと言い、脱出用の船を用意し、奴を乗せる。おそらく、安全なところまでメリナを人質として連れて行くだろう。私は何とか船に潜伏し、隙をついて奴を倒す。メリナがローデンベルガーから離れれば魔術の攻撃も可能になる。チャンスはあるだろう。

 すぐそこに桟橋があり、いつもの様に貿易船がいる。そして、今、倉庫の外には、傭兵部隊十名のみ。彼らを下がらせ、ローデンベルガーを船まで誘導する。

 いや、それとも、ルツコイに話して海軍の船を利用するのだ良いだろうか。


 さらに考えを巡らせて、上手くいくかどうかわからないが、策が浮かんだ。

 私は考え付いた策を提案するため、ローデンベルガーに話しかける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る