第12話・罠
私はローデンベルガーに自分の策を話した。彼は一旦は納得したようだ。
後は、ルツコイにも話をして海軍の船を使わせてもらうように、説得する必要があった。
私は、ローデンベルガーとメリナを残し、一旦、倉庫を出た。
外で待っていた隊員にルツコイを見つけて、ここまで連れて来るように言う。
隊員は敬礼をして街中へ向かって行った。
二時間近く待っただろうか、ようやくルツコイが倉庫の前に、軍の兵士を大勢引き連れてやって来た。
ルツコイを呼びに行った隊員も一緒だ。彼は敬礼する。
「遅くなり申し訳ございません。ルツコイ司令官を探すのに手間取ってしまいました」
「構わない、ありがとう」
私はそう言うと、ルツコイに歩み寄って状況を説明する。
「この倉庫の中に、ローデンベルガーと人質にされているメリナが居るのを見つけました。私がローデンベルガーと話をしましたが、奴の要求はこの街からの脱出です。船を用意して、海路でテレ・ダ・ズール公国まで脱出させろと。逃亡するための船には操船に必要な最低限の要員と人質のメリナと私のみ乗れと言っています。我々はメリナをダクシニーに引き渡さなければなりません。そこで、私は船上で機会を見つけローデンベルガーを討ち、彼女を無事救出したいと思っています」
私は、ここまで話をして一旦、息をついた。ルツコイは無言で私の提案を頷きながら聞き続けている。
「我々は奴を逃すことを承諾すると伝えます。しかし、それは嘘です。私も奴やメリナと一緒に船に乗り込みます。そして、奴が船に乗ったところで不意を突いて討ちます」
「一人でやる気なのか?」
「そのつもりです。奴も私一人だけ同行しろと言っていますので、とりあえずは言う通りにした方が良いと思います。」
「無茶をするな。相手は君を負傷させることができるぐらいだぞ、忘れたのか?」
「先日は、不意打ちでしたが、もう奴が空間魔術を使うことはわかっています。不意打ちを食らうことはありません。先に私の魔術で倒します」
ルツコイは私の言葉を聞いて腕組みをして少し考えている。そして、はっきりとした口調で言った。
「軍の兵士も船に乗せる。君一人だけを危険に晒すわけにはいかない」
「お言葉はありがたいです。しかし、多少の兵士の数だと、逆に奴の空間魔術にやられてしまいます。最低三十名は居ないと奴を倒せないと思います。それでも半分以上は犠牲になるかもしれません」
「では、五十名乗せよう」
「しかし、船内に五十名も隠れるところがありますか?」
「奴は、一人で船内を全て確認すると思うか?」
「確認するのでは?」
「では、一番大きな巡洋艦を用意させよう。大きい船だから兵が隠れる場所は倉庫内などいくらでもある。もし、奴が船内を探して見つかったとしても五十名は倒せまい。もし、君一人で奴を倒せたのであれば、それはそれでいいだろう」
私は一人でやるつもりだったが、ルツコイの命令であれば仕方ない。
「海軍の船を用意させる」
ルツコイはそう言って部下の兵士に海軍へ向かわせた。さらに別の兵士に船に潜伏する五十名を選抜してを集めるように命令する。
さすが、ルツコイだ。決断と行動が早い。
私も、動くとしよう。
「では、私は奴に要求を飲むと伝えてきます」
「任せる」
ルツコイの返事を聞いた私は、倉庫の中へ入って行く。
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