第11話

「ここです!!ここ!!ここ!!」

「はいはい、すぐに行くよ〜」

さて、俺たちは部屋を出て少し高台の草原にやって来た。

「それにしても、ここからの景色は見晴らしが良くて、とてもいい場所だ」

「ですね、カメラがあったら写真を撮りたいです……」

「ちょっと待ってろ……」

俺は桜の額に左手を当てた。

「にゃ、にゃにゃ、にゃにをしゅるんですきゃ!?」

桜は耳まで真っ赤に染めていた。

「いいから、集中しろ。お前の想像しているカメラってやつを!!」

「ひゃいっ!!わきゃりました!!」

そう言うと、桜は目を瞑った。

俺も、左手に神気を集中させ、桜のイメージを読み取る。

その後、そのイメージを神気に乗せて、右手に集中させる。

「『生産:カメラ』

もう、目を開けていいぞ」

俺は左手を桜から離した。

そして、桜は目を開け、

「こ、これって……」

「そうだよ、お前の想像していたカメラのイメージを読み取り、俺の力で生産した。使ってみろ」

俺はカメラを渡した。

「ありがとうございます。じゃあ早速……」

桜はカメラを構えた。

パシャッ!!

という音がして、1枚の紙がカメラから出てきた。

「これは?」

「チェキって言うんでよ、このカメラ。もうすぐですよ……」

そう言いながら、桜はその紙を振る。

俺には何をやっているのかわからん。

「ほら、見てください!!」

そこには、この世界を切り取ったような風景が映し出されていた。

「うぉっ!!凄いな、カメラってやつは……」

「……ぷっ、ハハハハ!!」

「な、なんだよ!!」

「こんなので驚くなんて、暁さんどんな時代を生きてきたんですか!!」

「悪かったな、古い時代の転聖で!!」

「ハハハハハ……」

その後、桜は1分ほど笑っていた。

「いや〜、笑った笑った」

「俺は何も面白くないのだが……」

「でも、いい思い出になりますよ、きっと……」

「そうだな、きっと転聖しても忘れないよ……」

そう言った時、街中の灯りが消え、街の様々な場所から小さな光が空へ舞った。

無数の光が、幻想的に光を放っていて、とても綺麗な眺めだった。

「「うわぁっ……」」

その時、俺たちの言葉が重なった。

「そろそろ、俺たちも……」

「そうですね……」

俺たちは、指輪を上に向け、

「「『Light』」」

と呪文を呟いた。

そして、指輪から小さな炎が空へ舞った。

「写真、撮らなくていいのか?」

「この景色は、私の目と心に焼き付けたいので、撮りませんよ」

そう言うと、桜は右手で自分の左手に着けている指輪を包み込んだ。

「この指輪を買った店の店主が言うには、この指輪を作る時に、ひとつの魔石を2つに割って、それぞれの指輪になるそうです。」

「そうなのか」

「そして、魔石は使用後は色が無くなり、宝石になるらしいのです。そして、その宝石は、もう片方の宝石が近くにあると、蒼く輝くそうです」

俺は、指を目の高さまで上げた。

その瞬間、宝石は蒼く輝いた。

隣にいる桜の指輪も蒼く輝いていた。

「これって、運命なんですよ。指輪は、ランダムで輸出されるので、こんなこと、ありえないんですよ、本当は」

「そうだな、明日はきっと長い一日になる。俺を助けてくれるか?」

「もちろんですよ、貴方は私の主なのですから。私からも、明日は、守ってくれますか?」

「あぁ、もちろんだ。俺はお前を必ず守ってみせる」

俺たちは、手を握り合いながら、幻想的な風景を全ての光が消えるまで見ていた。















第11話 灯火あかり     ー[完]ー

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