第10話

あの後、桜の提案で1度昼過ぎまで仮眠をとることにした。

「……」

そして、目を覚ますと、もう既に日が傾きだしていた。

「あぁ、やっちまったか……」

「何まだ寝ぼけているんですか?お祭りはこれからですよ!!」

「あ、炎魔法の儀式のやつか……、でも、俺、魔法使えないぞ?」

「大丈夫です!!街には魔法が使えない人のために炎の魔石を使って打ち上げるアクセサリーが売ってあったので、二つ買ってきましたよ!!」

そう言うと、そのアクセサリー(指輪)を俺に突き出してきた。

「じ、準備がいい、な……」

「見た瞬間に買うって決めましたし、私も炎魔法は使えませんので」

そっか、そう言えばそうだったな。

俺は神眼を使用し魔法の適正属性を覗いた。

「……、やはり回復魔法特化だから水属性と風属性に適性があるようだな」

すると、桜は、顔を真っ赤にし、両手で身体を隠しモジモジしながら

「今、暁さんに私の全てを見られてるんですね……、恥ずかしいっ!!」

「モジモジしながら誤解が生まれそうなこと言うんじゃねぇよ!!」

「だって、本当の事じゃないですか」

「んぐっ……」

クソ、こういう時はすぐ黙ってしまう癖を直さないといけねぇな……

神も成長していかなくちゃいけないということか。

「そろそろ日も落ちるし、見やすい場所にでも行くか」

「その前に、その、あの……」

「どうした?」

桜は、何か言いたげな表情をしている。

「……てください」

「ごめん、ちゃんと聞き取れなかった。もう一度頼む。」

「だからっ、指輪を私の指に付けてくださいっ!!」

そう言うと桜は、自分の指輪を突き出した。

「あ、ああ、いいけど……」

俺は指輪を受け取ると、桜の左手をとった。

「……なんか、こうやって何気なくやってるが、とてつもなく恥ずかしいな」

「そう、ですね……」

俺が指輪をつけたのは薬指、初めは中指につけようとしたが、

『ここで薬指に行かないあたりチキンだね』とオーディンに言われてしまったからである。

あのマセガキ、帰った時に覚えておけよ!!

『僕も楽しみにしてるよ、僕のグングニルと君の刀、どちらが強いか楽しみだ』

なんで心の声まで聞こえてんだよっ!!

『僕は全能なんだよ。君の考えていることくらいなら余裕でわかるよ』

性格悪いな、このマセガキ!!

『またマセガキって言ったな!!お前本当に覚えとけよ!!』

おいおい、ジジイの声を使うのはズルだろ!!

マセガキって言ってごめんなさい!!

『今回だけは特別に許してやろう。次はないからな!!』

そう言うと、オーディンの神気が消えた。

「あのマセガキ、覚えとけよ」

「あの、暁さん……、どうかなさったのですか?」

「あ、すまない桜。よし、行くか」

「はい!!あ、そう言えば、ソフィアさんがとっても見やすい場所を教えてくださったんですよ!!」

「案内を頼むよ、相棒」















第10話 マセガキ  ー[完]ー

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