秋/蜻蛉
私は近所でも、二番目に
しかしそれを誰に言うでもなく、一番目に張り合うことも無く。
ただ、ひたすらに、純粋に捕るのを愉しんでいました。
透き通る羽根はひらひらとしていて、とても儚いものでしたが、私はその儚さを手にするのがとても好きでした。
大事に、大事にしていても捕まえたものだからでしょうか。ほんの数日で潰えてしまう、その命さえ私は高尚に触れていた。子供ながらにそんな気がしていたのかもしれません。
思い出したのも、巡り合わせでしょうか。
久しぶりに会った一番目は、変わらぬ快活さで自分を出迎えてくれました。
酒の席ですから、つい話題に困った私は蜻蛉のことを話しました。
「君は、蜻蛉を捕るのが、とても上手かったね」
「そうか?―嗚呼、君もそういえば上手かったな」
「…知っていたのかい?」
私は、驚いて顔を見遣りました。人の中心に立つ、彼らしい自信に満ち溢れた目。
この目が、自分に向けられていたなんて、思いもしなかったから。
「ああ。よく似た
―それからのことは、覚えていません。
ただ、また一つ蜻蛉を失った事だけは、理解しています。
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