少女虹彩

ひとつかいがらが埋葬されています

母のように、いつか凪ぐために


 ――このみちが海の底で、あることを問う

            ときの鼓動を聴いて

  その場限りの感嘆が ひゅるとつきぬけて

        やっと私の声は耳に届きました


  虚ろな老人は夕雲の子とみて

平をそっと開け放てば手籠から逃げたあぶくが

   ぽつぽつと雫を降らせるので、

   これは、魂の落としものです。

出鱈目な嬌声が溢れては

          かみの維が破れただけと

    蜘蛛のこととして授けられましょう

雑然とした開放感に 驚いたときに綿埃が

ひかりに溶けることを知った

あなたは南天の姿と想い、

   季節の移り変わりに ゆきに見舞われ

           私は庭の木偶の坊と化し、

         唯移り行く奇跡に庇われては

       空き家を黙って護っておりました

床下から逃げ出した灰色のネズミが

            幸運を奪うときに

      己だけを、おいていったのでしょう

 彼女が軒下にすんと風鈴をぶら下げているのを

闇は                 見た

 いっそう色濃く足元に縮こまるあたりにあり

   きみは浮いた実を

     かのように砕かれ、

        私は時々に描かれていきます

 それが発芽し、開いたざわめきに目を奪われ

   再び新らたな子を呼び込むものでしょう


正午障子では、影も形もない

         いまにわたしを伝えられない

  おんなは右のあなたの上に常にあるので。

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