油膜浄域

露光を宛がう湖水の眼は移り込むすべもなく、

ただ慌てふためく水鳥の足場を知っている。

隠花植物に次第に呑まれる、泥濘、

この躰は共に朽ちてしまうように 

祈りを擡げる花々たちは咲き誇る沼地に、

今と生きる我々として。

伽藍堂の腹にいつかの梔子の咆哮を呑んで 

麗しき風穴を捧げていた銃口の紫煙也。

このお屋敷の奥底に薔薇撒いた妖の導べに、

血濡れた徒花と名付けようかなどと

墓標の軌跡とも印し、ときのきみが口ずさむ 

諦めにも似た花唄を ささやかに彩る 

翳した両手いっぱいの、焦がれにも

穢れにも等しいこの季節の煌きが 

呪いであればこそ、そこには斑 

永遠に咲くといい。

陽焔のほころび、

彼方色の真珠層であったとする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る