第9話 新たな試練
目を覚ますと何時しかの巫女が俺を見つめていた。
「あなたが俺を運んでくれたのですか?」
彼女は声を発しない。
瞳をじっと見ている。
「っと」
部屋の見渡す。
陽光の差す部屋には、鏡が置かれ、祭壇には大小様々な勾玉が置かれている。
視界の隅に白玉様が写った。
「目を覚ましたか。」
「白玉様!」
「彼女の名は
「この社にて祈りを捧げる巫女じゃ。」
改めて彼女を見る。
「...すっげー美人...」
現代で充分通用する美貌だ。
慌てて口を塞ぐ。
「す、すみません!!」
彼女に言葉が通じないのか、じっと俺の顔を注視している。
「
「刀...?」
「
剣を抜き鞘から刀身を露わにする。
「見た目以上に重い...!!」
「これから鍛錬し、使いこなせるようになれ。」
「わかりました!」
彼女はニャっと笑う。
「
彼の名を聞いた瞬間顔が引きつる。
「嫌ですよ!」
「あの
「無理難題押し付けてくるし!!!」
彼女は俺を引っ張りながら言う
「四の五の言わずに修行じゃ!!」
「
後ろを振り返り彼女に感謝を告げる。
無反応だが、じっと俺を注視していた。
いつもの空間にやって来た俺に建御雷神は言う。
「昨日、貴様が身につけた神気開放とこれから伝授する神の剣技。」
「この2つを掛け合わせる事で初めて貴様は神と渡り合える」
白玉様が問う。
「学。初めて神気開放をした際、何を感じた?」
俺は当時を思い出しながら言う。
「第5感が研ぎ澄まされて....更にその先の...第六感が開いたような...」
「で、でも、それと剣術の関連性は ....」
建御雷神がすかさず返す。
「第5感が鋭敏になると、人の子では視えぬ、聴こえぬ、触れられぬ神の攻撃に反応出来る。」
「加えて第六感になると、人の子の域を超え神に近づける。」
「貴様は私の鍛錬を生き抜く事が出来るか?」
彼の瞳を見て、嫌な汗が頬を伝った。
あれから1年が経過した。
神気開放と神の剣技を未熟ながらも習得できた。
今夜は建御雷神と太刀合わせする。
向こうは殺す気で来ると白玉様には修行中何度も言われた。
鈴虫の羽音が響く中、与えられた部屋で秋の満月を見ながら、一人...正確には猫神一匹と黄昏れていた。
日国光巫女には何度も世話になった。
ボロボロで立ち上がれない俺を幾度となく介抱してくれた。
今日まで一言も発さなかったが、彼女なりに気にかけてくれた。
お互いの身の上話に花を咲かせる時もある。
彼女は俺がどの国から来たか知りたいようだ。
俺は笑いながら言う。
「同じ国なのにな。」
今は西暦594年。
歴史的変化は"まだ"ない。
いつしかこの時代に愛着が湧いていた。
彼女が夕飯を持ってきた。
笑顔あふれる表情で。
「
稲守、
都の外を歩いていた時、偶々稲を盗んだ
飯時、佐久夜郎女は楽しそう話す。
口元を袖で隠し、鈴を垂らしている髪留めを揺らしなから笑う彼女に心惹かれていた。
俺の恋情を白玉様は白い目で見ている。
「美味しかったよ。」
「佐久夜さん。有り難う。」
彼女に感謝を告げ、食事を終える。
彼女は唐突に問う。
「稲守様は、輪廻転生を信じますか?」
「? 輪廻転生?」
「隋より渡来した高僧の方が仰っていました。」
「天竺のお釈迦様の教えでは、生前の行いが次の世を決めると。」
時代背景を考慮すれば彼女の問いは至極真っ当な質問だ。
俺は拳を緩めて安堵する。
現時点では、人や文化に歴史改変は干渉していない。
俺は剣を一瞥し、彼女に言う。
「俺は信じているよ。」
彼女は俺の答えを聞き、笑顔を見せる。
「
「信じてる....」
悪神を倒した後、現代に戻り、生まれ変わった佐久夜と再開できればどれ程幸福だろう。
笑顔になる彼女を見て、堪らなく愛おしく思う。
俺は守る。歴史を、未来を、そして、彼女を。
ーーーーーーーーーーーーーー
眼前の建御雷神が剣を大きく振るう。
その剣先は俺の首を狙っている。
死ぬ!
彼女の顔が瞼の奥底に浮かぶ。
寸前で攻撃を
「まだ死ねない。死ぬわけには行かない!」
「勝つまで闘う!!」
「神気全開放!!!」
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