ファウストゥスの正体
言葉を話す刀【報復刀 ウェイジス・エッジ】は、自らを人間のファウストゥスと名乗る。
「やはりお前は、ファウストゥスの魂をその身に移して、生きながらえていたのですね?」
サピィが問いかけると、ウェイジス・エッジはフンと笑った。
「いや違うね。私の意思こそファウストゥスそのものだ」
「なんですって!?」
ウェイジスエッジがいうには、ファウストゥスは、人間の錬金術師に過ぎなかったらしい。
「私が彼を乗っ取った。力を授けたのだ。そのせいで、魔王には睨まれてしまったがね」
ドラゴンを駆り、魔王と死闘を繰り広げた後、セグメントに逃げ延びていた。
「私は各地で自分の分身を野に放ち、強い戦闘力を持つ者、高い魔力を持つ者たちに取り付くよう命じた。アイテムそのものに魂を吹き込む力を駆使してな」
「オミナスはあなたが開発したのですね?」
「大元は、ね」
その一つがこいつ、ウェイジス・エッジだというのか。
「だが、俺の父に討伐されそうになったわけか」
「そのとおり。そのとき破損して、私は撤退せざるを得なかった。ちょうど入れ替わりで、私の、正確にはファウストゥスのクローンを、アイレーナに送り込んだときだ」
「クリム・エアハート」
「ああ。そういう名前になっていたか」
この地で、復活の時を待っていたという。
「父グスターヴォは、クリムを見たとき驚いていた。理由を聞くと、若い頃のファウストゥスとうり二つだったからだと」
ジェンマが、父である大魔王グスターヴォのエピソードを語った。それで、ここに協力をしに来たのだろう。
本当に、クリムはファウストゥスの。
「どうして、クリムを作った?」
「やはり、この身体では不便だからだ」
何体ものクローンを作り出し、オミナスに取り付いた人間の戦闘データを移し、ウェイジス・エッジが吸い出していたのか。
「そのための高次元空間だった。お前たちのせいで、破壊されてしまったがね」
「いったい、なんのためにこんなことをしたのです?」
「こんなことを、だと!? 我々魔物の魂をアイテムに移そうと考えたのは、貴様ら魔族ではないか!」
どういうことだ? レアアイテムを開発したのは、人間だったはずだ。
「魔物の力を武器や防具に転用したのは、人間じゃないのか?」
「人間の方は、ね。だが魔族側は、魔物や魔族の魂を直接アイテムに移したのだ!」
結果完成したのが、オミナスだというわけか。
「それを、人間の錬金術師・ファウストゥスがマネたのだ。彼はグスターヴォに捕らえられ、実験をさせられた結果生まれたのが、私である」
だから報復刀、というわけか。
「私は、魔界も人間界もすべて葬り去る! 我々の憎しみは、永遠に消失せぬ! モノに利用されるのは、貴様たちの方だ!」
「おのれ、下郎!」
ジェンマが、刀を抜き放つ。
しかし、シーデーそっくりのマシンが突如として姿を現した。報復刀を抜き、ジェンマを軽く退ける。
「フォート族!?」
「そうだ。彼らも、魔物の魂を移された者たち」
オミナスとフォート族は、同じ原理で動く存在らしい。
「どうだシーデーとやら。我々は同志だ。こちらにこないか?」
「お断り、ですな」
「なんだと?」
「たしかに当初は、魔物に対する憎しみはございましたぞ。だが、お嬢は別でございます。我は魔族の敵なれど、お嬢の味方でございますぞ」
シーデーはあくまでも、サピィのために戦うと語った。
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