インテリジェンス・ウェポン

 激怒した仏像が、フェリシアを腕で薙ぎ払った。


 剣でフェリシアは受け流したが、その剣が壊される。


 さらに追撃が、襲いかかってきた。


「きゃあ!」


 フェリシアが、攻撃を盾で防ぐ。


 その盾でさえ、仏像は砕いた。


 反対側の壁まで、フェリシアが吹っ飛ぶ。


「こんのお!」


 ブチギレたトウコが、蹴りで仏像に攻撃を加える。


「よせ。ムチャだ!」


「ムチャでもやるっきゃねえだろ! おおお!」


 アバラが折らた状態とはいえ、仏像はトウコの攻撃をすべて受け流す。ドワーフの怪力さえ、仏像は問題にしていない。


 飛びかかって、トウコがエルボーを見舞おうとした。


「ぐほおお!?」


 腹へのキックで、上空のトウコを叩き落とす。


「なんて強さだ!?」


 こんな奴が、まだダンジョンにいたのか。さすが、報復刀を守っているだけある。


「魔王の力に近いパワーを感じます。おそらく、レアアイテムか呪いのアイテムオミナスでできています」


 ならば、俺が戦った方がいい。


「すまんフェリシア、トウコ! 後は任せろ!」


 フェリシアを気遣い、俺は刀を振るった。


「ディメンション・クローッ!」


 よろけた仏像の胴体を、クローで薙ぐ。


 対する仏像も、魔法障壁を手から作り出しした。こちらの攻撃を防ぐ。


「止めれるもんなら、止めてみろ! おおらあああああ!」


 藍色の光刃が、仏像を防御用障壁ごと切り裂いた。


 腹から両断された仏像が、ただの金属の塊へと変わり果てる。やはり、コイツにもレアの力が発動していたか。


「よし……倒した、か」


 金属片となった仏像を見て、俺は勝利を確信した。


 黒い刀が、仏像の跡からジュエルを吸収する。


「なんとか、なったみたいね」


 トウコとフェリシアが、グッタリとなる。 


「どうした、ふたりとも? 空間は、解除されたぞ」


「あたしたちは、もうダメだ」


 トウコの腕が、震えていた。黒曜顎コクヨウガクに力を注いだ上に、ムリな戦闘行為までした。もう限界が近い。


 術式は解除されたが、もう戦闘に参加はできないだろう。


「自分の身を守ることくらいしか、もうできないぞ」


「私もよ。思いの外、ダメージが大きいわ」


 フェリシアに至っては、装備品が破損していた。剣も折れて、盾も砕けている。


「あとゴッドノイズ一発なら、撃てそうな気がするわ。けど、帰るまでにはガス欠ね」


 苦々しく、フェリシアが取り出した銃を睨む。


「他の武器は、全部ダメになったわ」


 それだけ、このダンジョンが過酷なのを物語っていた。


「ワタシも同行はムリね」


 ゾーイの展開していた羽根型自律兵器も、すべてボロボロになっている。


「ですが、もう報復刀の場所も近いです。もう少し歩きましょう」


「ああ。お前たちは、ここで休んでいろ」


 フェリシアとトウコ、ゾーイを残して、俺たちは先へ進んだ。


 この先に、伝説のオミナスがあるのは、間違いない。


 一歩進むに連れて、不快感が増していく。

 粘ついた瘴気が、体にまとわりついてきた。


「なんだ、この不愉快な感情は?」


「これこそ、オミナスの放つ魔力です」


 オミナスが放出する悪意を、俺たちはモロに浴びている。


 最奥には、一振りの刀が飾られていた。豪華な金細工で粧飾された、海老茶色の鞘に収まっている。


『何者だ? この地を最古のオミナス【報復刀 ウェイジスエッジ】のありかと知って入ってきたのか?』


 だれもいないのに、声だけがした。


『あの守護天魔を打ち破るとは。久々に、腕の立つハンターが現れたようだな』


 愉快そうに、何者かが笑う。


 だが、どこから見ているのか?


「あの刀がしゃべっている! 声は、刀からしているぞ!」


 ジェンマが、刀を指差す。


「インテリジェンス・ウェポン?」


 最強のオミナスの正体は、知識のある武器だった。


『いかにも。私こそウェイジス・エッジ。そして、かつて【ファウストゥス】と呼ばれたものだ』


「お前が、ファウストゥスだと!?」

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