報復刀の在り処へ

 俺たちは、セグメント・ゼロの裏側にある通路へ。【報復刀 ウェイジス・エッジ】の眠る場所へと移動する。クリムや魔王が、立ち寄らなかった場所だ。


 その刀には、ファウストゥスの秘密が隠されているという。


「お気をつけて、ランバート。ここから先は、あなたのスキルが頼りです」


 サピィが、俺に語りかけた。


 俺にはレアアイテムを破壊できる、秘宝殺しレア・ブレイクというスキルがある。これさえあれば、報復刀でも倒せるはずだ。


「なにも出ないな」


 周囲を見回しながら、トウコがつぶやく。


 敵は出てこない。魔王グスターヴォ・ダミアーニが現れたことで、なにかが変わっている。逃げていったのか? 


「すべての兵器が、グスターヴォを狙って集結しているようですね。今頃、ダミアーニは古代兵器型モンスターの襲撃で戦争になっていることでしょう」


 脅威の優先度は、こちらよりダミアーニ卿の方が上らしい。 


「問題は、その刀がファウストゥスとどういう関係があるか、だな」


「そもそも、ファウストゥスって人間なのか?」


 トウコが、もっともらしい質問をした。


 たしかにファウストゥスは、謎の多い人物だ。


 いつの時代にいた人間なのか、誰にもわからない。


「はるか古代から存在していたとしか、わかっていません」


 ただ、魔王グスターヴォ・ダミアーニ卿と戦って死んだとしか、記録されていないという。


「その死さえも、事実なのかどうかわからないのです」


「ファウストゥスと報復刀との関係も、気になるな」


「クリム氏の残した情報がたしかならば、ファウストゥスは自身の人格をその刀へ移したのではないかと」


「まさか!?」


「彼はレアアイテムに、人格を移す実験をしていたそうなので」


 武器に自身の人格を転送し、永遠に生きようとしていたのでは、とのこと。


 その証拠に、彼はいくつもの【オミナス】という呪いのアイテム郡を生み出している。


「それなら、ファウストゥスは報復刀ということになるじゃないか」


「かもしれません。しかし、実際に見てみないことには」


 ファウストゥスがいる所へは、魔王が向かっている。


 では、そこにはなにがあるというのだろう。


 この先に、本当に報復刀が眠っているのか。


「到着しましたぞ」


 シーデーが、裏道の終点に立ち止まる。


 入り口は、金庫のような構造だ。何かを厳重に封印していると想像できる。コンソールがあるが、壊れていた。なんの反応も示さない。


「閉まっているのに、なんか息苦しいぞ」


「この時点て、高次元空間にやや入り込んでいるのです。片足を突っ込んだ程度ですが、それでもかなり精神にダメージが及んでいるようですね」


 解説するサピィも、眉間にシワがよっていた。


「だったら今から、結界を破壊していくぞ」


「お願いします」


 トウコがひとまず、この一帯の高次元空間を和らげる。

 結界の破壊は、【ミスティック・アデプト】のスキルだ。


「どうして、こんなわかりやすい場所を、魔王はスルーしたの?」


 フェリシアが、身体を震わせながら聞いてきた。


「魔王も、恐れているのです。彼の本性は、かなりの冒険野郎です。とはいえリスクジャンキーでは、魔王なんて務まりませんから」


 サピィいわく、「配下のことを考えて、ここには来なかったのでは」、とのことだ。


「またこの手の扉は、正確な手順をふまなければ、目的地にたどり着けない構造になっています。その手順がわからない以上、深入りはできないと思ったのでしょう」


「だといいが」


「……そこなのです」


 サピィも、弱音を吐く。


「最悪なのは、グスターヴォ・ダミアーニがクリム氏の言動などすべてお見通しで、我々にここを開けさせることが目的だったことなのです」


「その心配はない」


 暗闇から、声がした。


「あなたは、ジェンマ!?」


 現れたのは、ジェンマ・ダミアーニである。魔王の娘だ。

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