再会と瞬殺

 虚弱公きょじゃくこうスケルトンキングが、俺たちに突撃しようとする。


「来るぞ!」


「あ、来てや――」


 一瞬で、スケルトンがこめかみを撃ち抜かれた。


「あ、あれ。ボクちゃん、大量虐殺の大活躍をするはずだったのに……」


 ヒザから崩れ落ちて、スケルトンキングは絶命する。


「なんとも、仮にも魔王である虚弱公を、たった一撃で」


 シーデーのような歴戦の猛者でさえ、ため息しか出てこない。


「ランバート、この弾痕は!」


 サピィが、スケルトンを撃ち抜いた銃撃の跡を指差す。


「ああ、ドローンを破壊した軌跡とそっくりだろ?」


【カオスブレイカー】、金属製ではない魔力弾を撃って確実に相手を絶命させる、ハンドキャノンだ。俺のよく知っている人物が所持している、レジェンダリアイテムである。


「ですが、弾丸が横から来ました。まるでUターンしたような」

「それがカオスブレイカーの恐ろしいところだ。意志の力で、光弾の軌道を変化させられる」


 俺もリックも、「ハンターに裏切り者がいる」と嘘の情報を流して、クリムがやったことを言及しなかった。クリムの手の内を明かすことになるから。


 味方であっても、クリムの存在を知られるワケにはいかない。誰が聞いているかわからない以上は。


「クリム!」


 装備品は多少なりと変わっているが、間違いなくクリムその人が目の前に立っていた。


「久しぶりだな、ランバート」


「今までどこに」


「詳しい話は後だ。お前に話しておきたいことが――伏せろ!」


 俺は、クリムに突き飛ばされた。


 同時に、クリムが天使の羽に襲われる。


「く! またか!」


 クリムが、ハンドキャノンで天使の羽根型自律兵器を撃ち落とす。


 羽根型の兵器を撃ってきたのは、やはりゾーイだ。


「やはり、お友達だちをかばったわね」


 ゾーイは、遊びが一切ない攻撃を俺たちに仕掛けてくる。


「まてゾーイ・ディロン! 話をさせてくれ!」


「聴取はこちらで取るわ! こいつを死体にしてから、いつでも再会させてあげる!」


 やはり、初めから殺すつもりだったか。


「【光の壁】!」


 サピィが俺たちとクリム、ゾーイを、光る障壁で遮った。


「どうしてルダニムを襲った!?」


「女王が……つまり、あの女の母親が、オミナスに汚染された。教えてくれたのが、彼女だ」


 クリムのパートナーであるジェンマ・ダミアーニは、ひとり残ってゾーイと戦っている。サピィが壁を作る準備をさせるためだろう。


 魔王の娘相手に、ゾーイは押していた。「神の子」の名は、伊達ではない。堕天使さえ撃退するのだから。


「助けないと。彼女がいなければ、オレたちはファウストゥスの元にたどり着けない!」


「では、わたしが行きます!」


 サピィはダメだ。光の壁を維持しなくては。


「俺が行く。お前たちは待ってろ」


「オレはジェンマのパートナーだ。行かないと」


「お前が行けば、ジェンマのやったことがムダになる! 俺がやる」


 サピィに、壁を一瞬だけ解除してもらった。

「久しいな。いつぞやは感謝する」


「礼には及ばない。俺はお前を、一度殺した」


「殺されなければ、ワタシは本当に死んでいた。体を乗っ取られたまま、オミナスに一太刀も浴びせずに」


 俺は、ジェンマと横に並ぶ。


「だめだ。お前たちだけではゾーイを説得できない」


「クリム!?」


 俺の横に、クリムが。

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