敵アジトへの道

 リックが提供してくれた写真は、クリムがジェンマ・ダミアーニに肩を借りながら、龍の背骨を進んでいる写真だった。


「オレも驚いたぜ。あの女、生きていたんだな」


 リックも、ジェンマと仲間だったことがある。俺の代わりとしてクリムのパーティに加わったから。


「どうして、クリム・エアハートがジェンマと!?」


 サピィが聞いても、リックは「わからん」とつぶやく。


「そこから、足取りが途絶えた。クリムか女の方が、追跡ドローンを破壊したんだ」


 クリムたちが向かっている方角は、険しい山だという。

 とても人が隠れられる場所がない。


「ダンジョンに隠れたようなんだが、どこにも見当たらねえ」


 追いかけようとしたが、道中で魔物に武器を破壊されたという。


「銃を見せな」


 慣れた手付きで、コナツは銃を確かめた。ハンターを追い払った銃ではない。

 リックが本来持っている、ソードオフだ。しかし、銃身は真っ二つになっている。


「派手にぶっ壊されたな。誰にやられた?」


「こいつだ」


 なんとリックも、俺と同じくフォート族を倒していた。リックの倒したフォート族は、やせ細っていて腕がカマキリのような姿だ。


「こちらも、頼めるか?」


 俺は【墓穴】の死骸を、コナツの前に差し出す。


「ふへえ。フォート族が敵になったことはあったが、こんな大物は知らねえな」


 フォート族の残骸を見て、コナツが舌を巻く。


「やっつけたまではよかったが、メインの武器がイカれちまった」


 リックはクリムを追跡しようにも、さっきのカマキリ型フォート族に銃を壊されたという。


「じゃあ、さっきハンターたちに突きつけたのは?」


「トレハンの際に拾ったレア銃だ。愛銃じゃねえ」


 武器の修理を頼みに、コナツの工房を訪ねたのか。


「こいつらの死体はダフネちゃんと一緒に、なにかで活用できないか考えておく」


 店番をしていたダフネちゃんが、リックにあいさつをした。フォート族の残骸を、店の奥へと運んでいく。


 久々にコナツと夕食を終えた後、俺たちはルダニムに戻ってきた。


「とにかくランバート、状況がわかったら知らせてくれ」


「わかった。何かあったら連絡する」


「頼む」


 俺たちは、ルダニムに戻る。


 去り際に、リックは「ランバート」と声をかけてきた。


「これだけは覚えておいてくれ。クリムは、ヒューコを救ってくれた恩人だ。エトムントだって、あいつを悪いようにはしない。オレがさせない」


 リックが、自分の胸を強く叩く。


「わかっている。ありがとうリック」


 情報共有の約束を交わし、リックと別れた。武器が修理され次第、彼も動くだろう。その時間は長くない。


「あたしらは、することはないか?」


 トウコが俺に聞いてきた。


χカイのアジトに繋がる、道を探すぞ」


 翌日、引き続き街周辺のモンスターを狩る。


 ルダニムでシーデーと合流し、再度パーティに加えた。


「いやはや。やはり我は、戦闘のほうが性に合っていますわい」


 シーデーが、指マシンガンで機動コウモリを撃ち落とす。


「といっても、今回の狩りは目的が違うのでしたな? ランバート殿」


「ああ。クリムの足取りを追う。お前さんのデッカー能力も必要だ」


 クリムが龍の背骨に入ったなら、この地がχのアジトに繋がっている可能性が高い。


 とはいえシーデーのドローンを借りても、手がかりは全くつかめなかった。


「あたしに任せてくれるか?」


 召還獣【ユキオ】の上から、トウコがクリムのアイテムを要求してきた。見た目はサモエド犬だが、サイズは馬ほどに大きい。


「ほらほら、ユキオ」


 トウコはユキオに、俺が渡したペンダントの匂いを嗅がせた。


 クンクンと、ユキオが地面に鼻をつけて辺りを探し出す。


「アウアウ!」


 ユキオが示したのは、ひび割れた地面だ。


「これは、あなたが倒した【墓穴】が作った穴ですね」


 χの刺客【墓穴】が、サンドワームで地面を掘り起こした跡である。


 どうもユキオは、この穴を辿って行けと言っているようだ。

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