魔物の襲撃

「なるほど。あのフォート族がχカイの工作員だとすると、この穴もアジトに通じているわけですな」


 シーデーが、分析をする。


 おそらくクリムも、χの刺客と戦闘になったのだろう。俺たちと同じ答えにたどり着き、χの来た先を辿ったに違いない。


 目的地が同じなら、この道を辿ればクリムとも合流できる。


 シーデーが地面をコンと叩くと、道が崩れて洞穴が現れた。天井が高く、人が入っても余裕がある。


「よし。追跡しよう」


「しかし、ランバート殿。倒壊の危機がありますぞ」


 地下に大きく空いた穴を、シーデーが示す。


 軽く小突いただけで、地面に穴が空いたのだ。丈夫ではないだろう。


「ひび割れた道を辿っていけば、いいんじゃないか?」


「なるほど。それで参りましょうぞ」


 シーデーが追跡用ドローンを飛ばす。


「このドローンに、道案内をさせましょうぞ。では――」


 出発しようとしたら、端末から通信が。ギルドから緊急の依頼だ。


「どうした?」


「モンスターがルダニムの街を襲っています! ハンターが出払っていて、ギルドの職員だけで対処に追われています! 近場のハンターは、戻って討伐を願います!」


 キンバリーから、通信が入った。


「まずいな」


「ドローンだけを先に行かせて、我々は街の防衛にあたりましょう」


 サピィが提案する。


「そうした方がいい。戻るぞ」


 ハンターたちに、先を越される危険があった。しかし、魔物どもを放っておくわけにも行かない。街を破壊されては、クリムを見つけても連れ戻す手立てを失ってしまう。


 急いで、ルダニムまで戻った。


「魔物を街へ近づけさせるな!」


 リックが先頭に立って、街を防衛していた。一人でよく持ちこたえたものだ。さすが腕利きのハンターである。


 しかし、四方から襲ってくる魔物たちには対応できない。


「そっちは任せたぞ、リック!」


「ランバート! よく来た! 盛大にやろうぜ!」


「おう。おらああああ!」


 魔物の群れに向けて【ディメンション・セイバー】を打ち込む。


「おら、おら、おら!」


 サピィの運転するバイクを降りて、刀で魔物たちを斬り続けた。


 フェリシアとトウコ、には、負傷者の護衛と治癒を頼む。


 バイク形態から戻ったシーデーが、指マシンガンでザコ掃討を担当した。


 俺も追随する。


 だが刀が、クモの糸のような集合体に阻まれた。


「なるほど。やる奴がいるって聞いていたけど、本当のようね」


 妖艶な女性型のフォート族が、俺の刀を長い髪で握り込んだのである。


「すごい剣。壊す勢いで掴んでいるのに、ヒビ一つはいらないなんて」


「おらあ!」


 俺は隠し剣【黒曜顎コクヨウガク】を抜き、【ディメンション・クロー】でリーチを伸ばす。


 しかし、相手も俺の行動を読んでいた。とっさに離れる。


「その技は、部下との戦いで見たよ。【秘宝殺しレア・ブレイク】のおサムライさん。アタシは【死神】のファルチェ! χで作られたフォート族どものリーダーさ!」


 コイツは、【墓穴】より強いというのか。


「殴りウィザードと呼んでもらえるかな?」


「その姿で、ウィザードだなんてね。部下どもに様子見をさせていたけど、どうやらアタシ自ら出ないとダメだったようね。基地ごと来ちゃった」


 ドドオ……と地鳴りが響く。


「あれはなんだ!?」


 北西の方角を指して、リックが茫然となっている。


 タイヤの付いた大型船のような要塞が、こちらに迫っていた。


「この移動要塞で、この街ごと潰してやるよ!」


 ルダニムの街よりデカい。あんなものが街に入ったら、すべてが破壊されてしまう。


「【インフェルノ】!」


 巨大移動要塞の進行方向へ、サピィが炎系特大魔法を放つ。

 要塞が、軌道を変える。街へ入ってこない。


 シーデーの変形したバイクを駆りながら、サピィが要塞に近づく。


「チッ! 魔王の小娘が!」


【死神】のファルチェが、要塞に戻っていく。


「シーデー。迎え撃ちなさい!」

「承知!」


 サピィがシーデーに指示を出す。


 サイドカーが外れ、飛行自律兵器となってサピィを援護する。


 銃撃で牽制をかけて、サピィは死神を寄せ付けない。


 硬い装甲のせいで、ファルチェは銃弾を浴びても倒れなかった。しかし、要塞に近づけない。


「ランバート! わたしがあの要塞を止めます! あなたは、フォート族の足止めをお願いします!」


 シーデーのバイクによって、サピィは要塞の壁をよじ登っていく。


「させるか! 撃ち落とせ!」


 反撃しに来たクモ型の移動砲台を、サピィは稲妻の範囲攻撃で撃ち落としていった。


 クモやサソリの形をした移動砲台が、なおもサピィの行く手を阻む。


「リック!」

「おうよ! 銃は治ったぜ」


 リックが銃を見せる。ソードオフと、レジェンダリのハンドキャノンだ。


「おらおらぁ!」


 俺たちで、サピィをサポートする。


 クモが一発砲撃をするより、リックがリロードする方が早い。さすが一流のハンターだ。


 とはいえ、レアアイテムは落とさない。


「すまん。俺がいてはヤツを倒したところで、レアアイテムは出ないと思う」

「もう何も言わん。やっちまえ!」


 ウィザードとガンスリンガーによる、コンビの復活だ。

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