ポータル増設と、友人との再会
ヒルデ王女は、転送ポータルを増やせばいいとアイデアを出す。
「そんなこと、できるのか?」
「できますとも」
俺たちが知らないだけで、資材運搬用の転送ポータルなどは存在するらしい。
「ポータルを優先的に破壊していたと、ギルドの方々から聞きました。ルダニムは黄金の取れる街として、栄えていたそうですわ。そんな街を壊滅させるなんて」
あらためて、
「必要な魔法石などは、こちらでご用意しましょう」
「いや。いいんだ。フィーンド・ジュエルで代用できるとわかった」
「まあ! すばらしいですわ。ジュエルの可能性は、そんな領域にまで」
俺自身、ジュエルが公的に役立つとわかってうれしく思っていた。
フィーンド・ジュエルによるポータル増設により、作業は三〇倍にまで進んだ。
なにより、街の建築・装備品の資材を【龍の背骨】から直接集めているのがデカい。
各国のハンターも、集まってきた。彼らにとっても、いい狩り場となっているようである。
街の安全は、ハンターたちに任せていいだろう。
とはいえ、安心もできない。
「ストップストップ! ああ~っ」
アイレーナのハンターギルドに所属するキンバリーが、ポータルで発生した事故の処理に追われている。
「どうしたんだ、キンバリー?」
「ペールディネの作業員が資材を運搬していたんですが、見てください」
キンバリーが示す先には、運搬用ポータルという大型の転送装置が。資材や車両など、大型の物体を移動させるのに使うポータルだ。装置自体も簡素化していて、魔方陣しか置いていない。現在、五基ほど稼働している。
「どうして、送られてきた鉄骨が欠けているんだ?」
「サイズオーバーですよ」
ペールディネはインフラ設備のために、ルダニム東部を流れる川に橋を作ろうとしていた。が、資材が転送ポータルから出っ張っていることを知らず、そのまま送ってしまったのだという。
「作業員さんたちの責任ですからね! 我々は関与しませんので!」
キンバリーが、ペールディネの作業員を叱り飛ばす。
「新人の作業員で、慣れていないみたいなんですよ」
「大変だな」
「ホントですよ! まったく、ハンターギルドがどうしてインフラの管理なんか」
プリプリ怒りながらも、キンバリーは楽しそうに作業していた。
かといって、キンバリー及びギルドは今回、味方ともいい切れない。
ルダニムの街が発展していくのは、クリム包囲網が着々と進んでいることと同じだ。
ハンターがルダニム及び龍の背骨に集結している理由は、クリムに懸賞金がかけられているからでもある。
ルダニムに新設されたギルドでも、俺たちは数名に声をかけられた。
「クリムの居所に関して知らないか?」
友人だったんだから、知っているはずだと。
「俺は、クリムのパーティから追放された身だ。知らん」
無視をした。
「待てよ」
ハンターに、俺は肩を掴まれる。
「元パーティメンバーだったからって、抜け駆けするんじゃねえよ」
「死にたくなかったら、その手を離せ」
「へっ! こいつ、オレたちに勝てる気でいやがるぜ!」
「違う。後ろだ」
ハンターたちが振り返ると、黒金に光るソードオフ・ショットガンが、彼らの頭を狙っていた。
「自分に銃口を向けられているのもわからずに、よくそんなでかい口を叩けるな、おい」
「リック・ロードストリングス……」
ソードオフの使い手に恐れをなし、俺に因縁をつけてきたハンターたちが一目散に逃げていく。
「あんな奴らなら、この一帯に棲む魔物たちにさえ食われちまうだろうな」
リックが、ソードオフを肩に担いだ。
「よお。ランバート」
「久しぶりだな、リック」
「まだ、ちょっとの間だぜ」
俺は、リックと抱き合う。
「ハンターたちの周りだと、リックの方が恐れられているようだ」
「ああ。【
秘宝殺しという使い手は存在するが、正体が俺であることは各国で伏せられている。
リックと俺がつながっていると知れば、俺たちに関わろうとはしないだろう。
「どうしたんだ?」
「お前らの様子を見に来た。それと、オレもクリム確保のチームに」
「ヒューコ国の指示か?」
「オレは、ヒューコお抱えのハンターだからな。宮仕えは辛いんだよ」
リックが、おどけた。
「心配していないよ。お前のボスは、エトムント王だろ?」
エトムント王は、かつて俺たちと一緒に戦ってくれたメンバーの一人だ。クリムのことも、わかってくれるはずである。
「オレたちが先に見つけ出したら、穏便に済ませてくれるだろうが」
フェリシアの親戚がいるペールディネとエルトリ、仲間たちが管理しているサドラーとヒューコ国であれば、こちらの事情も汲んでくれよう。しかし、他の国はそうはいかない。
特にアイレーナは、クリムの故郷であるが、ギルドと親しいわけじゃない。
悪質なハンターを出し抜くためにも、クリムを真っ先に見つけ出さないと。
「ルーオンとコネーホは?」
「置いてきた。あいつらにクリムは倒せねえ。人質にされたら、それこそ厄介だ」
で、と、リックが話を続けた。
「クリムの目撃情報が出た」
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