ルダニムの街の再興

 みんなのいる場所へ戻って、作業を再開することにした。


「さあ、準備をしよう」


 俺たちがやるのは、街の機能を再生させることだ。付近の魔物を蹴散らし、街に人を呼び戻すのである。


 もっとも重要なのは、このエリアに転送ポータルを設置することだ。


 ポータルを作り、この場所を【龍の背骨】攻略の拠点とする。


「やはり、壊れていますね」


 ギルド隊員のリーダーであるキンバリーが、他の隊員と話し合う。


「ここって、ルダニムでしょ? 古代兵器で守られた、世界最強の要塞都市だったっていう。簡単に魔物に負けるとは思えないのですが」


「魔物が相手なら、後れを取ることはなかったでしょうね」


 そう話すキンバリーには、想像できるようだ。


 この街は、別の勢力によって滅ぼされたのだと。


「プラン通り、一から作り直します」


 キンバリーが、指示を出した。急ピッチで、ギルドの隊員がポータルを作っていく。


「おらあああ!」


 機械でできたクモ型の魔物を、俺は切り裂いた。


 俺たちは総出で、廃墟周りの魔物を掃討している。


「他に、χカイの工作員が潜んでいそうな気配は?」


「ないぞ!」


 俺はトウコと、北東方面から扇状に回って魔物の殲滅にあたった。南西方面は、フェリシアとサピィに頼んだ。


 物理攻撃担当と、魔法攻撃担当は分けた方がいいと、サピィが提案してきたのだ。


【災厄の塔】でジュエル回収だった班は、ルダニム跡地の護衛を任せた。


「おらああ!」


 機械仕掛けのサソリモンスターを相手にして、縫い目の部分に刀の刃を滑らせる。


 トウコもバトルロッドの先に付いた球体でサソリのハサミを無力化し、蹴りで頭を粉砕した。


「これ全部、大戦で使われたロボットか?」


 サソリの腕をひっつかんで、トウコが持ち上げる。


「そうかもな」


 想像していた以上に、機械仕掛けの魔物が多い。昔の大戦の名残か。


 ともあれ、大ボスを倒したおかげか、大した敵は出てこない。


「ジュエルも大量に取れたが、使い道がなあ」


 どれだけフィーンドジュエルを獲得しても、コナツがいなければ武器に加工できない。


「もう武器型のジュエルって、出ないのか?」


「こんなのが、手に入ったな」


 機械型の魔物を倒して手に入れたジュエルだ。宝石というより鉱石のようで、フヨフヨと宙に浮いている。サピィに見てもらったほうがいいかな。


 ジュエルの他に、モンスターの残骸や道具で使えそうなパーツなどを持ち帰る。


 数日かけて、ポータルの修理が完了した。


 付近の安全も、確保できただろう。


 あとは、魔力供給源をどうするかである。しかし、ここにはまともな魔力の動きがないらしい。これではポータルが機能しないだろうとのこと。


「なあサピィ、これって使えないか?」


 魔物討伐で手に入れたジュエルを、サピィに見せる。


「ジルコンですね。これは、攻撃や守備など、戦闘用の魔法アイテムとしては使えません。しかし、魔力を蓄積させる貯蔵庫としては役に立ちますよ」


 そんな機能まで備わっているタイプもあるのか、ジュエルって。


「ランバート、そのフィーンド・ジュエルを使えませんでしょうか」


「ジルコンを、か?」


「はい。これなら、ポータルに使う魔力を貯蔵できますよ」


 サピィは、転送ポータルにもジュエルが使えないかと考えていた。


「たしかに。今ジュエルを温存しても、宝の持ち腐れだな」


 ポータルが使えない今は、コナツの鍛冶屋にジュエルを卸していない。ここで使ってしまってもいいだろう。


 コナツの店に安定供給させるための、これは貴重な出費だ。


「エンチャント!」


 俺は、手持ちのジュエル全てに、エンチャントを施した。


 ポータルの重要箇所に、ジュエルを設置する。


「おお。すばらしい安定感! これなら、十分機能します」


 キンバリーからも、お墨付きをいただく。


 起動テストを行うと、問題なく転送が可能になった。


 第一段階、クリアだ。



 再びザコ狩りに向かうと、すでにハントが終わっていた。


 例の、ベリーショートヘアの女性たちがやったようである。名は確か、ゾーイだったか。


「転送ポータルを直したハンターがいると聞いたわ? あなたかしら?」


「そうだ」


「たしか、ランバート・ペイジだったわね? かなりの戦績を持っているようだけど」


「お前たちにまで、聞き及んでいるのか」


「ワタシは、ゾーイ・ディロン。セイクリッド族よ。といっても、知らないでしょうけど」


 会話の内容は普通だが、相変わらず語気が威圧的だ。


「クリム・エアハートの追跡について、有力な情報をありがとう」


 俺はアイレーナに、クリムの向かったであろう先について情報を出した。ヘタに隠せば、かえって怪しまれるからである。


「やはり、あの母娘はなにかを隠していたのかしら?」


「グレースたちは、なにも知らなかったよ。俺たちが調べたら、ここの情報が出てきたくらいだからな」


「そう。でも覚えていてちょうだい。クリム・エアハートはχカイと繋がっている可能性が高いわ。再会しても安心しないことね」


「心得ているよ」


 ゾーイは「フン」と冷笑して、その場を去った。


「なんだあの女! ケンカ売ってきたぞ!」


「まてよ、トウコ。修行僧系のジョブじゃないか」


「でも仲間をコケにされたら、許せんぞ」


「その怒りは、χとの戦いにとっておけ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る