旧戦場跡地を抜けろ

 ヒューコから南へ一週間かけて、【龍の背骨】へ向かう。近隣の街まで転送ポータルがない。乗り物で、果てしない荒野を進んでいた。


 機械人【フォート族】のシーデーが変形したバイクで、俺たちは進む。運転はサピィだ。俺はサイドカーに乗っている。俺は交代要員ではあるのだが、サピィは自分で運転をしたがるのだ。


「ランバート、見ろ! むき出しになった機械が、いっぱい突き出ているんだぞ!」


 俺たちの後ろには、召還獣「ユキオ」に乗ったトウコが。大型のサモエドに乗りながら、トウコが荒野の様子を見回した。


「ここは、旧戦場跡よ」


 炎をまとう召喚馬に乗ったフェリシアが続く。


「今での命知らずのハンターが、この地に眠る古代パーツを集めて回っているわ」


 だが、生きて帰ってきたハンターはほとんどいない。


「すまないなゼン。道案内を頼んでしまって」


「構わぬ。【災厄の塔】では、たっぷりと儲けさせてもらった。配下たちからも、よろしくと伝えてほしいと頼まれた」


 ヴァイパー族のゼンが、龍の背骨までのナビゲートを引き受けてくれた。彼女も、自分の専用バイクで先頭を走っている。


 最後尾には、アイレーナからのギルド隊員を乗せたトラックがある。運転しているのは、ネコ獣人族の盗賊ミューエと、ドワーフのメグだ。


「ランバート、前方から敵の反応です」


 斜め前方から、超大型のムカデ型のモンスターが襲ってきた。


「なんでデカいモンスターだ」


「旧世代の魔物ですな」


 当時を懐かしむように、シーデーがしみじみと語る。さすが元古代兵器だな。


 機動オオカマキリなんて、他のダンジョンならボスクラスの敵だ。そんな相手が、五体も。全長一〇メートルを越えて、銃弾より早い動きで攻撃してくる。


 シーデーを操りながら、サピィはカマキリのカマを避け続ける。


 俺はサイドカーの上に乗り、刀を構えた。二振りある刀のうち、白い鞘に入った【イチモンジ】を手に取る。


「おらああ! 【ディメンション・セイバー】!」


 抜刀とともに、俺は刀から衝撃波を出した。巨大な昆虫型モンスターの、足を切り裂いていく。


 道を塞いでいたオオカマキリが、転倒した。


 バイクのライト代わりになっていたシーデーの頭に、サピィが魔力を流し込む。


「【破壊光線デトネーション】!」


 サピィが、オレンジ色の光線をシーデーの目から撃ち出した。オオカマキリを鉄加工の要領で切り刻む。


 続けざまに衝撃波を放ち、俺は他の二体を身動き取れなくした。


「食らいなさい!」


 一体をフェリシアがヤリで刺し貫く。


「うおおお!」


 もう一体は、トウコが球状のバトルハンマーで叩き潰した。


「おらああ!」


 残りの二体は、俺が直接手を下す。


 ここまで来ると、敵の強さは未知数である。


 とはいえ、俺たちも強くなっていた。


 敵の残骸や、ドロップアイテムを確認する。


 フィーンド・ジュエルは、相変わらず普通に落ちるようだ。やはり、俺が拾うものは光っている。俺が倒せば、敵は一段回上の逸品を落とすらしい。その恩恵は、今でも健在のようだな。


「ラムブレヒトが使っていた翼のパーツに、よく似ているな」


「古代技術を流用したのでしょうな」


 自分の体の一部をドローンとして飛ばして、シーデーが敵のパーツを回収していった。


「大丈夫ですか、ランバート、体力がかなり持っていかれたのでは?」


「心配ないさ、サピィ」


 俺は、【イチモンジ】をしまう。


「コナツが武器を整備してくれたおかげで、あんな強敵さえ退けられる」


 あれからコナツは、息を吹き返したかのように働いた。黒い【黒曜顎コクヨウガク】も白い【イチモンジ】も、ちゃんと整備されている。


 俺は二振りの刀を持っているが、鞘は一本しかない。


「この先に街がある。ここで、ポータルを登録しよう。もっとも、街が機能しているとは限らんが」


 だが、立ち寄った街は廃墟となっていた。


「誰もいないぞ」


 トウコが旧酒場に入った瞬間である。地震が起きた。


 地面が盛り上がり、慌ててトウコも店から出てくる。


 調子ハズレのラッパのような鳴き声を上げながら、モンスターが姿を表した。


「サンドワーム!」


 ドリル掘削機のような口をした魔物、サンドワームが。

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