旧友はどこへ?

「あれは、フォート族か?」


「いえ。違います。よく似てますが、あちらは生身のようです」


 サピィぃによると、「シーデーも同じことを言うだろう」とのこと。 


「あら、ランバート?」


 店じまいなのだろう。グレースは看板を片付けていた。


「なんだ今のは?」


「ハンターギルドの、もっと上の存在だって」


 そんな組織があったのか。


「何度も悪い、グレース。おばさんと話せるか?」


「なにか、わかったの?」


「だいたいは。クリムが、お前たち家族と血がつながっていないこととか」


「どういうこと!?」


 グレースの顔に、血の気が引く。


「それを聞きたいんですよね?」


 激しくグレースは動揺したが、グレースの夫が肩を抑えた。


「わかったわ」


 おかげで、グレースは冷静になる。


 おばさんと話をした。


「クリムは、あたしが身ごもっているときに拾ってきた子だよ。二人も子どもができて大変だよって、あたしは言ったんだけどね。あの人は、今更ガキがもう一人増えてもいいだろって」


 ほうっておけなかったのだろう、とおばさんは語る。


「あの人の性格じゃなかったら、クリムもグレースも育てられなかった。しょうもない事故で亡くなるまで、あの人はあんたらの父親でいてくれた。クリムも、グレースを本当の妹のようにかわいがってくれたよ」


 グレースが、涙ぐむ。


「クリムの本当の父親って、誰かわかるか?」


 俺が聞くと、おばさんは首を振った。


「手がかりになる情報も、持ってなかったね。自分の故郷とは、すっかり縁を切っちまったみたいでさ」


「連絡もなしか?」


「ああ。きっと、あたしらに迷惑をかけられないと思ったんだろうね」


 そうか。あいつらしい。


「クリムのオヤジさんの形見は、銃しかないか?」


「いや。もうちょっとあったと思うよ。待ってな」


 ベッドから腰を上げて、おばさんが小箱を持ってくる。


 テーブルの上で、俺たちは箱を開けた。


 奇妙な形のネックレスが、中に入っている。


「これは?」


 小さいネックレスを、俺は手にした。


「わからないよ。ただあの子の持っていたものは、これだけだったそうだよ」


 ロケットのようだが、中身を開ける手段がなかったという。


「取手はありますが、特殊な細工が施されています」


 これは、ただのネックレスではないかもと、サピィは分析したようだ。


「おばさん、これを借りていく。クリムを見つけたら、返すつもりだ」


「頼むよ。クリムは悪い子じゃない」


「それは、俺が一番知っているさ」


 俺は、おばさんを休ませる。


「本当の兄じゃなくても、クリムはあたしの兄よ。ランバート、クリムを助けてあげて」


「わかった」


 クリムのネックレスを手がかりとして、コナツの鍛冶屋へ帰ってきた。


「マギマンサーの処置をすれば、もしかしたら」

「やってくれるか?」

「ええ。ランバート、もう一度、手を貸してください」


 俺は、サピィの手を取る。


 サピィがマギマンサーの力を発動させた瞬間、幼少期のクリムが姿を表した。


 クリムは、鉄パイプでできたロボットのような細身の男性と一緒にいる。どこか山脈を歩いているようだ。


「どこだ、ここは?」


「このポイントは……【龍の背骨】です!」


 まさか。龍の背骨は、【災厄の塔】の素材として使われているはずだ。


「あれはまだ、ほんの一部に過ぎません。【龍の背骨】とは、もっと壮大な山脈群なのです。塔に使われている石や鉄なんて、龍にしてはまだ小さい方ですよ」


 塔を一つ建てるだけの素材が、まだ小さい龍程度だとは。


 とにかく、龍の背骨に行けば、クリムがいるかもしれない。それがわかっただけでも。


「それよりわたしは、クリム氏の隣に立っている男性が気になります」


「何者だ?」


「錬金術師ファウストゥス。オミナスの作成責任者です」


 クリムを連れているのは、人間の魔王だという。

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