新たなジュエルの解説

「皆の者、私に続け!」


 エトムントが、背後にいる無数の兵士たちに号令をかける。


 兵隊たちが、闇のハンターたちと交戦になった。堕天使たちとも。


「リック……」


 俺が声をかけると、リックがこちらを向く。


「目が治ったんでな。仲間が戦っているんだ。寝てばかりはいられない」


 診療所にエトムントが来て、共に戦ってくれるように説得しに来たらしい。


 ハイエルフのルエ・ゾンは、瀕死のルーオンの側に寄って治癒した。俺たちより数倍も魔力効果の高いパワーで、ルーオンを一瞬で治す。


「ルーオン! よかった。無事だった!」


 治癒魔法でヘトヘトになりながら、コネーホがルーオンを抱きしめた。


「コネーホ、痛いっての」

「ごめんなさい。でも」

「オレはもう大丈夫だから」


 ルーオンは、コネーホをかばうように立ち上がる。


「ありがとう、ルエ・ゾン」

「うむ。行くがよい戦士よ」


 ルエ・ゾンに見送られ、ルーオンとコネーホはリックと向き合う。


「すまん、ルエ・ゾン。行くぞルーオン!」


 父代わりの男とともに、二人の若きハンターは戦場へ。


「俺からも礼を言う、ルエ・ゾン」

「よいのだランバート。オレサマはずっと、この塔から逃げてきた。今こそ向き合うとき。なあ、ダフネちゃん」


 ルエ・ゾンの後ろには、ノームのダフネちゃんが隠れていた。認識阻害のローブをまとって、存在を隠していたのである。


「そうなのです。ランバート、ジュエルを見せるです」


 俺は、ラムブレヒトから手に入れたオレンジ色のジュエルを、ダフネちゃんに渡す。


「これはアンバー。コハクです。効果は【分析】です。相手の弱点を見つける効果があるです」


 ドラゴンと戦ったときの用途は、どうやら正しかったらしい。


「それは便利だな。しかし、持ちながら戦うのが不便だ」

「こうすればいいです」


 ダフネちゃんが、コハクを平たく加工した。耳からかけて着脱可能なモノクルに。ダフネちゃんは、ジュエルの形状を変えられる唯一の存在だ。


 続いて、ブラックドラゴンの体内から出てきたジュエルを差し出す。


「これは……トルマリンなのです。こんな純度の高いジュエル、初めて見たです」

「効果は?」

「【修復】なのです。武装が壊れにくくなるです。壊れても、再生するです。アーマー向きなのです」


 ベルトのスロットを追加して、トルマリンのジュエルをはめ込む。


「感謝する。俺だけだと、使い道がわからんからな」

「いいです。それより、なぜか新しいジュエルが続々とできているです。ジュエル表は、作り直したほうがいいかもです」


 それは、俺も思っていた。なにか理由があるのだろうか。


 サピィやダフネちゃんクラスなら、新しいジュエルでも鑑定はできるが。


「わかった。今後は考えておく。じゃあ、行ってくる」

「気をつけるです」


 ダフネちゃんに別れを告げ、俺はサピィのいる柱の上へと向かう。


 柱には特殊なGがかかっていて、駆け上がっても落ちる心配がない。


「どけおらあああ!」


 堕天使の攻撃は激しいものの、パワーアップした武器で切り捨てていく。


 ディメンション・セイバーの負担が、軽くなった気がする。コナツの改造がいいのか、マガタマジュエルのおかげか。


 このモノクルは便利だ。敵の弱点だけではなく、どのルートが手薄かといった突破口まで示してくれる。


 だが、後ろから嫌な気配が。


「なんだっ!?」


 背後から、弓矢や銃弾がとんできた。


 しかし、その銃弾の雨が止む。


 アフロヘアのドリアードが、俺を狙うハンターを撃退してくれたのだ。ルエ・ゾンはラボの門番まで借り出してきたようだ。


「オイラたちがいるのを、忘れているな!」


 ビョルンやリュボフも、攻撃の手を緩めない。


「ここは、俺が引き付ける。お前たち二人は、サピィを援護してくれ」

「わかったわランバート。頼むわよ!」


 二人を先に行かせて、俺は堕天使たちを引き受ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る