最強の助っ人

「なんだ? ランバート、タワーの様子が妙だぜ!」


 空を見上げながら、ビョルンがこちらに向かって叫んだ。


 ビョルンとリュボフは、五層のペトロネラに通じるタワーを駆け上っている。タワーと言っても、実体はただの柱だ。この石でできた柱は、独自に重力が働いているらしい。おかげで地面と垂直に伸びていても、まっすぐ走ることができる。


 リュボフとビョルンには、サピィを援護してもらうためにタワー頂上を目指していた。


 その頂上が、青黒い光に包まれている。


 ドン……と、重苦しい妖気が漂ってきた。


「なにか、とんでもない奴が来る」


 俺は、武器を構え直す。


 剣の翼を携えた、女型の堕天使が現れた。

 巨大な堕天使は、全身を剣の翼で覆っている。


「くそおおお!」


 兵士たちが、銃で剣の堕天使に銃を撃ち込む。


 だが、銃弾はすべて弾かれてしまう。


「これならどう?」


 フェリシアが、【福音ゴッド・ノイズ】に魔力を吹き込んだ。大型の光弾を、堕天使に放つ。


 堕天使の剣が、すべて粉々になった。


 それでも、剣の堕天使には傷一つつかない。しかも、敵の武器がすべて復元してしまった。


 武器の破片が、こちらに降り注ぐ。


「ダメです。ピンポイントで弱点にダメージを与えねば」


 破片を撃ち落としながら、シーデーが分析をする。


 俺も弱点を見破るジュエルで、堕天使の様子を確認した。


 たしかに、額の目を潰せばこの敵は倒せそうである。


 とはいえ、突破するには武器を壊さねば。たとえ武器を吹き飛ばしたとしても、一瞬で再生してしまうそうだ。


 およそ三分の一を防ぐことはできた。しかし、メグたちが大ダメージを受ける。


 ルーオンも、コネーホを守るために深手を負ってしまった。


「コネーホは無事だな!」

「ええ。なんとか。でもルーオンが」


 武装である着ぐるみに備わった【ギャグ補正】というスキルのおかげで、コネーホは無傷出ある。ルーオンが致命傷を避けているのも、このスキルのおかげだろう。


 かなりまずい状況になった。みんなを守りながら、サピィまで救えるだろうか。


 剣の堕天使が現れたせいで、形成は一気に不利に。


 このままでは、兵士たちに犠牲者が出てしまう。


「兵たちを一箇所に集めろ! トウコ、俺と一緒に回復薬に回ってくれ!」

「よっしゃ! エリアヒール!」


 広範囲の治癒魔法を、トウコが唱える。しかし、思っていた以上の効果が出ない。


「へばっているようだな!」

「ずっと戦い通しだったからな!」

「持ちこたえてくれ。なんとかする!」


 とはいえ、どうするか。【福音】も通じないとなると。


 敵のハンターたちも息を吹き返す。いや、ゾンビ化して襲いかかっているのだ。


「フェリシアはハンターのゾンビを浄化してくれ!」

「OKよ!」


 聖騎士の浄化魔法で、ゾンビのハンターたちは溶けていく。


 だが段々と、俺たちは柱のすぐ下まで追い詰められた。


 俺はヒール作業で動けない。


「あなただけでも、行きなさい!」


 フェリシアが、俺を誘導してきた。


「ダメだ。俺も残る」

「そう言っていられないわ。サピィにはあなたが必要よ」

「いや。俺はサピィを信じている」


 俺がみんなを置いて助けに行けば、そっちの方が悲しむだろう。

 そんなのを望まないのが、サピィなんだ。


「でも、このままでは心中になるわ!」

「だから、なんとかす――」


 俺が前に出ようとすると、剣の堕天使が急に動きを止めた。

 敵ハンターたちも、何事かと振り返っている。


 ハンターたちの視線の先には、ハンドキャノンを構えた男の姿が。


「お前は……リック!」


 かつての仲間であるリックが、剣の堕天使が持つ弱点を一撃で貫いたのだ。


 リックの隣には、リュボフの兄であるエトムント王子がいる。いや、先代王の跡を継いだので、今は国王か。


 その隣には、ハイエルフがいた。


「あれ、ルエ・ゾンじゃないか!?」


 トウコが、ハイエルフを差す。


 エトムントの隣りにいたのは、賢者ルエ・ゾンだった。

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