第二部 完 調印式

 サドラーのヒルデ王女とアイレーナ領主との調印式が、ペールディネにて行われた。


 ペールティネ国王監督の元、各国の代表が書面にサインをする。


 これで、正式にサドラーはペールディネの領地となり、アイレーナが姉妹都市となった。


 なお、サドラーはペールディネの土地を一部もらうことに。例の果樹園だ。ペーディネよりサドラーの方が、取引の総量が多いからである。実質ペールディネの都市よりサドラーの方が距離も近い。


 これにより、実質的にアイレーナとサドラーは地続きになった。


 俺たちは王女の護衛を任されたが、なんのトラブルも起きなかった。


 χはほぼ壊滅し、ヴァイパー族の驚異も去っている。


 あれから、ゼンとは会っていない。彼女は彼女で、自分たちの陣営を復活させるのに奔走しているのだろう。


 アイレーナはフィーンド・ジュエル製の武器を都市の警備隊に随時提供する。


 サドラーは果実のポーションと、デッカーをギルドの警備兵として派遣してくれるのだ。


 俺たちはアイレーナに戻って、装備品のチェックを行う。旅支度だ。


 シーデーも、すっかり元に戻っていた。


 コナツの子どもたちに、非武装モードのドローンを飛ばしてやって遊んでいる。


「こういうのが、我の役割になればいいのですがな」


 平和な光景を見て、シーデーが感傷に浸っていた。彼は戦闘マシーンだ。本来、コドモと遊ぶ性分ではない。しかし、今はユニークなおじさんというポジションがすっかり定着した。


「いいんじゃないかー? これからそうやって生きていけば」


 トウコが、シーデーに語りかける。


「じゃあランバート、こいつがお前さんの武器だ」


 オブシダンの刀は、コナツによって

黒曜顎こくようがく

 と命名された。ソードレイの代わりとして使う。


「黒いアゴか」

「ジュエルを吸う力もあるからな」


 サピィのブレスレットが必要なくなってしまった。


「申し訳ない。サピィ」

「よいのです。代わりに、これを」


 開いた装備枠にサピィが用意してくれたのは、魔力回復用の腕輪である。ソードレイで使っていたダイヤをありったけ仕込み、魔力を補うことにした。


「ありがとうサピィ。大事にする」

「わたしも、うれしいです」


 オレの腕にリングを通し、サピィは赤面する。


「えー、コホン。お熱いとこ悪いが、サブ武器の説明をしたい。いいかなお二人さん?」


 おっと。俺たちは離れた。


「ちなみに、イクリプスは鍛え直して、フェリシアちゃんの武器になったぜ。その名もイクリプスⅡだぜ」


 フェリシアは、グレードアップしたイクリプスを、盾とともに背負っている。片手剣と盾のスタイルから、両手持ちのイクリプスⅡに切り替えも可能だ。


「で、こっちがお前の刀な」


 コナツが俺に用意してくれたのは、白い銀製の刀だ。


「これは『イチモンジ』ってやつだ。反った刀剣ってのは難しくて、オレも慣れてないんだ。だから使い倒せ。その都度、感想をくれ。強化していくからよ」


 十分である。これなら、打ち合いにも耐えられるだろう。


「ヒューコとも商売ができたら、アイレーナはもっと発展するだろうな」

「そうなるといいな」


 現在、アイレーナは少しずつ発展しつつあった。緑も戻ってきている。やがてはジュエル装備を求めて、人も集まってくるだろう。


「そうそう、面白い情報があったぜ。なんでも、χの殲滅には、一人の女サムライが関わっていたそうだ」

「女が?」

「ああ。そいつは一瞬でχの集団を両断しちまったそうだ」


 その技なら、俺とサピィは見た記憶がある。


「ひょっとして、ジェンマが!?」


 たしかジェンマは蘇生手術を受けていると、サピィ聞いていたが。


「それはわからねえ。だが、ヒューコを通り過ぎて、まっすぐ龍の背骨へ向かったらしい」


 まさか、ここでジェンマ・ダミアーニとつながるとは。


 俺たちはまず、ヒューコで情報を集めることにした。

 

(第二部 完)

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