エルフの|賢人《ワイズマン》 ルエ・ゾン

「ランバート、この刀を鍛えろってのはナシだ。これで完璧だし、コレ以上の強化は、ジュエルを食わせないといけないんだろ? 下手に手を加えると、切れ味を損ないかねん。そもそも、本当に刀かどうかも怪しい」


 コナツはある程度まで、刀の強度を試してみた。それで、結論を出す。


「こいつで斬り合いってのは、やめたほうがいいかもな。切れ味はあると思うが、強度までは信用できない。オレ自身、ジュエルが壊れたらどうなるかの実験まではしてねえからな」

「ソード・レイと同じ使い方をした方がいいのか?」


 オレにはまだ、刃がない刀を持っている。


「だな。黒曜石に差した柄も、ソード・レイに近い性能がある。それでも、その刀だけでソードレイの一五倍は出力があるだろうぜ」


 オブシダンの刀は、もうコナツの手に負えないそうだ。


「ありったけのダイヤを詰め込んで魔力の回復力を求めても、こいつの出力の方が上回るだろうぜ」

「そんなにか?」

「ああ。お前、今でもグッタリしてるだろ? それがなによりの証拠だ」


 彼が手放しで武器を放り出したのは、これが初めてだった。そこまで、このオブシダンは完成度が高いのか。


「こうなってくると、もう【マジックアイテム】の類なんだよ」

「というと?」

「あとは、お前自身が強くなるしかねえな。あるいは専門家に頼んだほうが、しっくりくると思うぜ」

「専門家か。心当たりはあるか?」

「一人だけ知っているぜ。エルフのルエ・ゾン・ウセってヤロウだ」


 ヒューコの南東に位置する森に、エルフは住んでいるらしい。


 マジックアイテムに関しては、エルフのほうが一日の長があるとのことだ。


「悔しいが、魔力を引き出したいってんならルエ・ゾンに頼んだほうがいいぜ。単純な切れ味を求めているなら、今の鞘と柄を使用すればいい。けどな、それだとオレだって面白くねえ。ルエ・ゾンのヤロウが作ったら、もっとヤバイ装備品になるぜ。東洋の武器にも詳しい」


 ルエ・ゾンというのは、エルフの賢者ワイズマンだという。


「ホントは、頼みたくないけどな」

「どういう人物なんだ?」

「エルフでもジジイにしかなれない賢者に、一八歳って若さでなりやがったヤロウだ。その説明だけで、どういうヤツかはわかるだろうぜ」


 とっつきにくい相手なのだろう。


「ただし、気をつけろ。ヤツは美少女みたいなルックスだが、男だからな。手を出すな」


 コナツが警戒するほどの、美貌だというのか?


「とにかくサピィちゃん。そいつなら、あんたが持っている機械からなにか情報を引き出せるかもしれねえ」

「この頭からですか?」


 サピィが、χの首領【能面ノーメン】の頭部をアイテムボックスから出す。


 マギ・マンサーの力を持ってしても、なにひとつ解析できなかったのだ。 


「あと、エルフの森近くには、まだ人と交流しようとしない魔族がいるからな」

「そうですね。あそこはダミアーニに匹敵する魔王がいた跡地ですからね」


 人類にとっての驚異は、ダミアーニ卿だけではない。まだ数体の魔王が確認されている。そのうちの一人がサピィなわけだが。


「あの領土にある黒い山の鉱石が手に入ったら、まだ黒曜石と肩を並べられる武器が作れると思うんだがな」

「そんな山があるんだな?」

「ああ。モンスター共の本拠地だ。【龍の背骨】って呼ばれてやがる」 


 しかし、そこは人類未踏の地だという。


「シーデーが完全に修理できるまでの間、ヨロイも新調しておく。ソードレイとイクリプスも、出力不足になってきた。せっかく、サムライになったんだ。オレなりの刀を作っておいてやる」

「助かる。使えそうなものを持っていってくれ」


 オレは、倒したレッサードラゴンから手に入れた素材をすべてコナツに渡す。


「こっちの方を、先にもらいたかったぜ」


 コナツは苦笑いする。


 ひとまず、次の目的地が決まった。ヒューコだ。

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