黒曜石の刀に、鞘と柄を

 アイレーナに戻り、ことのあらましをコナツたちに伝えた。


 それを受けて、コナツは弟子に向けて緊急ミーティングを行う。


「聞け、野郎ども。ペールディネでとの取引の他に、サドラーとの国交も増えてきた。人員も拡大していくと思う。つまりだ。もう個人とのやり取りだけではなくなっていく」


「はい!」と、弟子たちが返した。


「ランバートも、物資を持ってきてくれた。これからはデカい仕事が増える。やってやろうぜ」


 コナツの号令に、弟子たちが大声で返事をする。

 

 χカイといった、世界的に危険なテロ組織が頭角を表してきた。

 いくら首魁を倒したからといって、脅威が去ったわけではない。

 どの国も、協力関係が不可欠になってきている。


 そのためにも、アイレーナの拡張は急がねば。


 装備の調節をしてもらいながら、コナツと話す。


 とくに、シーデーの損傷が激しかった。

 あれだけ酷使したのだ。あちこちにガタがきている。

 ドローンは二台とも半懐し、シーデー自身も下半身を作り直しに。


「久々に暴れましたな。あそこまでの被害は、先の戦争以来でしょうな」


 上半身だけの姿のまま、のんきにシーデーは語った。


「ムリすんなよ、じいさん。いくら機械で不老不死だっていっても、いつ機能停止になってもおかしくねえんだからな」

「肝に銘じておきましょうぞ。コナツ殿」


 フォフォフォと、シーデーは機械の口で紅茶を飲む。


「お世話になります。コナツさん」

「いいってことよ。他ならぬランバートの仲間だ。手は抜かねえさ。もっと男前にしてやるぜ」


 冗談を交わしつつ、コナツは作業を続ける。


「ありがとう、コナツ。あなたが整備士てくれた銃のおかげで、脅威は去ったわ」

「いやフェリシア。礼なら、シトロンに言いな。オレは、シトロンの武器をいじくっただけだ」


 あれだけの大仕事をこなしながら、コナツは謙遜した。


「そうそう。この間な、アイレーナの領主様がお見えになってよ。ペールディネの鍛冶場が拡大するんだと」


 昨日の今日で、対処が早いな。


「でな、その関係でこちらの鍛冶場も拡張するんだってさ。オレラの作業場はここでいいんだが、別の作業場を作るらしい」


 実際、アイレーナに点在していた空き家は、取り壊されている。

 ここを、大きな装備開発工場にするらしい。


「わたしも考えていましたが、個人でやるには話が大きすぎると思い、先送りにしていました。それ以前に、事件が多かったですし」


 アイレーナ立て直しに参入したくても、できない事態が多すぎた。


 しかし、ブートレグは完全になくなったわけじゃない。 

 まだ多くの海賊版が出回っている。

 彼らに対処するためには、エンチャント武器が不可欠になっていた。


 忙しくなる前に、話しておくか。


「実は、これを見てもらいたい」

「おお。コイツは黒曜石じゃんか。刀になっているのか。それにしても、完成度が高いな」


 オブシダンの刀を見て、コナツはすぐにジュエルだと気づく。


「これは、レジェンダリと大差ないぜ。それ以上かも知れねえ」

「実際、凄まじい切れ味を見せた。魔王すら両断したからな」

「やべえな。で、オレに何をしてほしい?」


 やはり鍛冶屋だ。コナツは飲み込みが早い。


「鞘と柄を、作ってくれないか? 抜身でもいいと思うが、扱いづらくてな」


 この状態だと、使用の際に魔力をごっそり持っていかれてしまう。

 威力が高すぎるのだ。調節もできない。


「わかった。やってみよう。東洋の刀なんて、久しく見てねえからな。興奮していた。んじゃ、ちょっくら借りるぜ」

「頼む」


 コナツは刀を手にとって、「うーむ」とうなる。

 握りに柄をかぶせ、鞘と思しき筒にオブシダンを収めた。


「ひとまず、申し訳程度に作ってみたぜ。オレなら、これが限界かもな」

「そうなのか?」


 コナツでも、オブシダンの刀を扱えないと?


「これで、完成している。おそらく、ここまで強い武器はもう手に入らねえよ」

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